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メビウスクエスト・エクストラ  作者: 如月 和
ギルドのあれこれ
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52/62

52.お試しギルドバトル その四

 振り下ろされる二本の剣を鞘で受け止め、仕返しとばかりに刀を掬い上げるように振るう。バックステップで躱すガイアは、間髪入れずに距離を詰める。


 左右からの攻撃。

 真似をするようにバックステップで躱す。

 追撃とばかりに突きが迫る。

 サイドステップ。


「硬い、素早い。戦ってみると分かる、金精霊の嫌なところっすよねー」

「褒め言葉として受け取っておくよ」


 どちらも攻撃をヒットさせることができないから、攻撃力の差というものは実感できない。けれど油断は禁物だ。こちらは攻撃力にポイントを振っていないから、どうしてもその差が出てくる。

 そのうえ、こちらは最大体力ゲージが大幅に減少しているのだ。


(少しの油断が命取り、か。スリルがあるねぇ)


 ニヤッっと笑いながら、左右に小刻みにステップを踏んで距離を詰めていく。

 正面から位置をずらしていれば、左右どちらの手から攻撃するか、悩んでしまうのではないか。そんな希望的観測。


 それにしても……。


「ねぇ、強化魔法とか使ってる?」


 鍔迫り合いをしながら、そう問い掛ける。


「あ、気が付きました?」

「うん。なんというか、身体の動かし方に慣れていないような感じがあった。動きやすすぎて距離感がつかめていないような、感じ?」

「あ、やっぱり突きに出た時、踏み込みすぎてました? いやー、確かに思ったよりも力が入ったんですよね。さすが金精霊、強化のことにはよく気付く。これ、戦士ギルドの固有必殺技なんすよ」


 それは、ユキからの話に出ていたものだ。


 一度距離をとって、再び接近。二本の剣を刀と鞘で抑えながら、会話を続ける。


「『ウォークライ』って言って、まぁ、強化魔法の必殺技みたいなものっすね。ただ、強化魔法は効果の高い方に上書きされるのに対して、必殺技の括りにあるこの技は共存する。つまり、さらに強くなれるんすよ」

「ははぁ、ヒューマンの基礎的な強化魔法でも、ね」

「ご明察」


 共存、共存ねぇ。それは一体、どんな計算式なのかしら。なんて、聞きかじったことを知ったように。


 どちらにせよ、向こうの方がより多くパワーアップをしているのなら、少々分が悪い。いや、もともと良いとは言えなかったのだけど、さらに勝ち目がなくなったと言える。……おそれも。


 いや、守りに徹すればそれなりには戦えるんだ。それは、この状況からも解る。


 彼はきっと、通常の攻撃もコア化した必殺技で強化をしている。その攻撃をこうして受けられているのだから、ガードに振り切った攻勢が功をなしているんだ。


 ただ、ワープによる背後からの奇襲も効果はなし。金精霊が誇る自慢の強化魔法も、新たな仕様の前にはどうやら一歩及ばない雰囲気がある。


 それならこちらも手の内を見せて、一度引いて新たに現れた相手拠点でも破壊してしまおう。どちらにせよ、私の拠点は姿を現した瞬間にロンドの狙撃によって破壊されてしまったから、設置し直さなければならない。


 ワープを使って目を盗み、上空の時計を確認する。


(十五分が過ぎた。ガイアとの戦いでモンスターを倒していなかったせいか、拡大が遅かったか)


 残りは五分。このタイミングでロンドが拠点を破壊したのは、自分たちの拠点を守り抜ける自信があるからなのか。それとも、新たに設置した同士でも、自分たちのほうが拡大するスピードは速いという自信か。


 どちらにせよ、現状ではこちらの不利には変わらない。


「はっ!」


 無防備な背中に刀を振るうが、当然ながらオートガードによって防がれる。体勢を整えられ、お見合い。


「いいタイミングだし、こちらも固有の必殺技を見せてあげるよ。暗殺者らしい技をね」

「いいっすね。受けて立つっすよ」


 言ったな? あくどい笑みを浮かべながら、私は目線を動かして必殺技を起動する。


「シャドウリストレイン」

「んなっ!?」


 そう唱えれば、ガイアの足元から無数の黒い触手が蠢き現れ、その身体を拘束していく。


 その一本一本に体力ゲージが存在し、身体を捩るなどして減らしていかないと、新たな行動には移れないだろう。


「どう? 動けないでしょ。一本一本に体力ゲージがあってね、それは私の攻撃でも削られてしまうの。つまり、ここから一撃で仕留めれば実に暗殺者らしいりというわけ」


 でも――。


「でも残念。私は他にやることがあるから、ここでお暇させてもらうよ」

「ちょ、俺は此処で置き去りっすか!?」

「大丈夫。モンスターの攻撃でも削れるから、ね。まぁ、触手だけを攻撃してくれる、優しいモンスターがいれば、だけどね」

「めちゃくちゃ暗殺者らしい捨て台詞を吐くなーっ!」


 ばいばーい、手を振って、その場を離れる。身動ぎでも削られはことは伝えずに、とびきりの笑顔を見せながら。


(と、問題はここからだな)


 ワープを使って相手の拠点に接近し、強化魔法の効果からから一撃で破壊すると、直ぐにワープを使ってフィールドの端まで移動する。

 移動禁止領域を背負いながら周囲を眺め、私は襲撃がないことに一息ついて、考える。一つ、不審を感じることがあるのだ。


 それは、ロンドが私を攻撃しなかったこと。


 彼女の狙撃能力なら、ガイアと戦闘を繰り広げる私を、遠距離から攻撃することなど容易かったはずだ。


 それをしなかったということは――。


(こちらの手が上手くいっていた証拠か、果たして)


 上空の時計を確認し、メニューからマップを開いてフィールドを確認する。


 のんびりしていればガイアが拘束を抜け出して、こちらに襲いかかってくるかもしれない。残りの五分を過ぎて、彼等はどう動くのだろう。


 時計の針は止まらない。

 着実に進んでいく。


 私の拠点は設置されている。けれど、向かってくるモンスターを倒しているだけだから、それほど拡大することはないだろう。

 では、向こうはどう? もう設置をした? 育てるためにモンスターを倒している?


 残り二分。限界だ。今、動かなくては勝利の可能性はなくなる。細工は流々、仕上げを御覧じろ。


(試してみるか)


 私は強化魔法を解除して、体力ゲージを最大まで回復させる。そうして――新たな魔法を使うのだ。


金甌無欠(きんおうむけつ)・コード、ルシフェリットッ!」


 これが、金精霊が誇る最強魔法。


 これは極限の強化効果を発揮する代わりに、体力ゲージが徐々に減って、最終的にゼロになる自滅技だ。しかし、その強化はやはり絶大で、魔法のチャージすらもゼロにしてしまうほど。


 回復アイテムでフォローはできるが、常に視線を動かさなくてはならないというリスクがつきまとう。それほど減るスピードが速いのだ。

 油断をすれば、直ぐに尽きる。攻撃、回復。そのタイミングとバランスが重要になってくる。複数人を相手にするのなら、それほど集中力は持続しないだろう。


 だからこそ、私はロンドの動きを封じようと努めた。


 先ず、森や林には拠点を設置できないというルールを利用して、落とし穴を設置しそれらを沿うように動かさせた。

 人間は右に回ることが苦手。そんなことを聞いたような、という眉唾な情報にかけて、左側に逃げやすいように場を整えて。


 彼女が見事に誘導されていれば、拠点が設置される場所はある程度は予想できる。先ほど破壊した拠点も、それに沿っていた。


 だからこそ、細工は流々。後はそこを突くだけ。その全てを、破壊し尽くせばっ!


「サンメテオライト、連打ッ!」


 特定の範囲に振り注ぐ、終わりなき光の柱。それに飲み込まれてしまえば、抜け出ることも難しいだろう。


 仕上げを御覧じろ。終わった時にどうなっているか、楽しみだ。 

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