住人
しばらくして、黒瑠がこっちにきた。
今彼女は黒瑠と二人きり。リンノは息が荒くなっていた。
「どう? これで遊びじゃないことはわかったでしょう?」
「…人殺し」
「仕方ないわ。それに、此処に法律はない」
「!?」
法律がない!? そんな。ただでさえバケモノがあちこちにいる世界なのに、縛りがない、無法律だなんて。
こんなの…。
「地獄だ!」
「…。そうね。地獄だわ」
リンノは目を見開いた。黒瑠から想像もしていなかった台詞が出てきたからだ。
「アナタ、虐待を受けていたのでしょう?」
「…」
リンノは無言で頷く。
「私もよ」
「!?」
「私も受けていたの。辛かったわ」
「…それで、死んだ? よくそんな大きくなるまで耐えられたもんだ」
「この身体はここで育ったの」
「え?」
「ここで育った。それだけよ」
「…」
「私達は、死ねない」
「え」
「この心臓が潰されない限り私達は生きていく。私達は戦わなければならない。ここは、そういう世界だから」
リンノはただ黙って聞くしかなかった。
しばらくして皆が大広間に集められた。
全然知らない奴がいっぱいいる。大きい狐とか、小さい狐などなど…。
「この子がリンノよ」
そう言うと周りはざわざわする。
「まあ、少し驚くかもしれないけど…。じゃあ、自己紹介でもしましょう」
そう言うと、大きい白い狐がきた。
「クロウディウスです。リンノ、アナタの側近につかせていただきます」
「あ、はい」
「タメ口でよろしいですよ。まあ、いきなりは難しいですよね」
後ろに茶色の狐と黒の狐がいる。
茶色の狐が喋る。
「ボクはクロウディウスの妹、グランティスカ。よろしく!」
「あぁ…よろしく」
次に黒い狐。
「俺はディアスラー。華鈴の召喚獣だ。ほら、華鈴」
ディアスラーの横にいた少女、華鈴は「うるさい」と一言呟きリンノの方を向いた。
「私は聖六道華鈴。黒瑠様のい……側近だ」
「?」
リンノは華鈴の言動に少々疑問を抱く。すると華鈴はさっさと自分がいた場所に戻る。
次に小さい狐と猫がくる。一見普通の黒狐と黒猫だが、黒狐は9本の尾、黒猫は尻尾が枝分かれして先端が二本になっている。
黒狐が喋る。
「俺の名はガタル。この世界のことはダンタリアンより知ってる。そこらへんウロウロしてるから何か聞きたいことあったら聞け」
「俺はガタルの弟分のグルオ。俺は兄貴みたいなやつじゃないから何も聞かないこったな」
「はぁ…」
もういないか、と周りを見渡す。すると隅で獣人が揉め事をしていて、しばらくしてこちらに向かってくる。
彼等は狐で、とても小さい。精々5歳児ぐらいだろうか。片方は黄色の毛で、手足が黒く染まっていた。また一方は白く、目の下が隈のように黒く染まっていた。
黄色の狐が口を開く。
「僕は門番の賀助です。よろしくお願いします」
「俺は門番の太助。まあよろしくってんだ」
リンノは頷き、黒瑠の方を向く。
黒瑠はもういいだろうと手を叩く。
「皆忙しいのに悪いわね。もういいわよ」
そう言うと皆は一瞬にして姿を消す。黒瑠もそれに続き姿を消した。
残っているのはリンノとクロウディウスだけ。
「戻りましょう。リンノ。あ、私も少しならこの世界のこと知ってます。何か聞きたいことがあるなら聞いてくださいね」
「…わかった」




