表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メビウスクエスト・エクストラ  作者: 如月 和
転生と設定とそのまた次へ
39/44

39.湖の謎

 周りに高い山が多いせいか、どこか低地にあるような錯覚を起こす山の街。しかし、そこも草原の街と比べればなかなか標高の高い位置にある。


 そのため、夜空に浮かぶ星々はより輝いて見え、まるで写真で切り取ったかのような、技術の粋を集めて描かれた絵画のような。壮大な景色が広がっていた。


「ヒロくんはこのゲームやってないの?」

「やってない。子どもが生まれたばかりだからな。船から降りたら子煩悩だ」


 山岳エリアの案内をしてくれたカイユウを労うために、酒場に訪れた私たちの話題は専ら兄のこと。


 電話をすることはたまにあったのだけど、今年に入って子宝に恵まれた兄夫婦。時間を取らせるのは何だか申し訳ないと、連絡を控えていたのだ。


 奥様である、あやめさんとも仲良くさせてもらっている。久し振りに会って話もしたいし、落ち着いたら連絡を取るのもいいだろう。


「ふぅ。あいつの話だけでも盛り上がるもんだな」

「私も新鮮だったよ。仕事場の話はしたがらなかったし」

「自分から話をするよりも、人の話を聞くのが好きなやつだからな」

「私と逆のタイプかもね。私はもう、自分の知識をひけらかしたいタイプだから」

「ふぅん。じゃあ、その知識をひけらかしてもらおうじゃないか」


 あらら、アルコールが回って口が軽くなっていたのだろうか。余計なことを言ってしまった気がする。その瞳は、今から探りを入れるぞ。という目的がありありと浮かんでいるのだから。


「砂漠に街があったということは、他のエリアにも街があるんだろ? 見つけたのか?」

「うーん、どうかなぁ。こちらにもこちらの都合があるからなぁ」

「なにもお前の手柄を奪うつもりはない。俺が思うに、なにか特殊な条件が絡んでいるんだろう? それをどういう発想で導き出すのか。俺には、俺たちにはそれが足りていないと思うんだ」

「だから、それを知りたい?」


 しっかりと頷く彼の想いは、なかなか無碍にはし辛いものがある。


「まぁ、いいよ。私もこの辺り、特に湖エリアの知識には疎いから、交換条件と行こうか。今回に限り、協力しよう」

「いいぜ。お互いにチュートリアルみたいなもんだ」


 同意を形にするように、私達はグラスを重ねた。


「先ず、砂漠についてはなんとなく分かるでしょ。砂を掘り起こして街を見つけることがトリガーだった」

「ああ。あれは盲点だった。マップを掘り返すなんてことができるとは思わなかったからな」


 みんなそれを言うなぁ。ここまでリアルなのだから、掘ってみようとは思わないのだろうか。思わないだろうなぁ。遺跡発掘を目的として、誰がロールプレイングなんてやるのだろう。


 ただでさえこのゲームには、プレイヤーが自由にできるエリアが定められているのだ。そんな要素があるのだから、正規のマップを弄るような仕掛けがあるとは、なかなか思い至らないのではないか。


「それと、海岸で亀が虐められているけど、どうしたらいいか。なんて問い掛けてくるクエストがあるんでしょ?」

「あぁ、あの回復アイテムが貰えるやつ。……まさか」

「そう。俺が行く! みたいに返答すると、海岸に虐められている亀が出現したんだってさ。それを助けてみれば――」

「辿り着いたのか?」

「まだ攻略中。私の頼りになる仲間が頑張ってるよ」


 これも嫌な仕掛けだ。テキストベースで終わると見せかけて、そのテキストに参加することができる。


 日本を舞台にするゲームをやっていたとして、この場所は不思議だ。調べたほうがいいか、と問い掛けられる。それでわざわざ現地へ行こうとするか?


「あぁ、分かった。それは誰かに聞かなきゃ分からんわ。運営が知っていたとしても、テキストにどう返答したほうがいいですかね? なんて聞くわけがないし」

「そこで質問です。湖エリアに関する、そう言ったクエストはない?」

「湖エリアに関するクエストは、主に釣り関係が多いな」

「竜に関するものとかは?」

「竜? いや、ないな」


 残念。湖といえば竜に関する伝説が頭に思い浮かぶ。それに釣りというワードも気になる。おまけに標高の高い位置。北東北にある伝説と類似する点が見えそうに感じたのだけれど……。


「じゃあ、恐竜が目撃されるとか」

「あははっ、湖だけにか? 今のところ、そう言った目撃情報はないな。ま、新しく発生していても不思議じゃないが」


 ならば確かめに行こう。


 グラスと皿を空にして、会計を済ませてクエスト斡旋所へ向かう。一通りクエストを確認するも、返答を求めるクエストは見当たらなかった。


 受付で問い合わせても、そのようなクエストはないとしか答えが返ってこない。他にどのような質問をすれば、欲しい答えが出るかも見えてこない。


 私達は、大人しく斡旋所を後にするしかなかった。


「とりあえず、現地に行ってみるか。砂漠みたいに何かできる場所があるかもしれないし」


 湖までは馬車が通っているそうなのだが、山道を迂回に次ぐ迂回によってなかなか時間がかかる。


 今日中に辿り着くのは無理であることが明らかなので、馬に引かれているという安全地帯を最大限に利用し、馬車の中でログアウトとなった。


 翌日。ログインした私はあばら家のような待合室にいた。


「お、来たか。おはよう」

「おはよう。待たせちゃった?」

「いや、いま来たとこ」


 カップルかよ。なんて笑いながら、私達はそこを出た。


 待合室の目の前は公園のようになっていて、色とりどりの花が心地よい香りを放っている。奥には巨大な湖が顔を覗かせており、地図で見たときにも感じた通り、かなりの面積がありそうだ。


「湖エリア、なんて言うけどさ、この辺りにはモンスターが居ないんだよ。蝶が優雅に飛ぶ安全地帯。ボス挑戦チケットのランク付けで気が付いたと思うけど」


 確かに、それについては気になっていた。


 ティアから共有されたチケットは、他の人よりもだいぶ多かったのだが、それでもランク4のチケットに関しては見当たらなかったから。


「砂漠では街があるのでは、なんて言われていたけど。此処ではモンスターが現れる場所があるのでは、なんて言われてる」

「モンスターが出なかったら、それこそ本当にただの釣りスポットだ」

「隠し通路なんてものも探しているそうだが、なかなか結果が出ないみたいだな」

「ロールプレイングゲームというより、アドベンチャーゲームみたいだね」

「お、ゲーム初心者だって言う割に知っている感じを出すじゃないか」

「子供の頃、親の古いゲーム機でやったことがあるんだよ。豪華客船、みたいなのが舞台のゲームでね。ナイフが飛んできて死ぬ、落とし穴で死ぬ。説明書がないから何をすればいいかが分からないしで、ゲームというものが嫌になった」


 もしもあの時、別のゲームで遊んでいたら。ゲームに馴染みができて、こうして社員としてゲームはしていなかったかもしれない。だって、仕事にするより遊びたいって思ってしまうだろうしね。


 そう考えると、あのなんとも言えない経験も捨てたものじゃなかった……か?


 ご愁傷さま、と笑うカイユウを連れて周囲を探索してみるけれど、特に怪しいものは見えてこない。


 公園を抜けると森林が広がっていたり、切り立った岩山が見えたり、なだらかな丘に繋がっていたり。まさしく観光に来ているような趣だった。


「時間経過で変化は?」

「一日中釣りをしていた奴も居たそうだが、特に変化はなかったそうだ」

「実は隠していて、一人だけ美味しい思いをしているとか」

「俺の知り合いだからそれはない」


 なら、それを信じるとしよう。


「……ちょっと突拍子もないことなんだけどさ」

「うん」

「近くに大きな山があるじゃん? 切り立った崖みたいなやつ」

「あるな」

「そこから湖に飛び込んでみたりも出来るの?」

「いや、落下ダメージがあるんだから飛び込まないだろ。相応の高い場所から落ちたら、一発で街まで戻される」


 まぁ、そうだよね。普通はそう考える。砂漠の中で継続的なダメージがあったのだから、その手のものにダメージ判定があるのは予想できる。


 でも、でもだ。それはこの環境でも言えることなのか、ということが重要なのだ。


「それは、安全地帯でも?」

「……は?」

「安全地帯でも、街に戻されることってあるの?」

「……お前、どういう発想をしてんだよ。え、マジ?」


 街に戻されるしかデメリットがないのなら、ここは強気に行くのも選択肢、かな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ