79.エルフの狩場
「ガタンはお米が大好きなので、米粒を等間隔に並べるように設置しておくと自然と集まってきます。
しかしウオヌーという陸に上がってくる魚型モンスターも米粒が大好きで、放おっておくと直ぐに食べ尽くされてしまうんです。なので、ガタンを捕獲したい場合は現れるウオヌーを倒し続け、けれど戦闘音を察知するとガタンは近寄ってこないため、なるべく広範囲に撒くことが肝心なのです」
えっと……。
「話が長い。三行で纏めて」
「米を撒く
魚を倒す
ガタン来る」
「誰が一句詠めって言った」
えへ、と笑う受付の女性にため息をお見舞いして、私とガイアはクエスト斡旋所を離れた。
これで『アーマードオウクワガタン』に近付く手がかりを得た可能性があるわけだけど、それがまた、果てしなく道のりが遠そうで、遠そうで。
「モカさん、米はあります?」
「全部炊いてる。炊いてないのは少し前にリゾットやパエリアにした。大量に集めるんなら、別の街の露店に行った方がいいだろうね」
「街の道具屋じゃ買えないんすか?」
「アホほど高い」
米騒動が裸足で逃げ出すくらいには。
「そもそも、米は集めるのもそう難しくはないんだよ。草原でも集められるから。ただ、少しでもラックを上げると入手しづらいものが手に入りやすくなって、採取ポイントからはなかなかお目にかかれない、なんてこともある」
「あぁ、だから俺もあんまり見たことなかったんすね。装備でラックを上げているし」
「私も同じ。だから現状だと、初心者が集めてお金を稼ぐ手段、だね。大量に集められるからお値段もお手頃。需要はあるから確実に売れる」
「だから店売りがアホほど高いんすね」
適正価格で売ったらアホを見るなんて、現実臭くてどうにも笑えない。
「とりあえず、私は別の街で米を買ってくる。ガイアはどうする?」
「俺は場所取りでもしておきますよ。フィールドに物を置いて作業をするときは、他の人が入らないようにしておかないと」
「そんなことできるの?」
「マップで指定しておくと、全プレイヤーに共有されます。まぁ、ちゃんとした理由がないと、指定申請が通らないんすけど……そこは試してみて、っすね」
「じゃあ、そっちは任せるわ」
しばしの間の別行動。米の購入にはさほど時間はかからずに、私は森の街へと戻ってきた。
そうしてデッキから飛び降りてマップを確認すると……。
「なるほど、こうなるわけか」
森のなかの一部、円形にくりぬかれた部分が赤く染まっていた。その場所に向かってみれば、既にモンスターと格闘をしているガイアの姿が。
「助太刀、必要?」
「魔法、頼むっす!」
相手をしていたのがハッチバックだった為に、その高機動に翻弄されて自慢の物理攻撃が意味を成さない。本当に、魔法がないと厳しい世界だよなぁ。流石エルフのお膝元といったところか。
「でも、もう少し粘ってみない? もしかしたら、物理で戦える方法が見つかるかもよ」
「そう思って、俺も色々やったんすよ」
「例えば?」
「剣のブーメラン」
「投げやりな。結果は?」
「取り返すのに苦労しました」
不良品でクーリングオフされないのは、酷い話だ。
「あと、格好良く後ろ手で剣を突き立てる、なんてこともやってみました」
「結果は?」
「ほら、こいつらって振り向いたら視線の背後に回るっすよね? 回られないために視線をそのままにしておくと……永遠に結果が判らない」
それ、なんていうシュレディンガー?
「だから、もう、ここで終わりにさせてくださいっす」
「あー、まぁ、お疲れさん」
本命の前に、完敗で疲労困憊、ってか?




