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呪われた宝石箱と腹ぺこのカラス

「うわ~、助けてぇ~」


雪だるまが坂道を転がり落ちて来る。


その巨大な塊は行く手にある木々をまるで小枝のようにへし折り、全てをなぎ倒しながら迫ってきた。


私は紙一重の所で枯れた草むらへ飛び退くと、岸壁に激突した雪塊は粉々に砕けて砂埃が立ち昇っている。


「何だ……? あれは……」


強い風に煽られて靄が晴れ渡ると、柳の木の下にある崖からカラスが現れた。


「おのれ! ここで亡き者にならぬとは何事か!」


「害鳥の分際で何を言うだぁ、お前なんかにやられてたまるかっ」


こやつが人語を話すことなど思慮になかった。


何故なら敵は殺気に満ちあふれ周囲の空気が震える様だったからだ。


射抜くような視線が交差し私はその場を動けない。


「貴様のせいでこのような姿に変えられたばかりか、夕飯を食い損ねたのだ!」


「何を言ってるんだ? お前は? さっぱり分からないぞ」


静寂が冬の山間を支配した。


曇天の空模様は機嫌が悪いらしく今にもまた降りそうだった。


「……そうだな。俺はお前の家に入ったコソ泥だ」


「コソ泥だとぉ!?」


「そうさ、貴様の金庫にあった宝石箱! 中身を空けたらこのざまさ!」


「な! あれを空けただか……。勇者になるしかないべさ、お前さんよ」


しんしんと降り出した雪は思うより強くこのままでは遭難しかねないと思った。


「あの箱は魔王を封じ込めていたのよ。呪いを解くには奴を倒すしかないべさ」


「……腹が減った。寒い。施せ、あの壺の奥のカステラは俺が食うはずだったんだ」


「何とまぁ食い意地の悪い奴。いいだろう、餞別にご馳走してやるよ」


雪道の中、傾斜のきつい坂道を歩く。


カラスは浮かれた様子で調子の外れた歌をさえずっている。


私は――『鳥の鍋も悪くない』と思っていた。


食べ物の恨みは怖いのだ。

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