誘拐
「……、んっ…ぁあ…」
リンノは目を覚まし、身体を起こす。
「あっ、痛…!」
上半身のあちこちが痛みに襲われた。主に、腕が痛い。
「あまり動かないで」
「え…? 誰…」
謎の女性はリンノの肩に手を添え寝かせる。
「私はローズマリア。貴方が華鈴に血を吸われすぎた時に助けたの」
「ぁ、ああ…」
「何があったのか気になる?」
「…!」
「貴方の中の何かが暴れたのよ」
「え…」
私の中の何か? 私の中に何が居る? 一体何が…。
「詳しい事は後で。今の状態じゃろくに喋れもしないし考えられないでしょ」
「…」
「さ、これ飲みなさい」
ローズマリアは薬草を無理やりリンノの口に運ぶ。
苦い。ちょっ、無理矢理…ヤバい、ちっそ…。
「ぐふっ!」
「あ、詰めすぎた」
「バカか、お前」
ガタルが口を挟む。
「薬草って詰めればいいもんだと…」
「お茶じゃねーんだ。ほら、出した出した」
ガタルは薬草を丁寧にとっていく。
「おーい、だーいじょーぶかー?」
「…ぁ」
「お、大丈夫か。よかった。カカカ…」
ガタルはリンノに耳打ちする。
「もう無茶はするなよ」
「あ、…うん」
「よし! じゃあお前はゆっくり休んでろ! ローズマリア、お前はもう寝てよし!(お前がこれ以上こいつのこと見てたらこいつが死ぬ!)」
「あら、じゃあお構いなく〜」
ローズマリアはバラの中に入り寝息を立てた。
「ッ……」
リンノは再び眠りについた。
「あら、もうすぐで晩餐なのに…リンノは?」
黒瑠の問い掛けにガタルが答える。
「修行のやらせすぎでぶっ倒れた。今寝かせてる」
「あらそう…あまり無理はさせないようにねね」
「はいよ。…?」
ガタルは華鈴に視線を向けると華鈴が心配そうな顔をしているのが見えた。
「誰を心配している?」
「! 何でだ…?」
「お前が珍しい顔をしていたからな。気になった。まさかお前が心配する心を持っているとはな」
「ッ!」
「おっと、今のは流石に怒るか? さて、聞かせてくれ。お前は誰を?」
「ッ…お前には関係ない!」
華鈴はさっさとガタルの前から立ち去った。
「お前にも可愛いところがあるんだなー! 知らなかったぜ! 華鈴『ちゃん』!」
「ッ! 黙れ!」
華鈴はとうとう人混みに消えてしまった。
「おっ」
ガタルは頬を赤く染めた彼女の顔を見つけた。
「カカカ」
やっぱ、アイツも女ってことだなあ。仕方がない、しばらくは生き物扱いしてやるか。
「兄貴はキザだねぇ」
「グルオか。カカカ、女はわかりやすくって可笑しい」
グルオとガタルはげらげらと下品な笑い声を上げた。
…なんて幸せな連中だ。
蘇鐘は心の中で呟いた。中庭から食堂が丸見えだ。それに警備もいない。
「リンノは…あの部屋か…」
蘇鐘は羽を広げその部屋に向かって飛ぶ。パリィン、と大きな音を立てたが晩餐の騒ぎで掻き消された。
リンノはぐっすり寝ていた。だが、蘇鐘が近づくと目を開いた。
「あ、アンタ…誰?」
「貴方にはもう少し眠ってもらいます」
「あ…」
眠り粉をばら撒きリンノを再び眠らせ、抱えた。
「楽勝ですね」
蘇鐘はリンノを抱えながら飛んだ。リンノを抱えているからか、あまり思うように行けなかった。
それを、彼は見ていた。
「あ…あれが…リンノ?」
「あら、本当に…」
「子桜様がお望みとあらば私蘇鐘、なんでもいたします」
「ありがとうね。さて、この子を深山の間へ」
「かしこまりました」
蘇鐘はリンノを抱えその場を後にする。
子桜は歓喜でいっぱいだった。
ついに、狐が、白の化狐が、私の手中に。あの子が…私のところに。
「いい、モルモットになりそう…」




