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メビウスクエスト・エクストラ  作者: 如月 和
転生と設定とそのまた次へ
45/47

45.人魂は何処

 強力な強化魔法の影響を受けたビンタだったから、なのだろうか。それを受けた白いシーツを被ったようなお化けは、黒い霧のように消えていった。


 その光景を目にしながら、私はそのビンタを繰り出した右手をじっと見つめながら、こう呟く。


「私は霊媒師の才能があるのかもしれない」

「いや、どちらかと言うとキャットファイト」


 名前は可愛いのに褒められている気が全くしない。


 そんなことよりも、これで二体目のモンスターを倒すことに成功した。残りは一番最初に遭遇した赤い人魂だけなのだが、それがどこで出会えるのかが全く分からない。


 手当たり次第、とするには目印の全くない空間であり、下降するように作用する力がなければ、街がどの方向にあるかも分からないくらいだ。


 少なくとも、この力があれば街には問題なく戻ることができる。まぁ、街へ向かうだけならワープ機能もあるのだし、不都合はないのだけど。


「で、当てもなく飛行をしてみたものの、一向に遭遇する気配がない」

「最初に遭遇したことを再現しようとするなら、一度この空間からでて、もう一度湖に飛び込む、しかないか」


 カイユウの案は、正直賛同しかねる。


 彼だって、山から飛び込む際には相当の叫び声を上げていた。私だって怖くて目を瞑っていたのだし、出来ればあのようなダイビングは二度と御免。というのが素直な感想だ。


 あのような行動に出た私達を、付近にいたプレイヤー達はどんなふうに見ていたのだろうか。


 真似しようと思う? 何らかの意図を持っていただろうとは察するだろうけれど、真似しようとするのだろうか。……いや、しないとここには来られないのだけど。


「あ、もしかして結界がどうのっていうので、この空間に来づらくなっていたのかな?」

「あぁ、そういう考え方もあるのか。モンスターが出ないだけかと思っていたが、そうか、このエクストラクエストをクリアすれば、湖に入るだけでもここに来れる可能性がある」


 そうすれば赤い人魂とも簡単に……。会えるかもしれないけれど、そのためには赤い人魂を倒さないといけない事実。


 では、どうすれば赤い人魂と出会えるのか。


 あの時と今とで、何が違うのか。その違いが原因なのか。出会った時に、私達は何かをしていたのか。今回の私達は、あの時にない何かをしているのか。


「……あ、ピンときたかも。カイユウ、空を飛ぶのを止めよう」

「お? あっ! そうか、あの時、俺は空を飛んでいなかったのか。それを隙とみて襲いかかってきたのなら――」


 誘き寄せることが可能なのではないか。


 早速試してみると、これが大当たり。飛んで火に入る夏の虫、というか、現状から言えば飛んでない人たちを襲う冬の人魂、なのだけど、接近するチャンスが生まれたのは喜ばしいことだ。


 早速のご挨拶に浴びせられるレーザーを飛行魔法を使用して躱しながら、その距離を詰めていく。


「金烏玉兎っ!」


 強化魔法をかけて、武器を構える。


 お化けだって一撃で倒せたんだ、今度だってっ! という意気込みで、尚且つ今度は二人がかりでの攻撃。これは余裕かと思われたが……。


「避けられたっ!?」


 ふわりとした軽い機動によって、私達の攻撃は当たることがなかった。


 人魂は、そのまま私達から距離を取るように離れていく。


「飛行魔法を解除して!」

「分かった! ……でも、何が駄目なんだ? エクストラクエストの発生条件にもなるんだから、ある程度は簡単に倒すことができる筈だろ?」


 再び無防備な状態になって、人魂の誘引する。


「前回は螺旋状に動いて接近したら、攻撃を当てられた。でも、それは攻撃を避けるためでもあるし」

「ああ。それと、俺だけ飛行魔法を使ってはいなかった」


 もしもそれを再現して、一撃で倒せたとするのなら。完全に私のミスだ。最大値体力ゲージが減るのにビビって、様子見をして強化魔法を使用するのを控えてしまった。


「カイユウって、結構このゲームの歴は長い?」

「サービス開始からやってる。初任給で端末を買ったから、ちょうど良かったんだよ」

「初任給って、じゃあ、もしかして私と歳が近いの!?」

「あー、そうかもな。これでも新卒だったし、――って、お前は俺を幾つだと思ってたんだよ!?」


 兄と同僚だというから、てっきり歳上だとばかり。


 でもそうか。彼は兄から私のことを聞いていて、歳が近いと分かっていたからフレンドリー、といえば聞こえはいいけど、近い距離感で接していた。歳上なら、もう少し丁寧な感じにもなり得るか。


「いや、あはは」

「そんなに老けて見えんのか? 俺は」

「まぁ、大人っぽいとは思うよ。うん。それより、それだけゲームをやっているんなら、ダメージを肩代わりしてくれるような、身代わりになるようなアイテムがあったりしないわけ?」


 私が想像しているのは、藁人形のような物。ホラーが苦手なくせに真っ先にそれが思い浮かぶのは、人魂と対峙しているからだろうか。


 誘引に成功し、私だけが飛行魔法を解除する。


 カイユウのメイン武器は両手で用いることが前提で、サブ武器も魔法が使えるようにと杖にしている。どちらも片手で振るうには都合の悪いため、私がアタッカー役だ。


「あるらしい、って話だ。効果もいまいち分かっていないけど。つまり、まだ誰も見つけていないってことだな。ある特殊なモンスターを倒したときに手に入るアイテムを所持していると、クラフトで作成できるようになるらしい」

「そのモンスターは?」

「不明。ここのモンスターであるなら良いんだけどな」


 もしも違うのなら、そのモンスターを倒すことが私の次なる目標、となるだろう。


 螺旋を描くように、人魂との距離を詰める。振り抜かれた刃は、その揺らめきを切り裂いた。

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