37.私が考えた最適な転生ルート
理想とする戦闘スタイルに向けて、種族の組み合わせを考えている私は、朝という時間をのんびりと過ごしていた。
朝ごはんを食べて、ウーフの散歩を済ませ。部屋でベッドを背もたれにして、のんびりとラグの上で寛ぐ。
普段から自分の居場所にしているラグを取られて不満なのか、はたまた此処で一緒に遊びたいのか。夢中で足に甘噛みを繰り返すウーフ。朝っぱらから雨でもないのに、靴下がぐしょぐしょになりかけている。
靴下を脱いで、場所を譲った。
「アイテム集めもしたいし、チケットの残量を考えれば二種族が限度かなぁ」
デスクチェアに身を預けて、頭の中でインベントリを思い浮かべる。
先のエリアに進み、スキップ出来るチケットを増やせば、もう少し余裕が出来るかもしれない。けれど、最終目標である金精霊のマスターボーナス取得を目指すなら、あまり無駄遣いをしている余裕もないだろう。
手広く転生をするには、まだまだチケットが少ない。手に入れたときはあんなに大量にあると思ったのに、使い道が増えたとたんこれだ。
せっかく素足になったのだからと、人に見せるつもりもないのにペディキュアなんてものに洒落込んでみる。
どうせ考え事をするのだから、手先を動かしていたほうが頭も働くだろう。私の珍しい行動に、ウーフも興味津々な様子だ。
「近寄んなよー」
そう注意をしつつ、頭の中に思い浮かべるゲームの世界。
どうせ次のエリアに進むのなら、万全な状態で進んだほうがテキパキと事を運べるのではないか。それに、スキップ可能になったチケットを、金精霊のレベル上げに使えるというメリットがある。
だから、今現在余裕を持ってできる二種族に転生をして、一通り魔法や必殺技を覚えるという方針は間違っていないはず。
もう少し人に相談をしたほうがいいかもしれないが、自分でこういう風が良いのかなぁ、と結論を出そうとしているときに人の意見を聞いたとしても、それを反映するつもりはあまりないだろうし。
ひとまず、初期種族であるヒューマンは確実に転生済みとなるため、残るは一つ。
さらに物理的な必殺技を望むなら獣人へ転生すべきだし、魔法を覚えるならエルフ。ドワーフは、装備の強化に特化しているらしいから選択肢には入らない。
「回復魔法の海精霊か、便利で嬉しい冥精霊か」
でも、金精霊を目指すのなら回復魔法は無用の長物になりがちか。そうなってくると有力候補は冥精霊だけど……。
「あともう一つくらい、欲張っていってみようかなぁ」
だとしたら、なににする? それが見えてこない。
有利に働く魔法の事を考えると、火、水、木の精霊に転生をするのなら、その三つをセットにして考えたほうが使い分けなどの楽しさが広がるだろう。
土精霊は自身をゴーレム化して、カスタマイズすることができるそうだけど、もちろんそれは土精霊である時だけ。最終目的とする以外では、通過するメリットがあまりない種族なのかも。
無駄知識にない、マスターボーナスがどういう効果を発揮するのか。という問題があるけれど、それは十連続転生というハードルの高さから、今考えることではない。筈。
職業型で得られるボーナスも気になるところだけど……。
地精霊はどうだろう。地属性はなかなか広い魔法で、大地を隆起させたり、風を起こしたりと幅が広い。なんでも、天候を操ることも可能という話もある。
天候なら天属性では? と思ってしまうけれど、天属性はどちらかとうと光や太陽に纏わる魔法がメインらしい。その他にも、モンスターの体力ゲージを視認できるようになったりするそうなので、冥と天は便利な属性、との認識でいいだろう。
「……うん、いい感じかも」
出来上がった爪も、考え抜いた自分なりの転生ルートも。自画自賛できるくらいには仕上がったように思う。
職業型のボーナスについては、今は考えない。一度レベルマックスにするだけなら、一度金精霊で十連続転生を経たあとでも充分だろうし。
それにしても、こうして爪先を彩ってみるのもたまにはいいかもしれないな。もしも夏であったのなら、サンダルを履いてもう一度、ウーフを散歩に連れ出したことだろう。
「じゃあ、仕事にいきますかね」
足に顔を寄せようとするウーフを制しながら、私はベッドに横になった。ゲーム中に冷えたりしたら嫌なので、結局は靴下を履くのだけど。
ログインして、私は直ぐに神殿に向かう。そこで転生を繰り返した。
ステータスに関しては、ヒューマンの間にカンストまでは行かなかった。レベル一つ上げて手に入るポイントは五つなので、九十九回のレベルアップで得られるのは五百未満。初期ボーナスと合わせて超えるくらいだ。
ユキから貰っていたリセットアイテムで初期化して、先ずはガードのカンストを目指す。
ステータスに関しては、強化魔法でいくらでも補助ができるのが金精霊だ。しかし体力ゲージの最大値だけは強化できない。必然的に、ガードのステータスを上げて補助する必要が出てくる。
ラックも上げたいところだけど、それは体力に余裕を感じ始めてからだろう。
引き継げるステータスは、一回目の転生で五十二。二回目の転生で百六。小数点は切り捨て。
「徐々に増えていく数字って、楽しい」
神殿のホールに置かれたベンチに座って、独り言を呟く私はどう映っただろうか。
若干恥ずかしくなって咳払いをしたあとで、ついに三回目の転生を果たす。目標の金精霊だ。振り返れば目に映る、透き通るような金色の羽根が少し目立つけど、まぁ、それもアイデンティティというものだろう。
ステータス画面から使用可能な必殺技、魔法のラインナップを確認すれば、これまで通過した種族で覚えたものが並んでいる。これで金精霊のレベルを上げれば、この中に強化魔法が増えていくことになるだろう。
「少し欲張った、かな。一気にレベルを上げるにはチケットが心許ないかも」
ランクの低さ故だろう。レベルを百まで上げるのになかなかの量を消費してしまう。五十以降はスキップ二回で一上がる感じだから、消費するチケットはそれだけで四百九十枚。
本当に、フレンドになってくれた皆には感謝の念しか湧いてこない。一年半、頑張ってくれてありがとう。
山岳エリアの適正までレベルを上げたら、次のランクのスキップクエストをクリアしたほうがいいだろう。
そう決めて、ある程度レベルを上げてからベンチから腰を上げると――。
「お前か? 肉まん野郎は」
物凄く失礼な名前で呼ばれたのですが?




