竜虎相搏
ティーティーピーチ。彼のスキル、神切る犬。
これはティーティーピーチが使役している3匹のモンスターの中でも最も強力な力を持つケルベロスを刀に変えるスキル。
この刀を使えばこの世の全てのもの(干渉できないもの含む)を物理的に切る事ができる。質量があるものは勿論、水や光といった無機物や電波まで切断可能。更には人との縁や絆なども物理的に断ち切る事ができる。ティーティーピーチ自身の実力と対象の力によって刀が通らない事もあるが、力が上回っていればどんな物でも問答無用に断ち切る事ができるスキルである。
エージェントデンジャラス。彼女のスキル、バロウプログラム。
これはエージェントデンジャラス自身が一定以上、相手の力量や実力を把握し解析する事で発動条件を満たすスキル。その方法は戦闘を行い図るものでも、観察して行うものでも構わない。無論、前者の方がより早く確実に自分のものにできるのではあるが。それにより相手が使う技や力、魔法までもを自分がコピーする事ができる。
エージェントデンジャラス自身の身体能力や物理的可動域を超えるもの以外であればその者の動きあるいは技を修行などの過程を除外して使用する事ができる。ターゲットのスキルをコピーする事も行えない上、人並み以下の魔力しかないエージェントデンジャラスにとって魔法をコピーする事もできないが、これにより肉弾戦においてコピーできなかった相手はこれまでおらず、実力を鑑みて多くのS級冒険者や、ここに来るまでにも低いナンバーの牢人生の力を我が物にした。
バドルガンジャンゴ。彼のスキル、百銃の王。
これはバドルガンジャンゴ自身の肉体からオリジナルの武器を製造するスキル。火力や威力、その他使い道などはバドルガンジャンゴの発想力に依存する為、ほぼ限界はない。しかし、製造過程で自身の生命力を必要とする為、あまりにも無茶な物を作ると1回の使用でも死亡してしまう。一度作ってしまった武器はその後、生命力を必要とせず自由に出現させ使用する事ができる。
「ちょっとちょっと女の子相手に1対3とか酷いよー」
「うるせえよ。お前みたいな化け物を女扱いしろなんて親から教わってねえんだこっちは」
「ティーティーピーチがおいらみたいなジョーク言った! 聞いたかよエージェントデンジャラス」
3人はおもむろに一歩ずつ歩みを進めていく。
その時、突如として床が盛り上がり、それが槍のように伸びるとバトルガンジャンゴの腹に刺さった。
「君達3人の中で1番強いのこの子でしょ? あたちの手の内を把握される前にやらせてもらうよん」
大量の血が赤い床を更に赤く染める。
「グエッ……おいおい、こんなところにでっかいピアスつける予定はないぞ」
バトルガンジャンゴは先ほどとなんら変わらない様子で立ち止まる事もなく歩みを進める。その姿はたった今本当に腹に大槍が刺さったのか疑問に思うほどで、先程と全く変わらない出立ちである。
「ハンマーヘッドシャーク」
バトルガンジャンゴは自分の体よりも何倍も大きいハンマーを出現させた。
そのハンマーのヘッドの部分は鮫のような形状になっている。
するとそのハンマーを大きく振りかぶり高く飛ぶとライトニング目掛けてバトルガンジャンゴごと降下していく。
ハンマーがライトニングのいた位置に叩きつけられる。しかしそれはライトニングではなく床を殴っていた。いや床の後を見るに殴ったと言うよりは噛み砕いたと言う方が適切だろう。
「やばいぞ。あいつスキル持ちな上にあんな魔法が使えて、あれを避ける身体能力まで持ってやがる……全員無事で仕事を終える事は出来なさそうだな」
「排除します」
エージェントデンジャラスはライトニングが逃げた先に走り出す。
「これを使え!」
ティーティーピーチがエージェントデンジャラスに自分の持っていた剣を投げる。
「憑依……死神魔剣士……ザック」
先程まで格闘だけで戦っていたエージェントデンジャラスがまるで剣の達人のように構える。
「哀れな一太刀」
ライトニングが剣の間合いに入った瞬間にビュンと振られた剣を紙一重でライトニングがバックステップで避ける。
「俺様がこの中で1番強いと見抜いたご褒美だぜ」
ライトニングの真後ろを取っていたバトルガンジャンゴが拳銃をライトニングの背中に当てる。
引き金が引かれると銃口からドリルのような弾丸が周りに竜巻を作るほどの勢いで回転し放たれる。
ほぼゼロ距離から放たれたドリルを避ける事が間に合わずライトニングは後ろに振り返り両手でそれを止める。
その猛烈な回転を素手で止めるも手のひらから血飛沫を上げ大量に出血する。しかしそれでも尚進み続けるドリルを止める事ができない。
「死ね!!」
走り寄って来たティーティーピーチはその途中自分の剣をエージェントデンジャラスから受け取りドリルに悪戦苦闘するライトニングに斬り掛かった。
例の如く床を盾に変えそこから大量の槍を放出する。
「アダマントヒヒ!」
バトルガンジャンゴが叫ぶと突如として現れた大きな布がティーティーピーチを包む。
見栄えはただのマントであるにもかかわらず、ライトニングの槍はそこを突き抜ける事ができず弾き返される。
「ハグでもしようぜ」
バトルガンジャンゴは動きを封じようとライトニングを後ろから羽交締めにしようとするが持っていたドリルを投げつけられ邪魔される。
その隙にティーティーピーチの剣を避けようと地面を踏みしめた時だった。
「掴みます」
エージェントデンジャラスがバトルガンジャンゴの代わりにライトニングを抱きしめそれを許さなかった。
「おい! そこだけ! こいつにとどめをさす大技を出す!」
「死にます」
エージェントデンジャラスがそう言った時、ティーティーピーチはフッと歯をこぼした。
「バットゲットカンパニーの社員らしい答えだ…… 金刃鬼断罪守銭銅刃!!」
まるでギロチンでも投げ飛ばしたかのような大きな斬撃を放つとそれがライトニングとエージェントデンジャラスに直撃した。
息を整え2人がいたところに目を向けるとそこにはエージェントデンジャラスの死体が横たわっているだけだった。
「はあはあ……こんないったいの久しぶりだよ……まさか玉砕覚悟で動きを封じられるなんて」
「はあはあ……めんどくせえな……あれで死んどけよ……」
ティーティーピーチは震える手に力を入れるとまた剣を握った。
「バトルガンジャンゴ! お前はまだ戦えるな?!」
「朕のお腹見て言ってくれる? ドーナツに何しろって言うんだよ」
「俺諸共でいい! 援護射撃しろ!」
そう言ってティーティーピーチがライトニングに走り出す。
「鱗撃月ヶ永劫牙撲刃」
ライトニングはそれを息を切らしながら避けつつ反撃する。
「一兆這火乱天花炎刃」
避ける。
「宵乃口水流蛮波狗刃」
避ける。
「森羅万勝木殺刃! 土炉満地極烙刀槍刃! 姫蕾千段日豪太陽刃!」
避ける当たる避ける。
「梅灰舞路風舞刃! 竹石花冠沖鞠刃! 松痢黙禅最終刃!」
当たる当たる当たる。
その際もバトルガンジャンゴは2丁の拳銃の引き金を量の人差し指を使い高速で引き続ける。
銃口からは弾丸、ミサイル、ロケット、爆弾、ありとあらゆる弾が放出し続け、2人が戦闘している地点を爆撃し続ける。
2人の戦闘が終わり、バトルガンジャンゴが拳銃をホルスターに戻し、舞う煙が晴れるのを待つ。
「俺のコンプレックス教えてやるから死んでてくれよー」
煙が晴れるとそこには誰も立っておらず目線を床に落とすとティーティーピーチの死体……そしてピクリとも動かないライトニングも横たわっていた。
「ナイス! ティーティーピーチ! エージェントデンジャラス! あのロリっ娘倒したぞ!」
バク宙で勝利の嬉しさを表現し、スキップしながらライトニングの近くに向かうと、今にも止まりそうなライトニングのか細い呼吸が聞こえる。
「君達を……生かしておいちゃ危険……だね……」
「負け惜しみか? 続きはあの世で聞いてもらえ。恥ずかしげもなくキモい技名いっぱい叫んでたあのおっさんによお」
「そんな事言わないで……君も聞きに来てよ」
そう言ってライトニングは首をバトルガンジャンゴの方に向け指を立てると、大きな穴が空いたバトルガンジャンゴの腹から大量の血がドバドバと溢れ出てきた。
「君達みたいな……極悪で無情な人間でも……血は赤いんだね……」
そう言ってライトニングは目を閉じ息を引き取った。
「まじ? えーー……これ死ぬじゃん」
バトルガンジャンゴも床に倒れ込むと血が流れる腹に手を当てた。
「ま……これで子供の頃飼ってたワンちゃんにやっと会えるぜ……あ、違う逃げたんだった」
ガクっとバトルガンジャンゴの体の力が抜けると魔王の玉座の前に4人の死体が転がった。
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