31.VSサンドリットゴーレム その五
「一旦、退避!」
唐突な状況ではタイミングが合わせづらいと、私達はティアの掛け声に合わせ、移動を伴う必殺技を使って砂漠へと降り立った。
サンドリットゴーレムが変化した脛から下の足の形態。それは私がいたた上空を切り裂くようにして弧を描く軌道を見せた。
強力な蹴りだったのだろう。空気が振動する感触が肌から伝わってくる。
足はそのまま砂漠へと潜っていき、二撃目のタイミングを計っているようだ。
その猶予を活用して、私はある提案をした。
「一つ提案なんだけど、私が囮になるから、みんなは離れたところから観察してタイミングを計ってくれない?」
「ははぁん。蹴り上げられて、どのくらいで攻撃が来るかってことだね」
ティアの言葉に頷く。
大きなダメージを与えるのなら、みんな揃って打ち上げられて、そのまま攻撃をしたほうがいい。けれど、上空に打ち上げられた状態では体勢も整えづらく、タイミングも計りづらいのでは、と感じた。
それに――。
「それと、ロンドが地上から足の甲を狙って撃てば、そもそもタイミングを計る必要はないかもしれないしね」
「ガトリングは低射程高威力の武器となってますし、上手いこと当てられるかは、試してみないと分かりませんよ?」
「じゃあ、それを試すには囮になる必要はあるわけだ」
「避けられなかったら?」
心配そうなティアに微笑んで、私はこう答えた。
「別に、私の攻撃で足のターンは終わるかもしれないしね」
囮になると言っても、別に攻撃をすることを諦めたわけではない。当然の如く、私だって素直にタイミングアクションと言うべきものに取り組んでみるつもりだ。
「最悪、ヒナタに救助してもらえばいいしね」
「あのときと同じですね! 任せてください。ヒナタの鎖は百発百中です」
心強いよ。そう言って、私はみんなから離れるように移動した。
地面が振動を始めるのを感じる。おそらく、すぐに私を打ち上げるための蹴りが繰り出されるだろう。ここでもタイミングを合わせられれば、上空で体勢を崩すことはないのだけど――。
それはまだ理想論に留まらず、目安となるものが見つかっていない状況で、タイミングを見極めるのは至難の業か。
私は呆気なく上空へと蹴り飛ばされて、体を捩ってなんとか体勢を整える。初撃は、振動が始まって十五秒ほどだっただろうか。
地上ではロンドの攻撃音がはっきりと響いていたものの、立ち位置が悪かったせいか、足の甲を狙うことは難しそうであった。
――バミリでもつけておけよっ!
そんな声が聞こえた気がした。
ゴーレムの二撃目が来るまでに、足が所定の位置へ到達する時間がある。縦の蹴り上げから斜めに軌道を変えて、私の右側下方で待機している状態へ。
そこから、動き出すまでに何秒かかるか。
画面を見ずに、ストップウォッチを押して目的の秒数に近付く遊びをしているようだ。
私の数える秒数と、地上で数えているだろうティアとの数字が一致するのか。少し楽しみになってきた。
十秒を超える。
最初の蹴り上げるまでの時間である十五秒も超えていく。
二十秒も超えてくると、なんだかその滞空時間に冷や汗をかきたくなってくる。それだけ高い位置にいた。
これは、――秒数よりも位置のほうが重要である可能性はあるのだろうか。
ターゲットが落下していく位置、決まった場所でヒットするようになっていたのなら。どこかに、どこかに目安となるものはないか。
さらに経過し、四十五秒ほど経っただろうか。豚骨ラーメンを食べるなら、一度は試してみたい秒数ではないかと思うのだけど、それはまぁ、人それぞれか。
私は思い切って、迫りくる足の甲。弱点らしい黒い球体に攻撃を合わせてみたが――。
「ぐッ!?」
腰に巻き付いた鎖に引き込まれるようにして、私は地上への帰還を果たした。
「あのタイミングは、たぶん早すぎです」
「そう言うヒナタはベストタイミング」
上手いこと着地をした私は、舞い上がって身体に付着した砂を払いながら、ヒナタに礼を言った。
「足が動き出すまでに、五十秒と見た」
「私は四十五秒」
駆け寄ってきたティアにそう答えると、せっかちすぎる。いや、そっちがマイペースすぎる。との議論が巻き起こる。
おそらく、個人差と言うよりも、足が静止したタイミングを認識する時間の差だろう。ティアはおそらく、少し様子を見たはず。
「モカさーん! 次は私よりも右側に行ってください! そうすれば狙いやすそうでーす!」
ロンドの声に片手を上げて答えると、私は二人に行ってくると告げて、指定された場所に向けて駆けていく。
振動が始まる。
打ち上げられながらロンドの位置を確認すると、なかなか良い位置にいるのではないだろうか。
足が待機場所に到達すれば、雨あられのように球体に弾丸が突き刺さる。
どのぐらいのダメージで、あの形態は解除されるのだろうか。タイミングを合わせることで大きなダメージを与えることが可能となり、その方が早くダメージを蓄積できる?
それとも、――頭部の時のように、継続的にダメージを与える方が有効なのか?
後者だとすれば、確実に攻撃が当たる方法でも試してみるのもいいかもしれない。
私は刀を構えて、攻撃と同時に突き刺す態勢をとった。ヒナタが行った継続ダメージを意識してのことだ。
(あぁ、なんかもう、手のひらで転がされている気がする)
大量に受け取った回復アイテムを思い出してそう感じながら、私は迫りくる足に対して刀を突き立てた。攻撃というよりも着地をする感覚で、衝撃を受け流していく。そうして、足は止まることなく次の攻撃へと移っていく。
当然、私の身体は砂の中だ。この結果は、ある程度予想できていた。
つまり、砂の中で私は平穏無事でいられるのかということ。そもそも、これは未だに攻撃の途中なのではないかということ。
みるみる内に減っていく体力ゲージを、回復アイテムで補填していく。あぁ、本当に思う壺だ。けれど感謝の念も受けんでくる。回復アイテムを授けてくれたユキに? いいや、違う。
(命綱、ナイス判断)
腰に薬を巻き付けてくれていた、ヒナタに対してだ。
これで万が一砂の中でゴーレムの形態が解除されたとき、私だけが取り残される心配もなくなった。後はもう、根比べをするだけだ。




