メイド
「…。お前はこれでいいのか?」
「え? 何が?」
ガタルが急に変なコトを聞くものだから、リンノは戸惑いを隠せない。
「お前は人間じゃなくなった。急にここにきて1日しか経っていない。それなのにお前はあたかも自分はここの住民であるかのように接している。何故だ?」
「黒瑠が必死に説明しても、私にはまるで理解ができなかった。勿論、人間じゃないことも理解ができなかった。でも…」
リンノは青のモヤが巻き付いた腕を見る。
「これを見たら、もう人間じゃないんだなって…」
「ふーん…。そっか。じゃ次のステップだ」
「あ、でも…お腹すいた」
「……」
「食い終わったか?」
「うん」
「じゃ次のステップだ。次はその魔力を操ってあの的の真ん中を撃て」
「え? どうやって?」
「ああ、じゃあ見本見せっから」
するとガタルは一本の尾だけに魔力を集中させる。彼の魔力は尻尾に巻きつき先端に溜まっていく。
「こうやって…飛ばすように前に出すんだ。するとビュンって魔力は前に跳ね飛ばされる」
そう言うと魔力が巻き付いた尻尾を思い切り前に突き出す。すると巻き付いた魔力は尻尾から剥がれるように尻尾から離れ、物凄いスピードで的に向かう。
バキィ!
木でできた的は木っ端微塵に砕けた。
「お、やりすぎた」
「え…木っ端微塵にしなくちゃいけない系?」
「いや、木っ端微塵にするのは慣れてからだ。今は真ん中を撃てればいい」
「…!」
リンノは腕を前に突き出す。
魔力は飛んだが、さっきと比べると弱々しく、スピードも遅い。
的に当たる以前に魔力は消えてしまった。
リンノは呆気を取られ、ガタルは横でゲラゲラ笑っていた。
「カカカ、精々頑張れや」
その後、リンノは何回も魔力を放ったが、全然当たりそうにない。
「ガタル、何かコツは?」
「コツか。特にこれは特別なものじゃない。あの的に向かってパンチをすればいいんじゃないか? そうすれば…」
バキィ!
「…は?」
「あ、なんかごめん」
リンノは言われた通りパンチを放った。すると嘘のように魔力は速く放たれ的を粉々にした。
「カカカ、これは末恐ろしい女が一人増えたな」
「?」
「カカカ。今日はここまでだ。明日は魔力属性、魔術。時間があれば武器も選びたいところだ」
「ありがとう」
「礼はいいことよ。疲れたろ。浴室へ行け。確か昨日入ってなかったろ」
「あ、そうだ」
……
浴室。
「あ、リンノ様」
たまたまファリダットと三人のメイドに会った。
「あ、…えと」
「そう言えばまだ言ってませんでしたね。私はメイド長のファリダット・クルルァです」
「ファリダット…」
メイド長か…。
「ほら、3人とも」
三人のうち1人は赤色のサイドテール。一人は眼鏡をかけ、角が生えている緑のショートカット。最後の一人は赤色のサイドテールとは逆のサイドテールの青い髪の女性だ。
まず、緑のショートカットが自己紹介をする。
「私はハル・マーダーです。気軽にハルと呼んでください」
次に赤のサイドテール。
「あたしは弱嘉邦冥々。まあ、よろしく」
次いで青のサイドテールが話す。
「私は弱嘉邦匆々。あ、後で尻尾触らしてください」
ハル以外はちょっと変なところがあるようだ。
「さあ、はいりましょうか」
ファリダットは浴室のドアを開けて言う。
浴室はシャワールームが先にあった。奥にはカーテンが見えて、恐らくそのカーテンを開くと浴槽があるんだろう。
「アナタ獣くさいわね」
冥々が言う。そりゃ化け狐なんだから。
「あたしが背中を流してやってもいいのよ!」
「ああそう。じゃあよろしく」
「ふん、感謝なさい!」
冥々はリンノの背中を洗い流す。
そして浴槽に行く。浴槽はとても広かった。
「少し、話をしてもよろしいでしょうか?」
「?」
ファリダットが話しかける。
「華鈴様の事なのですが…」




