27.VSサンドリットゴーレム その一
表示される警告は、立ち去るか進むかを問い掛けている。私は、ティアとロンドが頷くのを確認して、YESをタップした。
目の前、十メートルほどの位置でつむじ風が巻き上がる。
砂漠が蟻地獄のように削られていくのが、ここからでも確認できた。
ゆっくりと、それが姿を現す。
マキシマムゴーレム程、身体は大きくない。胸元にある埋め込まれた球体の位置が、だいたいバスケットゴールの高さと同じくらいだろうか。ジャンプした際に攻撃がしやすい位置だろう。
テレビのバラエティ番組で、水のように動く砂というものを観た覚えがある。ゴーレムの質感は、まさにそのようなものだった。
そのゴーレムの名前は、たしかサンドリットゴーレムだったか。
チケットを消費しないボス戦は初めてだと、私は静かに身構えた。
気が付けば、その距離は限りなく近い。
「嘘だろっ!?」
驚きのあまり、私は素直に言葉にする。迫る拳を鞘で受け止められたのは、身構えたお陰だろうか。
弾き飛ばされた私の身体を追うようにして、ゴーレムが滑らかに砂漠を進んでいく。
「ホバー移動するゴーレムとかさぁ、それはロボットじゃないの、っと!」
ロンドが両手に構えた二丁のガトリング砲の攻撃を受けてもなお、サンドリットゴーレムは私に対して拳を振り上げている。
着地ができていない状況なら、受けてもまた、弾き飛ばされるだけか。
「ゴーレムも、ロンドの攻撃も、――まったくの予想外だなっ! 流牙っ!」
ゴーレムの進行方向から直角に、移動を伴う必殺技を発動してその攻撃を躱す。
くるりと旋回して私を正面に見据えるスムーズさ、直ぐに滑らかに前進するスピードは目を見張るものがある。
マキシマムゴーレムとの戦闘を経験していたからか、もっと鈍重な相手を想像していただけに、まだこの先の展開にピントが合っていないような――。
どうしても、対処をするしかない行動を取らざるを得ない状況になっているように思う。
こういう時に頼りたいのが――。
「顔面、貰ったっ!」
のっぺりとしたその顔を、ティアの斧が弾き飛ばした。
その勢いで背後に倒れるゴーレム。息をつくタイミングを得られて、私の心も落ち着いたようだ。
「ありがとう、ティア。でも頭は弱点ではないみたいだね」
「ま、明らかに弱点は胸の球体だろうしね。でも、アタシの位置からは狙いにくかった」
拳を振るうために身体が斜めになっていたから、ティアが駆けつけた方向からは見えにくかったのだ。だから、あの場では頭を攻撃するのがベスト。
「二人とも、油断しないで! あいつ溶けてる!」
は? と、ロンドの声を受けてゴ倒れたゴーレムを視界に映すと、溶けているという異常を抜きにしても、ある違和感が見て取れた。
「球体、コアみたいなのがなくなっている?」
「モカ、ジャンプだっ!」
ティアの声に合わせてその場を飛び退くと、足元からまるで動物の口腔のように手の平が襲う。
間一髪逃れてその姿を確認すれば、手の平の中央には聞けたはずの球体。なるほど、砂があれば自由に姿を変えることができる、と。
「あれ、指を閉じたら球体への攻撃も出来なくなるね。大事なのは、変化のパターンを見定めることかな」
「ダウンを取ったら変化する、って感じかな」
ティアの分析に、私はそう答える。球体が砂漠と触れ合うほど接近すれば変化する。先程の状況からすると、それが有力に思えるのだけど……。
「おりゃりゃりゃりゃっ!」
ロンドが放つ執拗な銃弾には目もくれず、ゴーレムは真っすぐに私に向かって体を向けている。目の役割をしているのは、一体何なのだろう。
そのちょっとした疑問を持つ間に、事前に掛けていた強化魔法によってチャージが短縮された魔法を放つ。
「バブルシュート!」
勢いよく直進する泡の群れを受けて、ゴーレムは嫌がるように体を振るう。
「水魔法が嫌なのかな?」
「砂なんだから水で固まるだろ、みたいな安易な考えだったけど、結果オーライかな?」
まぁ、その分怒りを買ったようで、指先から射出される砂の弾丸を、必死で躱す必要が出たのだけど。




