三次試験の内容
天井の穴を抜け、足が地面に着いた時、目の前に広がる景色にはどこか見覚えがあった。
壁や天井に扉が8箇所設置されている。
扉の数こそ少ないが、試しの扉を突破した時に到達した待機場にどこか作りが似ている。
しかし、その不思議な空間よりも目の前にいる人間が繰り広げているバトルに目を奪われる。
1人の女が爆炎をドガドガと打ち続け、それをもう1人の男が避け続ける。
続けて魔法を打とうとした女が詠唱を始めたかと思うと、男の方が指を合わせた瞬間女は言葉を詰まらせ追撃の手を止める。
それを少し離れた所から1人の男が眺めている。
これが三次試験なのか、一体何が行われているのか、まるでわからなかったが、それよりもゼンタはそれを離れた所から眺める男を注視する事を優先させていた。
何故ならばその男をゼンタは知っていたからだ。
「エ……エリック騎士長?!」
ゼンタのその声を聞きやっとこちらに気づいたその男はスタスタとこちらに近づいて来た。
「二次試験を突破したか。俺の名を知っているようだがどこかで合った事が……」
そこで言葉を詰まらせたエリックはゼンタの顔をマジマジと見つめると何かに気づき驚いた表情を浮かべた。
「お前……まさか……ゼンタか?」
いつもクールで感情を表に出す事が滅多になかったエリックは柄にもなく言葉を震わせた。
それも仕方がないだろう4年間王国で稽古をつけた。が、これと言って突出した強さを得られなかった言うなれば元教え子の劣等生が勇者試験を受けているだけでなく、一次二次の過酷な試験を合格しているのだから。
「誰? ゼンタの知り合い?」
アルがひょこりと後ろから顔を覗かせゼンタに聞いた。
「ああ、ガキの頃、俺に剣や武術を教えてくれた王国の騎士団長だよ。でもなんでエリック騎士長がこんなところに」
「それは俺の台詞だ。ゼンタ。どうやってお前がここまで来たというんだ」
そしてゼンタはエリックにここまでの経緯を全て話した。不老不死である事、スワンプリズンでアルを脱獄させた事、勇者試験で起きた全てを。
「まさか……お前がそんなスキルを持っていたとは。国王も大きな原石を逃してしまったな」
「そうだ! そんな事より王国に使える騎士団のエリック騎士長がなんで勇者試験を!」
「それを説明する前に俺の仲間にお前達を紹介しよう」
エリックは手を大きく叩き戦闘をやめるよう大声をあげると猛烈な勝負をしていた2人は戦いの手を止めこちらに歩いてきた。
「こいつは俺の元教え子のゼンタだ。そしてその仲間でS級盗賊のアルセーヌ、勇者試験で出会いゼンタと共に行動する事になったルイドだ」
エリックがゼンタ達を順番に紹介すると杖を持った獣人の女が機敏にお辞儀をすると自己紹介を始めた。
「自分は魔術師のジックと申すッス! 爆破魔法が得意としてるッス!」
ハキハキと自己紹介をしたジックを親指で指すとエリックは付け加えるようにジックの紹介をする。
「ジックとは4年ほど前に勇者試験の一次試験で出会ったリスの獣人だ。その頃ちょうど俺は一緒に受けた仲間を全て失っていた時でな、馬が合って行動を共にしている。こう見えてあの世界一の魔法学校、マケイア大魔術大学を主席で卒業している魔法の使い手だ」
「いやいや、首席の生徒なんて毎年現れる訳ですしそれほどの事でもないッスよー」
ジックは自己紹介を受け照れた様子を見せる。
「小生の名はムサシと申す。おぬし達には馴染みはないでござろうが、ABCエリアにある集落で育った侍と言うものでござる」
ムサシと名乗る男の服装を見た時から予感はしていたがABCエリア出身である事と侍と言う言葉を聞き確信に変わる。
「あの……チヨメという女を知ってますか?」
「チヨメ……聞いた事があるでござるな……思い出した。故郷に奥義を忍法《魔法》のように使えるおなごがおった! お主ら知り合いか?」
「ここまで一緒に旅をしていたんですよ。バットゲットカンパニーに復讐する為にチヨメは今も頑張っています」
「なんと!! 小生だけが命からがら逃げおおせたと思っていたでござるが、我が故郷の同胞に生き残りがいたのか!」
その喜びの声を聞き、堅物だと思ったムサシの印象が変わる。
「更に目的も小生と同じく、仇討ちとは感心感心。それでチヨメはどこにいるのでござるか?」
「それが二次試験を後少しのところで突破できず……今は一次試験会場で修行を積んでいます」
「なるほど……故郷の者の力不足……誠に面目ないでござる」
ムサシは深々と頭を下げた。
「ムサシとは一年前にお前達同様この場で知り合ったんだ」
エリックのその言葉にルイドはひっかかり質問した。
「1年もの間ここにいるって事だよな? て事は三次試験には行けないって事か?」
「いや、三次試験の内容はそこに書いてある」
とエリックが指差した壁に大きな掲示板のような板が貼りつけてあった。
「三次試験は牢人生とのシンプルな戦闘によって行われるらしい。この扉の先にそれぞれ最高クラスの牢人生がいるらしいんだが、受験者は何人で扉に入っても、牢人生を倒し生き残れば全員合格とされるんだ。そこで俺達はここで徒党を組んで戦ってくれる受験者が来るのをずっと待っていたんだ」
「1年待って3人しかここにこなかったんですか?」
「いや、数人だが何人かここに辿り着いた者もいたが、俺達と組むのを嫌がるパーティーが多くてな……つい最近きたサングラスをかけた野郎はつくやいなや1人で扉に入っていたよ」
その男がヴィンセントである事は確信できた。他の人間はわからないがヴィンセントなら必ず単独で三次試験を受けても合格している事だろう。
「最低でも5人以上で受けようと話し合って決めてな。人数が集まるまでここで修行も兼ねて戦闘訓練をしていたんだ」
「なるほど……」
「で、ゼンタ達3人が来てくれたおかげで合計6人……お前達は手を貸してくれるか?」
エリック騎士長の強さは知っている。更にさっきの訓練を見たところ、この2人の実力も相当なもの。最高クラスの牢人生に自分たち3人だけで勝てる自信はその実なかった。まさにこの申し出は渡りに船だ。
「勿論です! エリック騎士長達と一緒に戦えるなんて願ったり叶ったりですよ!」
「そう言ってもらえて良かったよ。ありがとう。ゼンタ」
ゼンタパーティーとエリックパーティーは即席のチームを組み三次試験に挑む運びとなった。
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