タイムスリップってどうやるの?
レイとの儀式を終えた後は勇者に敵意剥き出しの3人をアルとゼンタで宥め何とか落ち着かせる事ができた。
「勇者と戦いたい気持ちは組んであげれないけどさ、その気持ちはデドゥリシンセブンナンバーにぶつけてよ。知らない人も多そうだし神殿の英雄がどんな人達だったか説明してあげる。勇者様にだって引けを取らないと思うよ」
「言われてるぞゼンタ」
「うるせっ」
レイは小馬鹿にしたようにゼンタに問いかける。このレイの振る舞いも今となっては心地よさすら感じる。そんな懐かしさをゼンタが感じているとアルは英雄達を1人ずつ紹介していった。
「かつては何百と分かれていた国を武力のみで一国に統一した小さな国の王。ストライブサン。
その出鱈目な強さはどれも嘘だと言われる逸話ばかり、手刀で大地を割り海を作り、頭突きで隕石を止めた獣人。チェックマン。
本来の魔法のみならず全ての禁忌魔法を使用する事もでき、アタナシアを放ち絶命したと言われる魔道士。チューズペイズリー。
彼女からディビンヌと言う言葉が生まれ、全ての精霊を束ね使役していた精霊の大精霊。フェアアイルウェンズ。
決して逆らってはいけない存在である神がこの世を消し去ろうとした際、神を説得し人類滅亡を防いだ教祖。カモフラサーズ。
この世の全てのS級モンスターを狩り尽くしS級モンスターそのものを絶滅させた冒険者。ドットフライ。
魔界で最も力のある存在、その18代続く歴史の中でも歴代最強の実力を持つと言われている魔王。サタヘリンボーン。
この7人の英雄達の中に大罪人の魂が入ってしまったんだよ」
その説明を聞き、ゼンタが深刻な顔を作るもヴィンセントや次郎の仕草からは違う感情を抱いているように思えた。
「サタヘリンボーンは僕の3代前の魔王だよ。君達、妙にワクワクしてるみたいだけど、ひいじいじの実力は僕と比べても雲泥の差。勝負を楽しむ前にやられちゃうと思うよ」
「は? 何だと? 魔王この野郎」
ヴィンセントが立ち上がり魔王に詰め寄る。
「確かにサタヘリンボーン本人なら勝機はないかもしれない、でも作戦を立てた上で肉体に入った魂が体に慣れる前なら勝てる……うちはそう思っている」
アルがヴィンセントと魔王の間に割って入る。
「アルはそいつらと戦った事があるのか?」
「うち自身はないけど、戦ってるとこを見た事はあるよ。それで言えば実力や技やスキルがわかる大罪人は3人。彼らの情報なら持ってるけど残りの4人に関しては未知数なんだよね」
「それでその直接見たって言うのは誰なんだい?」
「伝説の冒険者ドットフライの亡き骸に入った大罪人。ロレンツォ。当時の奴にはここにいる誰も敵わないと思うよ」
「どうも信用できませんね。神族でもないのにそんな実力を持つ人間がいるとは思えません。そもそも未来からどうやって来たというのですか?」
チェオがあるに問いかけた。
「それはみんなのスキルを工夫し、掛け合わせ何とか命懸けで来たんだよ」
「答えになっていません。理屈を聞いているのです」
まだ信用できないと言ったようにチェオはアルに詰問する。
「あなたの部下ダイナマイトジョーのスキルについては知ってる?」
「ええ、勿論。彼のスキルx̄×x̄。反射的に行う行動や無意識化で行う意図していない動きの威力やスケールが一億倍されるスキル。それが何か関係あるのですか?」
「そのスキルとゼロアシのスキル転移。更にナケイアの回復スキル、ロイドのスキル、うちの最適化自動モードを掛け合わせてここに来たってわけ」
この説明でアルの伝えたい事がわかった人間はこの場にいないだろう。全員のキョトンとした表情を見てアルは続けた。
「うちが所有している自動最適化モードは自分の意思とは関係なくその場で1番最適な行動を自動で繰り出すスキル。これにより転移を無意識化で行えばダイナマイトジョーのスキルと転移をかけ合わせる事ができる。1億倍となれば転移先の座標を過去にする事も訳なかった。問題はそんな猛烈な転移をすればうちの肉体がもたなかった事。でもルイドのスキルで威力を最大にした回復スキルを常にかけ続ける事で何とかギリギリ死ぬ事なくここに辿り着く事ができたんだ。わかってくれた?」
確かにアルのイリーガルスワップは盗んだスキルとスキルを同時発動する事できるのは周知の事実。それを利用すれば今言った理屈も一応はまかり通る。
その説明を聞くと誰もそれに反論する事はなかった。
「なるほど、とりあえずはあなたの言うことを信じましょう。それで自分達はまず何をすればいいのでしょうか?」
「まずはゼンタをあなた達が順番に鍛えてあげてほしい」
「おいおいおい、それはごめんだぜ。何でこんな強い奴らがいっぱいいんのにこんな雑魚のお守りしなきゃなんねえんだよ」
「同感ですね。この子は切り捨てるのが得策です。弱い人間を育成する時間があるなら我々の実力向上や作戦会議に時間を割いた方が適当でしょう」
「うーん、おいらは教えたりは下手っぴかも」
ヴィンセント、チェオ、次郎はゼンタの修行をつける気はないようだ。反対派の3人はゼンタとアルに向かい合うように立った。
「申し訳ないけどこれは確定事項。ゼンタを強くする事は変わらない。それにはあなた達3人にも協力してもらわないといけない」
「ほう、それほどまでに彼を買ってるのですか。でも自分達が言った事も間違いではないはず。勇者や魔王はどう考えておられますか?」
チェオがゼンタの後ろに立つ2人に聞いた。
「僕はゼンタを強くするのに大賛成だよ。ゼンタには無限の可能性がある。それにゼンタが強くなれば僕自身にとっても特だしね」
魔王がそう言った後、後ろに立っていた勇者は前に歩き出す。時間の猶予もなければ残りの6人からしても格上の存在。実力不足の人間のトレーニングなど本来なら誰もやりたがらないだろう。ゼンタは勇者が反対派陣営に足を進めているのかと思った。
その時勇者はゼンタの目の前で立ち止まった。
「彼の目を見ればわかる。彼は必ず勇者になる。この中の誰よりもその可能性を秘めたている。魔術の大精霊や魔王が心を許し、類稀なスキルを持っているとも聞いた。断る理由はありはしない」
ゼンタには勇者の背中のマントしか見えなかったがそのあまりにも神々しくも凛々しい出立ちに感動した。
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