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メビウスクエスト・エクストラ  作者: 如月 和
オフ会と疑惑の館
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69/72

69.化けたのは……

「王様ゲームッ!」


 バーベキューも終わり、後片付けも一段落ついたところで割り箸を握りしめたニーナが言う。


「くぅ、こう言うのやってみたかったんだよねぇ」

「止めなよ。飢えた狼が暴れ出すよ」

「誰が飢えた狼だよ」


 男性陣三人が文句ありげな視線を向けるけれど、私は違う違うと手を振って彼らの目線より下に指先を向ける。


「遊びに飢えたイヌ科が足元に」


 犬用の食事に満足してウトウトしていると思ったら、楽しげな声に反応して起きてきたらしい。


「折角だし、ウーフちゃんも交えてやってみようか。百花ちゃん、代わりに引いてね」

「あ、やるのは決定なんだ」

「勿論。こう言ったパーティーゲームも楽しまないとね」


 なかなか進展のない谷間の館に、若干嫌気が差しているのだろう。息抜きにもなるし、私は特に反対はしない。

 それぞれが好きな飲み物を用意して、席に着く。数字が書かれているらしい割り箸をそれぞれが手に持ったら……。


「王様だーれだっ!」


 掛け声と共に一気に引き抜く。


 私の右手は自分自身、左手はウーフのものとしている。果たして、どんなお題が出るものか。


「あ、王様アタシだ」


 トップバッターは雫月であった。


「じゃあ、一番が四番とカレーの感想を言い合う」

「滅茶苦茶平和的な命令で助かったっす! 俺は一番だったんすけど、四番は誰っすか?」


 キョロキョロとそれぞれに視線を向ける大地に、私はおずおずと手を挙げた。


「あ、百花さんっすか?」

「……いや、ウーフ」


 こうして、大地と見つめ合うウーフの絵が完成した。


「えっと、カレーは美味しかったっすか? みんなで協力して作ったんすけど」

「ウーフはカレー、食べられないよ」


 私の一言で、大地は撃沈した。


「これ、思ったよりも難しいっすよ! 魔が潜んでる!」


 そんな嘆きと共に二回戦。


「王様だーれだっ!」


 ニーナの掛け声で割り箸を引くと、次の王様は海斗になったらしい。


「犬が混じっている前提でお題も考えないと、だよな。ここは安牌を目指して――八番が五番にお手をする!」

「狙いに行ったねぇ。私、ニーナが五番でーす。さぁ、誰がお手をしてくれるの?」

「はい」


 私が手を挙げると、場に緊張が走る。


「あ、ちゃんと私だから。安心して、ウーフじゃない」

「……それはそれで、ちょっと緊張しちゃうような?」


 差し出された手の上に、自分の手を重ねる。これだけで良いのだろうか。もっと何かをしたほうがいいのだろうか。


 確かに、私たちの間に妙な緊張感が漂っていた。


「……提案。命令する側はちゃんと終わらせ方を指定するように」


 どことなく気まずい思いをしながら、三回戦に突入した。


 王様三番手はユキであり、犬が混じっても違和感のない命令を、しっかりと思案しているのが窺える。

 もしも自分がその立場になったら、果たしてどんな命令をするのだろうか。頭を撫でる。伏せをする。お座りをする。などなど。犬との触れ合いや、犬への命令は直ぐに思いつくのだけど……。


 それを人間同士で行った時の絵面よ。


「二番が九番の頭を撫でる」


 手を挙げたのは、カレンとニーナだった。


「うっわ、カレンの髪、ふわっふわ。どんな手入れをしてんの?」

「ふふっ、ありがとう後で教えてあげるね」


 そんな会話を聞きながら、外れて安堵する男二人の会話。


「俺らが当たってたら、どんな事を言っただろうな」

「俺が海斗さんの頭を撫でる立場だったら、めっちゃ荒く撫でますよ」

「俺だって大地の頭皮を剥がしてやるよ」


 私は膝の上に頭を乗せたウーフを優しく撫でた。


「なんだか意外と、男女のペアにならないもんだねぇ。割合のせい? アタシ、まだ命令されていないからちょっと寂しい」

「無茶な命令をされるのも嫌だが、指示されないのもそれはそれで寂しいよな」

「雪斗は、誰と何かしたいとかってあるの?」

「ウーフの頭を撫でたかった」


 雫月と雪斗の会話を聞きながら、例え男女でペアになったとしても嬉し恥ずかしな展開はなさそうだなぁ、と思った。


 そして、特に盛り上がりのないまま四巡目。王様に選ばれたのは……。


「ま、こういう結果にはいつかなるとは思っていたよ」


 選ばれたウーフは、その場にいる全員に見つめられて少し居心地が悪そうにしている。


「……一番が六番と一緒にぼくをドッグランに連れて行ってよー」


 精一杯の裏声でそう言ってみると、立ち上がったのはカレンだった。


「私、一番です。結構指名されますねー」

「あ、じゃあ一緒に行こうか」

「え、百花さんが六番だったんです?」

「うん。判っていたからこんなお題を出した」


 つまり、このグダグダから体よく抜け出す方便である。


「じゃあ、残った面子は仲良く続きをやっていなね」

「盛り上がって、羽目を外しちゃ駄目ですよ」


 カレンの注意に、残ったみんなは軽やかな返事をする。

 こうしてウーフを連れてドッグランへ向かえば、最小限の灯りと月明かりに照らされた芝生の上を駆けていく。


「冬場だと、灯りに虫が寄ってこなくて良いですよね」

「そう。そこが肝心。やっぱりこういうキャンプって、冬にやるのが良いんだよねぇ」


 夏は夏の良さがあるとは思うけれど、虫除けグッズを用意するのも手間だし、しんと静まった空気も心地良いし。私はやっぱり、冬のほうが好きだ。


「でも、やっぱり少し冷えますよね。外での遊びはある程度にして、早めにテントの中に引っ込んだほうが良いかもしれません」

「だね。昨日よりも冷える気がするし、ウーフもテントに連れて行こうかな?」


 柵に腕を乗せて、元気に駆ける彼を二人で見守る。たまに咥えて持ってくるボールを投げれば、元気に取りに行く。


「ビリヤードってさ、壁に当てて動かすことも考えないといけないから、難しいよね」


 様々な方向に投げる行為が、ゲームの中のあの台と被ってしまった。


「技術と経験が大事、ですかね。私もあまり経験がないので詳しいことは言えませんが」

「ルールは判る?」

「一から九の数字を、順番にポケットに落としていく、でしたっけ」


 確か、そう。私もそこまで詳しくはなかった。


「それで、九を入れたほうが勝ち、なんだっけ? 一を入れようとしたら、八に当たって、それがポケットに入ったら失敗?」

「ユキくんが確かルールを知っていたはずですし、聞いてみましょうか」

「あ、それならニーナも知っているみたい。雫月が彼女に習ったんだって」

「へぇ。それなら私たちも教えてもらいます? ふふっ、もしも化けぎつねが九尾の狐だったら、九番のボールを穴に落としてバタンキュー、みたいな」


 ……え、その冗談は笑えなくない?

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