奇跡的な再開に思わず抱き合ってました
ゼンタの腕を強く握りながらドリーは口を開いた。
「待て、まだ交渉は成立していない」
何か良くない事が起こりそう予感を感じたゼンタは腕を軽く振り払おうするが、ドリーの手はがしりとゼンタの腕を掴み離れない。
「は? お前の提示した額には達しているはずだ! 宝を渡す以外に条件などなかっただろうが!」
ゼンタがそういうと、やっとドリーの手はゼンタから離れた。
「違う……こちらの話だ。お前が俺に出した条件は俺達全員が分別の沼から脱獄する手助けをする……だろ?」
ドリーがそう言って部屋の扉に目をやると、この1ヶ月間ずっと聞いていた聞き馴染みある声が開いた扉の廊下から耳に入ってきた。
「いやあ、すまん我慢の限界でな。部屋にトイレはないって宿屋の受付で言われたもんでよ」
ゼンタは口をポカンと開き、ズボンのチャックを上げながら照れた様な口調で入室してきたロイドを見つめた。
「ロ……ロイド」
「俺が条件を満たしていないなどとイチャモンをつけられたくはないからな。隕石がこいつを取り押さえたあと、すぐ私も山へ向かい囚人の引き渡しを行ったのだ。こいつを俺に引き渡したあと、隕石がお前たちを追いかけに行った隙をつき、待ち合わせ場所をこいつにも教え、逃したというわけだ。山に入られたら捜索不可能な状況だ、こんな小物を逃したと言っても俺の処罰はそれほど重くはなるまい」
ゼンタはたまらずロイドに抱きついた。
「おいやめろよ気持ち悪い!」
どこか嬉しそうにゼンタの抱擁を拒否するも、ロイド自身もゼンタの腰に手を回していた。
「ロイド! ありがとう! お前がいなかったらあそこで全員捕まっていた!」
「それは構わねえけどよ! ひどいぜゼンタ! 何故俺にもドリーが協力者だと隠していた! バジル達に穴が空いてる事がバレてた時は肝を冷やしたぜ!」
穴が塞がっていたのはドリーの土魔法による物だった。空いていた穴を布団を捲る直前に薄い土魔法で塞ぐ。その後、バジル達を雑居房から出し、ロイドが1人きりになる状況をドリーは作ったのだ。
「俺たちが穴を掘ってる事がバジルにバレているのには勘づいていた。それでも俺達が脱獄しようとしてる事を看守に言わないのは、お前をより絶望させる日を待っていると思ったんだ。それは脱獄する日。お前にドリーの事を言ってしまえば、緊張感がなくなり、余裕が出てしまう。ドリーが4階の当番の日以外に看守に言われちゃお終いだ。脱獄日……俺が死刑になる日にお前の緊張感がバジル達に伝わる必要があった」
「じゃあ、看守達がシールを犠牲に取り押さようとしたのをドリーが許さなかったのも、攻撃してきた騎士を魔法で止めたのも全部俺たちを逃す為だったのか!」
「当たり前だ! 本来あんなジジイがどうなろうと俺の知った事か! まあ今回の一件でジジイからの信頼は上がり、恩を売ることもできたからな。俺は責任をとる形で退職でもすれば音沙汰なしだ。アルセーヌの宝を手に入れれば、あんな臭く汚いところにいる意味もないからな」
ゼンタとロイドは抱き合い、それにより食事を中断させられたレイは怒り、それを見てアルは涙を流し、ドリーは1人宝を目の前にまた高笑いをした。
こんな幸せなひと時を過ごせているのも、もしかするとアルから譲ってもらったアイテムのおかげなのかもしれない。
騒がしいと隣の客から文句が来たのをきっかけに5人は黙り、気まずい空気が流れると、ドリーが帰ると言うのをきっかけに解散する事となった。




