仲間になった動機が不純ではなかろうか
ゼンタ、レイ、アルの3人はまたしても分別の沼を目指し歩いていた。
「ロイドにも来てもらえば良かったのにー」
「馬鹿言うなよ。ロイドの力が役に立つ様な事はあっても、頼りになる事はない。危険な旅に巻き込めるか」
宿屋で感動的な再会を迎えた後、ゼンタは分別の沼からアルセーヌを連れ出した目的を話した。
勇者試験を受ける為に仲間が欲しかった事。それには生半可な実力者ではダメだと言う事。
それを聞いたロイドとアルは驚いた素振りを見せたが、ゼンタの仲間になってほしいと言う頼みをアルは悩む素振りも見せず二つ返事でOKした。
ロイドは、ここでゼンタ達と別れる事に悲しい表情を浮かべていたが、頑張ってくれと言う言葉の後に熱い握手を交わし、別れる運びとなった。
「でも、アルがすんなり了承してくれて助かったよ。本当は俺がアルに直接交換条件を持ち出してから拘束を解いて連れて行くつもりだったからな。順番が逆になってしまったら、勇者試験に行くなんて聞いて喜んでついてきてくる訳がないと懸念していたんだ」
「何言ってんだよー。水臭いなー。ついてくに決まってるじゃん」
当たり前と言った様な、アルの言い草には納得ができなかった。恩を感じてたとしても、せっかく自由になれた矢先に、また過酷な環境に身を投じる事を当然と言うのは常人には理解できない。
「それは助かるけどさ。俺たちの旅に同行してもアルにメリットなんてないじゃねえか」
勧誘しておきながら、どこか申し訳なさそうにそう聞くと、アルは両の手を自分の左右の頬につけ、少し顔を赤らめた。
「だってだって、ゼンタはうちをあんな地獄から連れ去ってくれた王子様だよー? そんな人からのお願いを聞かない乙女がいると思う?」
「は? 何言ってんだお前」
「しかもずっと一緒にいれるんだし、うちからしても願ったり叶ったりだよ」
ゼンタの質問には一切答えず、無邪気に喜んだ口調でアルがそう言った。
ゼンタは当然困った様子を見せたが、そのやりとりをレイはじとりとした目で眺め、嫌味たっぷりの声色で口を出した。
「隕石だっけ? そいつとの一件を聞いたところ、戦闘においては対して役に立たなかったそうじゃねえか。わざわざ苦労して脱獄させてやったのに使い物にならねえんじゃ、ここで消《消え》ても構わないぞ。ゼンタには私がついているからな」
「何? レイちゃん? やきもち? まさかゼンタの事取られちゃうとか思っちゃってる?」
返す刀でレイをからかうようにアルが挑発する。
「お前に? 取られる? 馬鹿言うなコソ泥が! それにこいつただの食料として必要なだけだ! 勘違いするな!」
空に浮いたレイは顔をアルに近づけベーと舌を出した。
「やれやれ、喧嘩はやめてくれ。それに盗賊のアルが、戦闘専門のS級冒険者と戦って分が悪いのは当たり前だろ」
「なあにー? ゼンタ庇ってくれてるの?」
子供が何か企んでるとすら思えるほどの生意気な表情でアルがゼンタの方に顔を向ける。
その時、隣の林から雄叫びの様な魔獣の遠吠えが鳴った。
レイは林の方に目をやり、ゼンタも拳を構え臨戦態勢に入った。迫り来る魔獣の登場を真剣な面持ちで待っていると、ゼンタ達の前にアルがスッと立ち、両手を突き出した。
「じゃあ、うちが強いかどうか確かめてよ。ゼンタ達にも教えてあげる。うちのスキル」




