心配
「あ…リンノ…」
「あ、呼び捨てはマズイか」
「いや、構わない」
「そうか、じゃあ華鈴。何でここに?」
「あ、ね…黒瑠様にお前を見るように言われただけだ」
リンノは冷めた目で華鈴を見つめる。
「な、何だ?」
「いや、姉妹だよね?」
「双子だ。見分けがつきやすいように私が髪を結んでるだけで…」
「なんで様付けなの?」
「…黒瑠様は聖六道一族の族長。身分を弁えないと…」
「…」
「…姉妹は、いたのか?」
「さっきの無愛想な態度とは打って変わって積極的だな」
「…! いろいろ聞きたいだけだ」
「へえ…。…。…妹がいたよ。多分まだ生きてる。けど、元気にしてるかわからない」
「……心配だな」
「ああ…けど、あんな親じゃ…!」
「なら殺せばいい」
「そしたら引き取り手はどうするんだ? 親はどっちも祖父母と縁を切っている…」
リンノは生きていた頃の記憶を思い出す。
…
「うるさいわねババア! もうアンタの娘じゃないの! 私が何しようと私の勝手! 赤の他人が首突っ込まないで!」
「またあのクソババアか?」
母が乱暴に携帯を切り父の質問に答える。
「ええ。ったく、しつこいわ…。ホント、うざったい!」
そう言うと母は私の髪を掴んで…。
…
「!!」
「…。無理に思い出さなくてもいい」
リンノは汗だくになっていた。…いつの間に。
「親がいなくなって、一人になって…。拾ってくれれば、今よりかはいいと思うんだ」
「…確かに、邪魔な存在だったら最初から拾わないもんな…でも、だからと言って殺すのは…犯罪じゃないか?」
「此処は殺すのが当たり前なんだ。それに、私達は化け物だ。人間に裁けるわけがない。それ以前に人間はこちらの存在を蔑ろにしている」
「…。そうか…。けれど、私は力はない…。それに、まだ怖いんだ。せっかく解放されたのに、って…」
華鈴は心配そうにリンノに言う。
「私も、殺した。人間の時に」
「!?」
「これがその証だ」
そう言って懐から錆びた果物ナイフを取り出す。にわかに血の匂いがした。




