表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メビウスクエスト・エクストラ  作者: 如月 和
オフ会と疑惑の館
PR
70/72

70.幕を下ろすために

 おそらく、この日最後のログイン。遊戯室に集まった面々は、ビリヤード台を囲んで散らばったボールを眺めていた。


「モカとカレンの考えによれば、このボールを一番から順にポケットに落としていき、九番を沈めれば化けぎつねを倒せるのではないか、と」


 ここは自分たちのフィールドだと言わんばかりに、ミクが発言をする。


「そうなってくると、ゴーレムの犠牲は化けぎつねの抵抗なのではないか。なんて勝手に推理しちゃったんだけど、それって少し、この状況に一致しないんだよね」


 それは、ボールの行方を確認すればすぐに判った。


「私とティアで協力、というか、主に私の活躍によって四番までポケットに落とした」

「五月蝿いなぁ」


 文句を言うのはあと。ティアの肩を叩いて宥める。


 二つあるビリヤード台のうち、一つは練習用で、こちらは挑戦用と言ったところか。


「その時点で、犠牲になったゴーレムとは数が合わないでしょ? それに、四番まで落としていくまでに、何度か失敗している。ま、協力、なんてしているんだし、正規の遊び方をしているわけではないんだけどね。それに、二つの台のうちどちらが倒すのに必要なものか、というヒントもない」


 つまり、私とカレンの考えは間違っているのではないか。そういうことだ。


「だが九番目を落とすというのと、この館に八人が集まり、ゴーレムの数も八体というのは、出来過ぎだな」


 カイユウもその共通点が気にかかっているらしい。


「とりあえず、九番ボールを入れるまでやってみたらどうっすか? とりあえず五番ボールを入れてみて、ゴーレムの変化をみましょう」


 ガイアの提案を採用して、ミクがキューを構える。小気味いい音を響かせてボールが転がり、ポケットに沈む。


「俺が見てくる」


 ユキが部屋から出ていく。しばらくして戻ってくると、何も起きていなかったと首を振る。


「やり方が違うのか、そもそも間違っているのか。この試行錯誤が攻略してる! って感じだね」


 やってみる? とミクからキューを手渡された。


「どうやって構えればいいの?」

「んーと、こう」


 ミクが背後に回って、その手を私の手に添わせる。


 人によってはドキドキするようなシチュエーションだろうか。ロンドが勝手に盛り上がっているけれど、私にそんな余裕はない。

 慎重にキューを操って、ボールを突く。そのボールは、あらぬ方向へ転がっていった。


「うわー、難しい。よく真っすぐ転がせられるよね」

「ま、経験ってところかな。あとは慣れ」


 因みに、失敗した際の変化もなかった。


 しばらくは、それぞれが好きなようにビリヤードで遊んでみることにした。


 経験者であるミクはもとより、ユキもなかなか上手い。


「結構、上手いじゃん」

「ビリヤードを実装するときに、テストとしてしばらくは遊んだんだよ。ちゃんとボールは転がるのか、とか。こうやって遊べるのは、俺たちの頑張りのお陰なわけ」


 それを体験する側の私は、なかなか頭が上がらない。とは言え、そちら側にも片足を突っ込んでいる立場なのだから、気持ちも判る。


 私のお陰で楽しいギルドバトルが出来るんだぞ。なんて、言ってみたいものだ。


 少しだけボールを突くのに飽きてきて、私は窓際のスツール腰掛けて室内を眺める。


 テーブルゲームをするためのテーブルと椅子があり、それを眺めるための、背もたれのないソファーが所々に置かれていた。


 最初にここを訪れた際、そのソファーに座ってダーツボードに矢を放ったっけ。


 壁にかけられた三つのボードを、のんびりと眺めている。ただ、眺めていた。すると、なんだか既視感のようなものを覚え始めた。


 これは、……どこかで見た覚えがあるような?


 私はそれらを正面に望めるソファーへと移り、ロンドを呼んだ。


「なんです?」

「ねぇ、これ。見覚えがあると思わない?」


 彼女は三つのボードを眺め、首を振る傾げる。


「見覚え? 見覚え……まだここに来て、ダーツをやっていなかったからなぁ。見覚えはないと思いますけど? 私はほとんど、モカさんと厨房に……」


 徐々に、その大きな瞳がさらに大きくなっていく。


「厨房のコンロッ!? あ、あれも三つでしたね?」


 その声に反応してか、ビリヤードで遊んでいたみんなも集まってくる。


「コンロがどうした?」


 そう問いかけてくるカイユウに、あんたも使ったでしょ、と言ってボードを人差し指で示す。


「一番左に、油揚げが煮てあった」

「え、本当っすか、ロンちゃん?」

「ええ、本当」


 ガイアが驚いたように、一番左に掛けられたボードに近寄る。そのボードには四つの矢が刺さっていたが、どれも中心からは外れていた。


「煮てあった油揚げは、全部で六十枚。それをいなり寿司にしてバットに移したら、三つのそれに二十個ずつ入った」

「二十個って……、あのボードの数字と一致しているじゃないっ!?」


 ティアが驚き、そして真ん中のボードに駆け寄る。


「じゃあ、真ん中のボードには矢が二つ刺さっている、これは犠牲になったゴーレムと同じ?」

「一番右は使われていないでしょ? と言うことは、それは私たちに対応しているのではないか」


 私たちが八人。ゴーレムが八体。それはつまり、ダーツの参加人数というものではないか。


「聞きかじった程度の情報だけど、ダーツって四人で遊ぶんでしょ? それで、ダブルスにして八人。ほら、人数がぴったり合っている。そして、ダーツの中心は赤い。赤といえば――」


 それは商品名になってしまうので、ここでは割愛しよう。ちょっとだけ、ノリで言ってみた部分があるから、突っ込まれると恥ずかしくなってしまうけれど。


「つまり、一番左の真ん中に矢を命中させれば、化けぎつねを倒すことが出来るんですね?」

「ビリヤードでああだこうだ試すよりも、あっさりとしているでしょ?」


 足りなければ、全部の真ん中に。カレンにそう答える。


「それで、おそらくここに来て遊び人が活きるんじゃないかな?」

「えっと、つまりアタシたちが――」

「もっと早くに真ん中、ダブルブルに入れていれば、直ぐに終わっていたということ?」


 かもね。と言えば、二人は肩を落とす。


 さぁ、ここからは二人の真剣勝負だ。二人が頑張ってダブルブルに矢を突き刺せば、このエクストラクエストは終わるかもしれない。

 スッキリとした気分でこの旅行を終えられるかは、二人の努力にかかっている、と言うことで一つ。


「私たちは、いなり寿司でも食べながら観戦しようか」

「絶対に、直ぐにクリアしてやるんだからねっ! だからいなり寿司は残しておいてよっ!」


 二人の叫びが部屋中に響き、白熱した戦いが幕を開けた。


 厨房でいなり寿司を作って、それを食べながらダーツで遊ぶ。そんなシンプルな攻略法も、なんだか嫌らしい。そう笑いながら、私は部屋を出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ