60.お疲れ様でした
私はガイアと向き合っていた。
草原フィールドでのギルドバトル。ガイアは魔法使いギルド、私は戦士ギルド。所属を入れ替えての一対一の勝負だ。
既に準備ターンは終わり、実戦ターン。
それぞれの拠点はすくすくと育ち、開始から十分が経過しようとしていた。
「残り、十分っすねッ!」
左から迫る剣を刀で防ぐと、直ぐに右から攻撃後迫る。
二刀流のリズム感というのは、本当に厄介なもので、今の私がこれに対応するのなら、腕の一本や二本、増えてくれなくてはならないと思う。
「クールタイムは三分だっけ? だったら、三回ぐらいやられとけよッ! ベイク、ローストッ!」
背後に跳んですかさずバインダーバレルでの攻撃。
マシンガンの連射力はガイアの動きを封じ込め、その隙に私は、その背後へと転移する。
(ちっ。オートガードは魔法に対応している。動きは止められているけど、全然攻撃が利いていないじゃない)
舌打ちをして、おまけにとライフルモデルのバインダーバレルでの射撃。
彼を包む球体の膜のようなものに阻まれて、ダメージは全く与えられていない。
「硬すぎでしょ、物理特化」
「お褒めの言葉、ありがとうっす。これでも、強力な攻撃は防ぎきれないんすけどね」
鍔迫り合いをして、もう一度距離を取る。
戦士ギルドの固有必殺技、ウォークライを使えば、通常の攻撃でも、より効果を発揮してくれるだろう。
しかし、それはガイアが使用した魔法使いギルドの固有魔法によって、フィールドに特殊な効果が発揮されており発動が妨害されているのだ。
「隙ありッ! ファイアインパルスッ!」
魔法使いギルドの固有魔法、インパルス。
それは火、水、地、木の属性を持ち、それぞれ火の玉、水の玉、土の玉、草の塊を射出する。
刀でそれを弾き飛ばすと、私は仕返しとばかりに強化魔法を切り替えた。
「金甌無欠・コードルシフェリットッ!」
魔法のチャージをすっ飛ばし、バインダーバレルの全てから、最大威力のサンメテオライトを射出するッ!
「名付けて、サンメテオライト、スターマインッ!」
「甘いっすよッ!」
その連射の光に紛れるようにして、ガイアは私の背後に現れた。
「ちっ、素早いっ!」
「素のステータスも、装備の強化具合も。まだまだこっちに分があるんすよねッ!」
右から迫る攻撃を刀で弾くと、左から迫る攻撃を受け止めるて弾く。
「まだまだッ!」
バク宙をして射線を確保すると、私の背後からハーモニカのように並んだバインダーバレルが覗く。そこから、サンメテオライトの掃射。
「あんたが倒れるまで、撃ち続けるッ!」
「経験の差を、見せてやるっすよッ!」
そうして、私達は何度目かの鍔迫り合いをした。
だけど、その瞬間に浮かべられた笑みは、すぐに消え去ることとなった。
「……私が弾いたあんたの魔法、まだコントロール出来ていたのっ!?」
「さっきの掃射、拠点を狙ったんすかッ!?」
お互いの目的は、全く一緒であった。
そうして互いに新たな拠点を設置するタイミングを見計らいながら、一騎打ちを繰り広げた。けどまぁ、そこはワープの使える私に一日の長がある。とでも言ってみようか。
さらに言えば、私が戦士ギルドであったことも幸いしたのだろう。
「ぐあぁぁぁっ! 暗殺者ギルドだったら絶対勝っていたっすよねっ!? あの時、動きを止められていればっ!」
そんな悔し紛れな一言が、サークルハウスに木霊した。
***
話は変わって、イベント、更にはサークル、ギルドの体験も最終日の夜。残された時間をどう過ごすのか、私達は膝を突き合わせて相談をしていた。
「コーヒーのお代わり、いる?」
「あ、お願いしまーす」
差し出されたロンドのカップを受け取り、壁際に設置されたコーヒーメーカーを操作する。
クラフトルームも、なかなか生活感あふれる場所になったものだ。
テーブルを置いて、ソファーを置いて。コーヒーメーカーや小型の冷蔵庫も設置した。壁には幾つかのシンボルが、トロフィーの様に置かれている。
「イベントアイテムの交換は、どうだろう、もう少し集めたほうがいいのかな?」
経験者の二人に問い掛けると、自己満足の領域だと言う。
「どっちにしろ、ここで手に入れられなくても普段のゲーム進行で幾らでもカバー出来るんすよ。だからこの先、楽をしたいのなら頑張る」
「このくらいで充分かなぁ、と思った時が辞め時です。いくらあっても困るものではないですけど、どんな方向性で装備を強化するかは、結構その時々で変わりますしね」
つまり、こういうステータスを上げたいなぁ、というタイミングで強化をするのが一番いいから、ここで死ぬほど集めたとしても、肥やしになるパターンが多いよ。と言ったところか。
「方向性がバッチリ決まった時に、ガッツリ集められると効率がいいんすけどね」
「去年のクリスマス、あんたガッツリやったもんね」
その結果が、あのオートガード万全スタイルか。
「モカさんは、もう決まった感じなんすか? 結構動きが良くなってましたよ」
「ありがとう。でも、ラックをどうしようかって、悩んでいるんだよね。今はマジックとスピードに偏重しているし、魔法を防がれたらたまんないって問題もある」
さらに言えば、金精霊の悩みのタネ。最大体力ゲージ不足と、勝手に減らされて自滅してしまう問題。
「本当に、身代わりアイテムみたいなものがあるんなら、是非入手したい」
「あ、それ結構よく聞きますよね。そんな噂。図書館の本に載っているとか」
「あ、それは俺、知らなかったっす」
「ガイアはあんまり、本を読まないもんねぇ」
「農業についての本は、読むっすよ」
それは必要なことだもんね。三人で笑って、今は憩いの時を過ごす。
ギルドも、サークルも。体験した日数はそれほど多くはなかったけれど、特にあって困るような要素ではなかったように思う。
正式にこれらが実装されることとなったら、ここから更にブラッシュアップがなされるのだろうか。それとも、このままで?
少し楽しみになりながら、私は話に花を咲かせる。
「あれ、なんか通知が来た」
図書館の蔵書について話していた時、メールが届いた際の効果音がなった。
ユキあたりが、また何かエクストラクエストを持ってきたのだろうか。「また仕事かもよ?」なんて二人に言いつつ、そのメールを開く。
タイトルは――、招待状?
それは頭の片隅に残っていたものの、少しだけ気に掛かっていた程度に留まっていた場所からのもの。――あの館からの招待状だった。




