蝕む竜
読み返すと、何か話の展開早いなと思う時がある。
『毒竜ニズベルグ』
神の世界にいる竜で、何層にも分かれている神の世界の最下層にあるフベルの泉に住んでいる。神の世界の巨大な木の根を食事とし、たくさんの蛇を従えている。蛇に近い形をしている。
巨大な木の上に住む大鷲フレーヴェルと仲が悪く、いつも互いを罵っている。が、大鷲はいつも聞こえないフリをしている。
それが原因で、一つ厄介なことが起こってしまった。
なんと毒竜は、大鷲の所へ行こうと、神の世界を上へ上へと登って行っているのだ。階層を一つずつ登っていき、それぞれの階層にある泉を転々と移動しながら向かおうとしているらしい。
そしてとうとう、毒竜は一つ上の階層にたどり着き、そこにある泉に棲むために、神の一柱を殺したのだった。
††††††††††
「ひま」
「何をいきなり……」
私達は今葉っぱの船に乗り、水の流れに委せて、ゆっくりと川を移動してます。
でも、あまりにもゆっくり過ぎて、これといってスリルみたいなのもなく、虫の鳴き声すらしない静かな森を移動しているだけで、とても暇なんです。
「なんか、こう、面白いものとか落ちて来ないかなぁ」
「ハァ、何も起きないほど良いことはないと思うぞ。特にこういう状況じゃとな」
確かに、何も起きないに越したことはありません。でも、人間、何も起こらないと逆に危険な目に遭いたくなってしまうのです。
「そんな考えをするのは、戦闘狂か、異常者か、平和ボケした奴らだけじゃろうな」
「そんなのと一緒にしないで。私の場合は、そう、臭い物を嗅いだ時、『臭いけど、やっぱりもう一度嗅ぎたい』て思うのと同じ気持ちなんです」
「そっちも大概じゃと思うぞ」
うるさいですね――ん?
「あれ何?」
「どうした?」
ムムルさんを持ち上げ、その方向へ指を指しました。
それは、茶色く、大きく、モフモフした……
「リス?」
「リスじゃな」
私の二~三倍はありそうなくらい大きなリスが背を向けてうずくまっていました。
「プルプル……」
「どしたの?」
「ビクゥ!」
リスに話しかけると、リスの肩が大きく跳ねました。そして突然走り出し、頭から木にぶつかりました。
「だ、大丈夫?」
リスに駆け寄り、頭を撫でます。傷はありませんが、大きなたんこぶが出来ていました。
ムムルさんに頼んでたんこぶを治してもらい、水で浸した布でリスの頭を冷やしました。
「あ、ありがとうございますぅ」
リスの口からそんな言葉が出ました。
「しゃ、喋った。このリス喋った!」
「痛い痛い! わかったから叩くな!」
驚いた私はぺちぺちとムムルさんを叩きました。リスは私に向かって頭を下げました。
「あの、本当にありがとうございます。それとすみません。こんな親切な方達を無視して逃げようとしてしまって……」
すみません、すみませんと何度も頭を下げるリス。あんなに大きいのに腰がとても低いです。
「何か、何か償いをさせて下さい! 僕何でもしますよ!」
一転して鬼気迫るような顔で近づくリス。思わずたじろいでしまいました。
拒否してしまうと後々面倒臭いことになりそうなので、何を頼もうか考えました。
「ん~。それじゃあ……」
森の中を猛烈なスピードで進む一匹の動物がいました。
風よりも速く走り抜け、近くの葉っぱが揺れた時には、その姿は遠く離れています。
その動物は大きなリスでした。
そして上に私がいました。
「速いはやーい!」
「ふむ、これならひょっとすると今日中に着くかもしれんぞ」
「し、しっかり掴まってて下さいねぇ!」
私はリスに、私達を泉まで乗せて行って欲しいと頼みました。リスは二つ返事で了承しました。
森にあったツルを邪魔にならないようにリスの体に巻き付け、移動中に振り落とされないように私は今必死に掴まっています。結構速くて楽しいです。
「もうすぐじゃ! 急げぃ!」
布の中でムムルさんが叫びます。もし布の結び目がほどけたりしたら大変なことになりそうです。
ムムルさんがあと少しと言ったところで、リスは急に止まりました。
「うわっ」
「どうしたリスよ」
「ほ、本当に向こうに行くの?」
リスは震えた声で聞きました。体も震えています。
「そうだよ?」
「やめといた方がいいよ! 向こうは危険だよ!」
リスは必至に私達を説得します。でも私達も行かなければいけない理由があります。
「行くの」
「ダメだ! キミのためにも向こうへは行っちゃいけない! 戻ろう!」
「どうやらそれは無理なようじゃ」
え? とムムルさんに言いかけたところで、どこかから声がしました。
「?」
「これは……」
「ああダメだダメだ――」
さっきよりも体を震わせ始めたリス。両手で顔を覆い、何かを恐れているようでした。
「蛇が来た!」
四方から一斉に現れたのは、多彩な色と形の蛇でした。全長は短くても四メートルほど。今にも襲いかかってきそうです。
「どうしよう……?」
「リスよ。お主の足なら余裕で逃げられるじゃろう。しかしな、あやつに目をつけられた時点でもう安心して暮らせる場所はなくなった。つまり何が言いたいかわかるか?」
「え?」
「真っ直ぐ泉に向かって走れぃ!」
ムムルさんの激昂を聞いて、リスは全力で走り出しました。蛇は突然のことで反応が遅れ、気づいた時には私達はもう遠くにいました。
「嫌だ嫌だ死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死ぬぅぅぅぅぅ!」
「飛べぇぇぇぇ!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
空高くジャンプし、とうとう森を抜けました。
森を抜けたその先に、泉がありました。
††††††††††
その泉はとても広く、光が反射して輝いていました。水はとても透明なのに、底は見えず、真っ暗でした。
「やっと、着いたね」
「ああ、ここが目的地、『ムムルの泉』じゃ」
「私、帰れるんだよね?」
「ああ、保障する」
それを聞いて、私は体の力が抜け、地面に膝をつけました。
「じゃが、その前に行って欲しい場所がある。なぁに、泉に沿って進めばすぐに着く」
「うん。あと、ありがとう、リス」
「いや、いいんだよ。これで恩返しできたしね」
「うん、それじゃあもう少し頑張って」
「まだ進むの!?」
リスの頭をパンパンと叩いて進むように指示します。リスは言われた通りに走り始めました。
「二人とも、この先に何かあるんですか?」
「の先には、しワシの体があるんじゃ。そこでマリアにワシの頭と体をひっつけてもらう。そうすればワシは元の力を取り戻せる」
「元気百倍になるの」
『ソウハサセンゾ』
何か聞こえたかと思うと、後ろが突然爆発しました。
「なに!?」
「ついに来おった!」
「ひいぃぃぃ!」
爆発した地面の中からうねうねと何かが這い出て来ました。煙から、とても大きく、長い影が見えました。
『むむるハ決シテ元ニ戻ラセン!』
煙から現れたのは、黒く、大きく、そして長い体をした、
竜でした。
次回、『ムムルさん元気百倍』




