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overcast  作者: 街幸カルト
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ワタシノヤボウ

ソロモンの鍵。それはソロモン72柱の封印を解除するための神器。

神器は神々の手によって創られた道具のことである。それは最低でCランク、最高でSランクと、ランク付けされている。中には『禁忌』としてブラックリストに載せられている神器もある。

例えば、ガタルやグルオ、ダンタリアンもそのうちの一つ。ガタルは『本当のことしか喋れない』し、グルオは『人からの信頼を得る』ことができる。ダンタリアンはその口から発することすべてを真にして見せる。

それが神器。

レーニャはソロモンの鍵がどうしても欲しかった。なぜなら、ソロモン72柱が封印されているグリモワール、『ゴエティア』を自分のものにしていた。だが、鍵がなければ何の意味もない。金を守る金庫も鍵を開けることができなければ何の意味もないただの入れ物だ。

子桜という華は静かにたたずみながら成長していく。その根がレーニャという地中の虫を捕らえた。その華は虫からエネルギーを吸い取り成長していく。



「ラリス」

「おお、クロウディウス。なんだ、まだ怒ってるのか?」

「ええ。ですが、貴方ではありません」

「ほお、そりゃ誰だ?」

「村雨子桜、四天王です」

「へぇ、南を支配している…。フン、吾輩には関係のないことだ」

カプセルに再び閉じ込められたラリスは不機嫌なのか、関心が全くない。

「せいぜい関係があるとすれば同じ『妖怪』なところか?」

「そこで貴方にお願いがあります」

「なんだ」

「私たちに協力してください」

それを聞くとラリスは目を丸くして、しばらく笑った。だが、突然人が変わったように怒号の声で語り始めた。

「ふざけるな。お前らは散々吾輩を『発明途上のクツツラ』『危険生物』『話が通じないバケモノ』だの侮辱していた! そして前日、ついに実力行使で吾輩を無理やり跪かせた! それがなんだ? 手のひら返して『協力しろ』だと? 浮かれるのも程々にしろ! お前らは本当に幸せ者だ! 頭を下げれば何でもしてくれると思ってるんだからな!」

「ッ……」

「もう出る言葉もないか? もういい! この程度で口を封じるガキなど吾輩の視界に入る資格なし! 立ち去れ!」


「「まあまあ、落ち着けよクツツラ」」


天井から降りてきたのはグルオだ。

「お主、誰だ? 初めて見る顔だ」

「俺はグルオ。ガタルの弟分と言えばわかるかな?」

「ッ……!」

「まあそう怒るな。本当に済まないと思っている」

「ふざけるな、そんな言葉が吾輩に通じるとでも」

「『ガタルもひどいよなあ、まるでお前を道具扱い。けれどあいつも好きであれやってるわけじゃないと思うんだ。あいつだって純粋に誰かを信じたいかもしれない』」

「…」

「『だから、もう少しあいつに利用されてみてくれないか? 騙されたと思って。それでもだめなら俺は本気を出そう』」

「…お前がそこまで言うなら協力しよう。だが、今回だけだ」

「ありがたい」



「お食事の用意ができました、リンノ様」

「…」

「食べられないのですか?」

「…外には、何がいる?」

「え?」

「…外の世界には、何がある? 私は何を信じればいい」

「どうされたのですか?」

「また、あの夢を見たんだ」

リンノの顔がさらに暗くなる。蘇鍾は慌てた。

「どのような、夢ですか?」

恐る恐る聞いてみる。久しぶりだ。何年ぶりだろう。人間独特の闇を見るなんて。やはり、化け物になったばかりのことだけはある。

「また父が出たんだ。欲望と暴虐の塊が。頭をたたかれた。腹を蹴られた。口から血が出た。けれど躊躇いもせずあいつは私の腹を蹴り続けたんだ。そして最悪なことに母も出たんだ。独占欲が人に憑りついたような人間が。アイツは一生懸命『優しい顔』を作って私の顎をつかんで顔を寄せる。そして私の目を見ていつも言うんだ。「どうして貴方は綺麗な青い目をしているの」って。「私は醜い茶色の目なのに、どうして貴方は綺麗なの。どうして私じゃなくて貴方が綺麗なの。どうしてお母さんに似てくれなかったの。許せない。貴方、とっとと死になさいよ。そしてその青い目を奪ってやる」って言って鬼の形相になって私の顔を蹴るんだ」

語っていくうちに今の世界が消え失せていった。再びあの悪夢の光景に戻っていった。


・・・


母の叫び声が響き渡る。

「どうして!? どうして!? どうして貴方は綺麗なの!? なんで貴方が産まれてきたの!」

母が私の顔を掴む。

母が私の顔をじっと見つめる。

母が私の顔を見てさらに怒る。

「ふざけるな! 何故、何故だ! どうしてお前は綺麗な顔をしている!? どうしてお前の髪はそんなにも美しいんだ!? ライターで焼いたはずだ! なのになぜ! くそ、クソ、クソ、くそ、糞オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

さっきまでの『優しい母』はどこにもいない。どこにも。あるには、ただの独占欲。

実は、まだ人間だったころ、父が違う女性の人と一夜を共にしていたことで父と母が口論になった。その女性はとても美しかった。顔も、目も、髪も、…身体も。その女性はウクライナ人だった。だから私の目は青かった。そう、私は父と母の間の子じゃなくて、父とそのウクライナ人の間の子だ。だから、母に全く似ていなかった。しつこいようだが、そのウクライナ人はとても綺麗だった。人形のような無垢な瞳。絵のように穢れのない肌、一度見たらなかなか瞬きができないくらい美しい髪。柔らかい唇。おそらく絶世の美女であったことだろう。母もそれなりに綺麗であったが、その美女と比べるとその差は歴然である。…私にもその美女の血が流れている。

悪夢の中で、母の独り言が響いた。

鈴乃も成長したらあの女のようになっていくのではないか。この子が成長したら、もし成長した彼女の隣を歩く羽目になったなら。周りから嘲笑されるのではないか。嫌だ…。あの子も、いや、アイツも………醜くなってしまえばいい!

…つまり虐待が始まったのはウクライナ人の女性のせいでもあるし、父のせいでもある。そして産まれてしまった私のせいでもあった。

父は私が産まれるなんで予想だにしなかっただろう。だから私をなかったことにしようとした。

そして、父はまたウクライナ人の女性を呼んだ。そして、私の目の前で殺した。

その光景が悪夢の中で何十回も繰り返し流された。

これが絶望以外の何に見えるのか、これが地獄絵図以外の何に見えるのか、これが人間の残酷さ以外の何に見えるのか。これが、人間なんだ。人間は結局自分勝手だ。自分がかわいいんだ。自分が幸せになれば他の奴らなんてどうでもいいんだ。

だから、それを潰す。消す。滅ぼす。殺す。



「だから、私は人間を滅ぼしたい」

「!」

「……。……あ」

つい、心の中だけで思ってたことが言葉になって出てきた。

「あ、あの…。あ、お夕飯の準備ができました。大広間まで…」

「聞いてた?」

「え、あ、はい。最後の一言だけでございます」

「………」

「場所を変えましょう。鶯の間…つまり子桜様の自室。そこにお連れ致します」

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