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メビウスクエスト・エクストラ  作者: 如月 和
転生と設定とそのまた次へ
38/45

38.ライバル出現?

 転生を終え、山岳エリアのスキップクエストをクリアしようと、神殿のホールにあるベンチから腰を上げた際にかけられた声。


 肉まん野郎――という何とも言えない失礼な呼び名に、眉を顰めながら発生源に視線を向けると……。


 なんとも不機嫌そうな、ちょっとヤンチャそうな。不良漫画に憧れていますよー、とアピールしたげな金髪センター分け赤鉢巻男が立っていた。特攻服は着ていない。


「失礼な呼び方をしないでよ」

「わ、悪い。肉まんを振る舞っていたから、つい」


 素直に謝ることができるくらいには、社交的な面のある人物なのだろう。でも、――女と分かっていながら野郎と呼ぶのはどういうセンス?


「てか、誰よ」

「俺の名前はカイユウ」

「マグロ?」

「回遊魚じゃねーよっ!」


 うん、本格的に悪い人物ではないようだ。ツッコミをいれるということは、コミュニケーションがとれる人物という裏付けとなる。と、私は考える。


「で、そのカツオくんは何のよう? 私にはモカという名前があるのだけど」

「オレか。憶えておこう」


 ……まぁ、自分からふっかけた手前、文句は言えないか。


「はぁ。分かった分かった。で、カイユウくん――さんは何か御用で?」

「呼び捨てでいい。それより、お前が砂漠の街を解放したんだろ?」

「解放したのは、みんなの力だと思うけどね」

「そういう謙遜はいらん」


 謙遜ではなく事実なのだけど……。まぁ、それを言ったところで話は進まないか。


「だとしたら?」

「ゲームの進行を助ける存在、なんて噂も聞いた。だとしたら、それは悔しいことだろう? 俺たちがクリアできなかった、見つけられなかったことがクリアされてしまうんだ。それが、俺は悔しい」


 それを私に言われても……、と感じてしまうけれど、真摯にゲームと向き合っている人達にとっては、手柄を横取りされたようなものなのだろうか。


 それとも、自分に対する不甲斐なさ故か。自分のファーストインプレッションを信じるのなら、彼は後者だ。


「俺の実力が劣っていたとは思いたくない。お前、ゲーム歴は?」

「このゲームを始めて、一ヶ月くらいかな。ゲームと言うもの自体初心者」

「そんな奴にっ!」


 凄むなよ。あんた顔が怖いよ。背も高いし。


 私の身長が百六十に少し届かないか、もしかしたらもう届いているかもしれないという願望を込めているくらい。頭一つ分以上は見上げている彼の身長は、百九十近くはあるのかもしれない。


 ガイアもユキも平均身長くらいだったから、なんだか新鮮な感じがする。……身長盛ってる?


「……おい、ちょっと面貸せよ」

「嫌だと言ったら?」

「……お前の実力を見せてみろ。弱っちい奴でもクリアできるものを、俺がクリアできなかった。なんて思いたくないからな」

「つまり?」

「俺の前で、俺の指定したモンスターを倒せ」


 最初からそう言っていれば、私も素直に返事をしてやったのにさ。その提案は、今現在の実力を測るいい機会になると思うから。


「モンスターは私に指定をさせて。ランク3のスキップクエストをクリアしたいから」

「まだそこなのかよっ!? ……はぁ、それだけでも軽くショックなんだけど、はぁ、まぁいいや。もう、それで勘弁してやるよ」


 悪いやつではないのだろうけど、なんというか、素直すぎる奴、なのだろうか。言動で損をするタイプに思える。


 まぁ、その分付き合い始めたら長いこと一緒にいられる人物かもしれないけれど……あ、付き合うといっても男女の仲では断じてない。男女の仲だったら、たぶん無理。


 ……いや、ギャップによる巻き返しも考えられるから、そう考えるのは早計か。などという謎の専門家感。


 ともあれ最大限の妥協は引き出せたので、私達は並んでクエスト斡旋所へ行き、スキップクエストを受諾して山岳エリアへ移動した。


 山の街へ辿り着いているカイユウと共にであれば、ワープすることも可能であった。けれど、彼はそんな甘えを許さないようで、問答無用で馬車の旅。


 四時間ほどの長い旅路であったが、その間の雑談により、思い掛けない発見があった。


「お前、やっぱり千尋の妹か!?」


 まさかの兄の同僚だったのだ。


 彼としても、どことなく見覚えのある顔だなぁ、と思ったのもあって声をかけたらしい。私が高校に入ったばかりの頃の写真を見せてもらっただけであったし、確証は持てなかったと。


 私の兄、千尋は、長距離貨物船でコックをしている。


 既に結婚をして家を出ている上に、陸にいる事も珍しいために今では会うことも少ないが、十歳ほど歳の離れた兄は、よく私を可愛がってくれていたものだ。


 お腹が空いたと言えば、コンビニにお菓子を買いに行ってくれる。

 喉が渇いたと言えば、近くの自動販売機までお気に入りのジュースを買いに行ってくれる。

 運転免許を取ってからは、買い物にも連れて行ってくれていた。


 ……私がだらしなくなった原因でもあるんだよなぁ。


 そんな兄の同僚と言うことは、船乗りなのだろう。美味しい料理に力をつけさせてもらったと、しみじみという彼の姿に、私もなんだか誇らしくなってしまう。


「それよりさ、貨物船の乗組員がそんなに口悪くて大丈夫なの?」

「猫を被るのは得意なんだ」

「なんだ、ネット弁慶か」

「いつの時代の言い方だよっ!?」


 船乗りだけに、ノリが良い。


「けど、なるほどなぁ。あれだけデレデレしているから、どんな妹かと思ったが。……なるほどなぁ」

「人を値踏みするような目で見ないでくれる?」

「兄と違って強気でやんの」


 優しさ百パーセントの兄と比べないで貰いたい。それくらい、穏やかで良い人なのだ。


「ま、そんな関係性でも甘く見てはやれないけどな。俺が満足できる、しっかりと強いところを見せてもらおうじゃないか」


 街に着いて、観光をすることなくなだらかな山に入る。


 山岳エリアと言っても、山の街はまだ低い場所にあり、周りを取り囲むように切り立った高い山々が聳えているのが見えた。


 傾斜はあるが、まだ草原ともいえる。そんな場所で、兄の同僚に見守られながら、私はチケットを消費してボスを出現させた。


 登場したのは、とても奇妙なモンスターだ。


 エッグフットバットと言う名前で、卵にゴリラのような手足が生え、コウモリのような翼が生えている。


閻浮檀金(えんぶだごん)!」


 早速、戦闘モードだ。金精霊は覚える魔法が少なく、全部で三つ。五十、七十五、百でそれぞれ覚え、どれもが大きなデメリットがあるが強力なもの。


 閻浮檀金はミクが使ってきいたオールアップを大幅に強化したもので、今の私の体力ゲージでは、少なくとも九割は最大値を削られてしまっている。


 次に覚える金烏玉兎(きんうぎょくと)は、よりスピードのステータスが上がるようになり、おまけにパーティーを組んでいる人や、指定した味方にも効果を発揮するようになる。


 その分自分がやられてしまったら効果もなくなってしまうから、如何に生き残ることができるかが肝心となる。


 まぁ、ソロでやる時には気を付けるしかないが、誰かと行動する時には守ってもらうしかないだろう。


(とはいえ、そんな甘いことを考えるつもりはないなっ!)


 思い切り踏み込んで、一太刀。ピンボールのように弾け飛ぶエッグフットバットを、私は普通には追い掛けない。


冥転(めいてん)!」


 冥精霊の時に覚えたワープの魔法を使い、瞬時に相手の背後に出現する。間合いは十分に取って、視界になれる猶予も確保した。


 あとは、強化されたステータスに任せて刀を振る。


 このモンスターと戦うにあたって、重要なのは正面に立たないことだ。正面に立てば、ドラミングによって割れた殻の破片が飛び散って、当たった場合にも、散らばったそれを踏んだ場合でもダメージを受けることになる。


 その範囲は、避けるのは容易ではない。


 だからこそ、今の私にとっては相手の行動を封じるために果敢に攻める他ない。


 振り向こうとすれば、冥転――ワープを使って背後に移動して攻撃。翼をはためかす攻撃をしようとしてくれば、距離を取る。そして正面を向いたら透かさず背後へ。


「ウィークアイズ」


 折を見て、私は相手の体力ゲージを確認した。だいぶ減っていて、協力な攻撃を加えられれば、一撃で削り切ることができるだろう。


 ワープを使って翻弄し、姿を眩ませたところでチャージ開始だ。


「とどめッ! サンメテオライトッ!」


 いつか見て、密かに憧れていた点から振り注ぐ巨大なビーム。それに飲み込まれたエッグフットバットは、もう、私の視界には入らないだろう。


「ふぅん。まぁ、なかなかやるんじゃないの? とりあえずは認めてやるよ」


 などというありがたいお言葉も頂いたことだし、これで私も、みんなと肩を並べて戦うことができるだろうか。


 先ずはレベルを百まで上げて、転生をして。そうしたら、湖エリアに挑戦だ。

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