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アルのスキル



 手のひらを見せつけられたゼンタは拳をほどき、アルの実力を確かめる事にした。腕を組み不満たっぷりのレイも傍観するつもりのようである。


「どうせ盗賊になろうと思った奴のスキルなんて戦闘向きじゃねえだろ、勿体ぶらずにさっさと言えカス」


「もう、かわいくないなあ」


 そう言いながら、アルは下に落ちてる石を拾うと、それを林に目掛けておもいきり投げた。


 すると、その石は木を貫通した。しかし不思議なことに石が通った後の木に穴はなく、まるで木をすり抜けた様に、石はまだまだ進んでいく。1本2本3本と木を通過して行く石の速度は、すり抜ける度に増している。とうとう石は見えなくなってしまったが、その代わりに林の奥から「ぎゃああ」と言う魔獣の断末魔がこだました。



 3人は林の中に入り、その断末魔が聞こえた方に進む。ある程度歩くと血しぶきにまみれた地面の中心に倒れ込む、グリフォンの死体を発見した。


 アルがグリフォンの傷口に手を突っ込むと、その中から真っ赤に染まった石を取り出し、ポンポンと片手で投げる。


「これはうちのスキル、圧投擲。このスキルを使いながら投げた物は、生物に当たるまで具現化されなくなるんだ。可視化はされてるけどね。で、ここからが凄いところで、投げた物が生物に当たるまでに何かを通過すると、1回通過する度に投げられた物のスピード、威力、硬さや鋭さなんかが上がっていく物理攻撃型のスキルだよ」


 それは戦っている場所や状況を選ぶかもしれないが、攻撃手段としてかなり優秀なスキルだ。

 まさかアルが戦闘系のスキルの持ち主だとは思わなかったが、ゼンタはグリフォンの死体を見て、これなら戦闘面でもアルに頼る事ができると安心した。


「は? お前そんなスキルを持ってるくせになんで盗賊になろうと思ったんだよ。それに戦闘なら私やゼンタだけでも事足りるのに、もっと盗賊らしいスキルじゃねえと仲間にする意味がねえじゃねえか」


 まだまだレイはアルが気に入らないようで、グリフォンを一撃で倒した直後だと言うにもかかわらず、アルを叱咤する。


「大丈夫。これはうちのスキルの1つにすぎないから」


「は?」


 ゼンタとレイはアルが言っている事の意味がよくわからず、声を揃えてアルを不審に見つめる。


「うちの、持ってるスキルの数は7つ、今見せたのはその内の一つにすぎないんだ」


 意味を聞いても、わけがわかっていない様子のゼンタは思考を巡らせようと、目を閉じ、手の指を額に置いて考えた。それでも納得の行く答えが出てかなかったので辛抱できずアルに聞いた。


「いや、ちょっと待ってくれよ。スキルを2つ以上持って生まれるなんて聞いた事がない。そんな馬鹿みたいな話がある訳ねえよ」


 ゼンタの言葉に「ふふん」と誇らし気な顔を見せたアルは胸を張ってそのわけを説明する。


「うちの本命というか、先天性のスキル。その名もイリーガル・スワップ。これは人からスキルを盗むスキルなんだよ」


「スキルを盗む?……」


「そう、まあ条件があるから誰でも彼でもって訳にはいかないけどね」


「いや、そうだとしてもスキルを複数持つなんて、そんなの反則だろ」


「まあね、でも条件を満たさないと手に入らないから盗まないと死ぬまでスキルなしと一緒だよ。強いスキルを手に入れるには強いスキル持ちから盗むしかないし、リスクもそれなりにあるんだよね」


「その条件ってなんだよ」


「時間にするとどれくらいだろ?まあ時期によっても変わるけど暗闇…つまり日が沈み登るまで、対象者の体に触れつづけることで相手のスキルを盗む事ができるんだ。まあ、戦闘は弱いけど便利なスキルを持ってるって人ならボコって気絶してる間に盗むって手もあるけど、それじゃ自分より強いスキルは手に入らないからね……でもうちが女でよかったよ……戦ったりしなくても、相手が男なら簡単にスキルを奪えるからさ」


 アルは舌で上唇を右から左になぞる仕草を見せた。その妖艶な微笑にゼンタは顔を赤らめ目を逸らした。


「ゼンタも試してみる? 日が登る前にやめれば盗まれる事もないからさ」 


 先程までの無邪気な表情からは想像もつかないほど艶かしい顔つきに変わったアルにゼンタはドキリとさせられた。


「でもゼンタの、そのスキルが手に入るなら、時間を忘れるくらい、うちめちゃくちゃがんばっちゃうけど」


 ふざけているつもりだろうが、まだ誘惑的な態度をやめないアルにイライラした態度でレイが問いかける。


「ゼンタと同じで任意で発動できないスキルだが、良くそのスキルに気づけたな」


「子供の頃にはわかってたよ。うちのパパとママはスキル持ちだったからね、手を繋いで寝て起きたら2人のスキルを取っちゃってたんだ。ちなみに今の圧投擲はパパのスキルだよ」



 まさか、こんな優秀なスキルがあって許されるのだろうか。

 スキルを持っているだけでも国の宝としたら扱われるのに、それを複数所有しているなんて、あまりにも理不尽だ。


 ゼンタは自分の不老不死と言うチートすぎるスキルを棚に上げ、アルのスキルが卑怯だとでも言いたい用に目で抗議した。


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