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overcast  作者: 街幸カルト
17/26

horrible lenya

黒瑠に言われた通りに部屋に戻るリンノ。

自分の足音とは別にもう一つ足音が聞こえる。

「…。誰だ?」

「わっ、なんでわかったの? 合わせたはずなんだけどなあ…」

「…」

かわいらしい声が聞こえ後ろを振り返る。…さっきの子だ。

先ほどの掠れたような声とは違い活発な声を出していた。

「…」

「あ、私ムレイ・セルス。おねーちゃんは?」

「リンノ…。えっと…リンノ・クルットリアー…?」

黒瑠から名乗るように言われた名前がなかなか思い出せず、うろ覚えで言った。

ムレイの反応を見る。頷いているあたりあってたようだ。

「さっきはありがとう。もう少し遅かったら私気絶するとこだった」

「あ、ああ…」

なんだ、お礼か。

返事を返してさっさとその場を立ち去ろうとする。

「あ、待って! おねーちゃんと話がしたいの!」

「え? なんで?」

「え? なんでって…話がしたいから?」

「…」


……


「申し訳ありません、黒瑠様」

「いいのよ…。ところで、ラリスは?」

「あ…あの箱の中です」

華鈴は宝箱のような箱を指さす。…パンドラだ。

中からラリスの声が聞こえてくる。

「出せ! おのれ…吾輩をこのような処に閉じ込めてただで済むとでも思っているのか! 聞いているのか女王!」

「私のことを女王と認めているのなら女王のいうことを聞きなさい」

「くっ…覚えておれ! あの小娘をとことん利用してお前を絞め殺してやる!」

「無駄ね。それにあの子は私に勝つことはできない」

「ッ…吸血鬼のくせに生意気な…!」

ラリスは中で暴れているのだろうか。パンドラがガタガタと揺れている。



くっそ…。なんだぁあのクソアマ。

殺してやる。

華鈴の中でアンゴラが怒りをぶつけていた。

俺が吸血鬼を食った? かつて仲間だった吸血鬼を食った?

それがどうした。それは、『あっちが悪い』んだ。俺は罰を下しただけ。

それにあいつらは俺を怒らせた。あの時、胸から何かが込み上げた。

あれほど誰かを殺したいと思ったのは初めてだ。

くそがくそがくそがくそが。

あの白いアマ、使えそうだ。



「へえ、華鈴ちゃんの姉替わり。結構難しいこと頼まれたね」

「まあ…そうなんだけど…何か華鈴について知ってる?」

「私もファリダットと同じ。食べ物の好き嫌いしか知らない。それ以外の好き嫌いはわからないな…。でも」

「?」

「最近血が吸えなくて喉が痛いって言ってたよ」

「喉が痛いと何かあるの?」

「うーん…。レーニャ姉がいうには動けなくなるんだって。喉が痛くて血を飲んでも体が受け付かなくて…最後には死んじゃうんだって」

「へえ…ファリダットとかの血は?」

ムレイは首を横に振る。

「ダメ。合わないみたい。吸血鬼は誰の血でも飲めるわけじゃないの。特定の人物の血しか飲めない。華鈴ちゃんはこの城の誰とも合わないみたい。…あ」

「?」

「おねーちゃんがいる!」

「え…?」

「いいじゃん! それで行こう!」

いや、勝手に決められても…。

ムレイに手を引かれ部屋から出る。

「あ」

ムレイが声を上げた。

部屋の外にいたのは薄い紫色の髪の綺麗な女性だ。

「あらお友達?」

「あ、うん。リンノって言うの!」

「貴方が…」

その女性はリンノに近づく。何故だろう。心臓がばくばくと音を立てる。どんどん動きが早くなっていく。首筋に嫌な汗が垂れる。

「よろしく。レーニャ・セルスよ」

「あ…よろしく…」

レーニャは手を差し伸べ、自己紹介をした。リンノは握手する。

けれど変な汗は止まらなかった。彼女だけ、『何か違う』気がする。

レーニャは手を放し、ムレイに言った。

「もう時間よ。帰りましょ」

「えー!?」

「それに今日アンゴラが暴れたでしょ? ここも忙しいの。…悪いわねリンノ。この子が迷惑してたみたいで」

「違うよ!」

ムレイはレーニャにそう言い放ちレーニャに引っ張られていく。

「…」

レーニャはどことなくリンノにとっては恐ろしい存在だった。

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