42.無重力アンデッド
「二度手間じゃねーかっ!」
クエスト斡旋所にて、エクストラクエストを発生させる神殿の受付へなら向かうと良い。
そう斡旋所にいたミナトという運営社員に助言を受けて、私達は神殿へと辿り着いた。そこで受付を調べたところ、『結界の暴走を招く原因となったモンスターを三体撃破してほしい』との表示。
ここで砂漠のときと同じように、視界にエクストラクエスト発生を示すポップアップが現れたのだ。
とまぁ、ここまでは良かったのだけど。その後に表示された、あるテキストを読んでカイユウの怒りは有頂天、ならぬ怒髪天。
「まぁまぁ、確認しなかった私たちも悪いんだから」
「そうかもしれねぇけど、この街のクエスト斡旋所で、ステータスと引き換えに飛行魔法を取得できるだって? それならさっき教えてくれたら、その場で受けることも出来ただろうが!」
ミナト、口の軽い人お喋りな人だとは思ったのだけれど、そのポテンシャルを引き出すためには、些か時間が足りていなかったらしい。
宥めながら、肩を落としながら、クエスト斡旋所まで戻って魔法を取得。
本来転生を経なけれを取得できない魔法であるため、消費されるステータスポイントは五百となかなか重い。一度のレベルマックスでは、ギリギリ足りないくらいか。
「よくステータスポイントが余っていたね」
「必殺技や魔法を、装備の強化素材にするためのコア化にも必要になるからな。銃なんてものも実装されたし、念のため備えておく人も多いんだよ」
カイユウも、その一人だったわけだ。
そして、これがステータスポイントの使い道の拡張の一つである。
ステータスポイントを五百消費して、必殺技、魔法をコア化する。それを装備、と言うよりも武器か。武器の強化に使うと、それらが武器に付与されて、通常の攻撃が必殺技と同様のスペックと効果を発揮するようになる。
ティア達があまり必殺技を使わなかったのも、そもそも通常の攻撃が必殺技と同等の威力があったから、というわけ。
おまけに魔法のコアを強化に使えば、消費ゲージは多くなるもののチャージ時間無用で使用可能になる。
転生は、するだけお得、頑張ろう。そんな川柳が頭に思い浮かぶ。
でも注意事項。スキップでチケットを消費しても、新エリア開放のためのボス討伐数にはカウントされないので悪しからず。
以上を経て、私達の準備は完了した。
街を離れ、暗い深海のようなフィールドへ繰り出していくと、このエクストラクエストをクリアすれば、この辺りにはモンスターが出現するようになるのだろうか。そんな不安が胸を打つ。
いやだなー。視界が悪いから、絶対に急に現れる。人魂の時だって、あれは何だろうと注意深く見てみれば、いきなり攻撃だもの。
あの時は不審に思っていたから驚きはそれほど、であったけど、もしも本当に不意打ちに、目の前に人魂が現れたら。
「ねぇ、きゃっ! って叫んだほうが可愛い?」
「はぁ? なんだよ急に」
「私って、驚いた時に声が出なくなるタイプだから。男の人としてはつまらないんじゃない?」
虚空を見つめるカイユウ。
「抱きついてくるのが理想」
その反応、咄嗟には難しいかもなぁ。
そんな雑談を繰り広げながら、空を飛ぶようにして周囲を探索する。先ずは一度接触をした赤い人魂を見つけたいところであったが、それより先に別のものもエンカウントをするようだ。
「うっわ、骨だ骨。豚とか牛とか、鶏だったら良い出汁がとれそうって思うのだけど……」
「角が生えたり刺々しかったり、翼みたいな骨もあったりと悪魔みたいなスケルトンだなぁ。……というか、案外平気そうでつまらないのだが」
どうやら強がりだとは気が付かれないほど、自然な発言ができたようだ。内心はビックビクですよ。急に骸骨が現れたのだから。
「そんなことより、攻撃開始。私の戦い方は見せたのだけど、あんたはどんなふうに戦うわけ?」
「気になるか? そんじゃ、いっちょ見せてやるとするか」
そういって、カイユウは武器を取り出した。
身の丈ほどはある大きな両刃の斧。中央には機械仕掛けらしき機構が存在し、突出した柄は何かを装填出来そうな、表現が適切かわからないが、竹輪を半分に割ったような形状をしている。
いや、初見であるせいか回りくどい表現をしたかもしれない。これは、あれだ。斧にボウガンのようなものを取り付けてあるのだ。
「土精霊のマスターボーナスである、武器のゴーレム化によって作り出した合成武器だ。メインとして複数の武器が持てるから、便利なんだぜ」
よく見れば、持ちてのほうが槍のようにもなっている。盛り沢山過ぎて使いづらそうなのだけど、まぁ、それが男の子のロマンなのだろう。たぶん。
と、若干呆れたところで骸骨なのか、スケルトンなのか。いまいち名称を決めかねるモンスターの攻撃。
眼窩から繰り出されるビームを斧で弾いたカイユウは、仕返しとばかりに脇に抱えた斧を向ける。
「サンメテオライトアローッ!」
眩いばかりの砲撃に包まれた骸骨。命からがらといったように光の奔流から抜け出したものの、その油断しきった身体に大きな刃が激突する。
その勢いのまま弾き飛ばされる骸骨。その姿は瞬く間に見えなくなっていき――。
「……え、倒せたの?」
「……悪い」
その後、ワープを駆使して追いつき、討伐した私を褒めてほしい。




