これから始まる決戦に向けて
ゼンタの前にアル、勇者、魔王、それと向かい合わせにヴィンセント、チェア、次郎が立つ。まるで相対するように睨み合う6名の殺伐とした雰囲気は今から喧嘩が勃発する寸前と言ったような様子だった。
「なんかいい雰囲気じゃの〜。しかもそこにおるのは魔術の大精霊ではないか。ディビンヌスリーが揃うのは何百年ぶりじゃ?」
洞窟の奥から黒い振袖を来た角の生えた女とアゲハがこちらに歩いてきた。
ゼンタはその振袖の女を見るのは初めてであったが彼女のセリフからその女もディビンヌスリーだと言う事は容易に想像できた。
「魔王様もいらっしゃたのですわね。ディビンヌスリーと言えどこの方々の前では我々の力もかすみますわね」
「ゲ、アゲハに空の大精霊……お前ら何しに来たんだよ」
「おうおう、魔術の大精霊……いや今はレイと名乗っているらしいのお……妾の事もトキと呼ぶがよい。そこにいるアルからもらった名じゃ」
2人の大精霊はゼンタ達8人の輪に入った。
喧嘩の腰を折られてペースを見出されたヴィンセント達は先程の口論の続きを促そうとする気配はない。
それを見てアルが口を開く。
「神殿には誰も入れないよう結界がはってあるんだけど7人それぞれのお参りができる人数だけ、つまり7人だけ入れるようになってるんだ。つまり7対7の戦いになる。ただその参拝者の使役してるものは武器や防具同様例外になる。だからさっきゼンタとレイちゃんに使役の儀式をしてもらったんだ」
「そう、つまり妾達も神殿に立ち入り、そなた達とデドゥリシンセブンナンバーと戦う運びとなるわけじゃ」
「レイちゃんはゼンタと、アゲハちゃんは魔王と、そしてトキはうちの使役している精霊になったから7人プラス3精霊で神殿攻略に挑もうと思ってる」
「空は平和で時の管理も任されておったのじゃがアルが妾の前に現れた時は驚いたぞ。しかし話を紐解けばアルが言う事は全て事実。今は仲間内で争うのではなく、皆みなで一致団結せねばならんのじゃ。それはそなた達3人もわかるじゃろ」
トキがヴィンセント、チェオ、次郎に言うと3人は観念したようにこちらに向けていた敵意を消した。
「わかったよ。そのガキを今より強くしたらいいんだろ? 手は抜いてやらねえからな」
「まあいいでしょう。ちょうど手伝って欲しい仕事もあるのでそれを任せるとしましょう」
「強くなったらおいらとも戦ってね」
3人は口々にゼンタに言葉を向ける。やっと7人は協力関係を結び、世界を滅ぼす脅威を倒す為団結した。
アルがこれからの作戦を説明しようとした時、勇者が手を上げた。
「作戦を建てるなら何かに使えるかもしれない。使役している者なら連れて行けるんだろ?」
そう言うと勇者は両手を目の前で結び力を込めた。その瞬間大きな光が洞窟の中を真っ白にしたかと思うと目の前にこれまで見たモンスターなど比べものにならないほどのモンスターが3体並んでいた。
「俺は勇者になる前はモンスター使いだったんだ。こいつらはその時使役した俺の仲間達だ」
「ちょっと勇者様! その大きな蝶のようなモンスターはプリアモ・スライムではなくって! 全ての精霊の産みの親とも言われる伝説の……」
それを聞きレイとトキも合点が言ったような表情で驚く。
「ああ、その子供だけどな。ちなみにこの鳥はパンドラ・ドンガルーダ、S級モンスターの頂点にして世界最強と言われていた怪鳥だ」
勇者は一体どうやって絶滅したと言われているS級モンスターを使役したというのだろう。その理由を聞く前に勇者がその3匹の中でも一際禍々しい雰囲気をただよわせた漆黒のドラゴンの頭を撫でた。
「そしてこのドラゴンが俺の相棒であり、仲間の中でも最強のモンスター。ダイゴジ・ラグナロク。神々のペットとも言われている天界のモンスターだ」
そのドラゴンを前にしてしまえばロリィやサンゾウが使役していた3体の使い魔などまるで子犬のように思える。
「自分の会社にもモンスターを使役している部下がいましたが、これは比べものになりませんね」
「ああ! 懐かしいなあ! この子達には僕もかなり苦戦したよ!」
魔王やチェアはその3体を賞賛し、ヴィンセントと次郎は次から次へと現れる強者に自分の力をぶつけたいという欲求が溜まりに溜まっているように見える。
「これはかなり嬉しい情報だよ。ありがとう勇者様。こんな3匹のモンスターも仲間になるって考えたら勝率がグッと上がったよ」
その3匹を前にディビンヌスリーの3人は立ちすくみ恐れおののいているように見えた。
よく見るとこの3体のモンスターはそれぞれどことなくこの3人に似ているような気がした。
「そしてゼンタ。君にはこれを渡して置く。僕には使えなかった代物だけど君の力ならこれを使いこなす事ができるだろう」
そう言って勇者は腰の小さな布袋を開くとどう言った原理かはまるでわからないが黒い鞘に収められた剣を小さな布から出した。
「これは伝説の剣の一本でもあると言われる一方で呪いの武器ともされている代物。使用者の命を鑑みない剣。メタンゼルヴァテイン」
勇者は鞘を持ちその剣をゼンタに差し出した。
「えっと……俺がこれを貰っていいんですか」
「ああ……君の為の剣と言ってもいい。貰ってくれ」
ゼンタは持ち手を握り、勇者からその剣を受け取るとそれを観察するように眺めた。
「案外似合ってるぞ」
レイがゼンタにそう言うと照れ臭そうにゼンタは剣を背中に背負った。
レイから貰った生命の指輪、アルから受け取った幸運と不運の蝋、仲間達全員と勇者試験で手に入れたヴァレンティーナ王女のロザリオ、魔王から渡された損と薔薇の冠、そして勇者から譲り受けたメタンゼルヴァテイン。
これらはあまりにも自分にはもったいない代物達。しかしこれらを装備し適性があるのもまた世界に自分だけ。
これから修行をすると言うにもか変わらずゼンタは既に十分強くなった気さえしていた。
「じゃあ……ここにいるみんなで一年後に起こる最悪を何としても防ごう」
アルがそういうともう誰もそれに反対する事はなかった。
全員が顔を見合わせ頷き。戦いが終わるまでの結託を誓った
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