反撃
第二話です。
今週もよろしくお願いいたします!
1
自衛隊情報保全隊中央情報保全隊の面々は事件現場となっている、東京駅周辺と向かった。
「ちょっと、あんたら、何!」
「関係者以外は通っちゃだめだよ!」
警邏の警察官が止める中で、規制線の中に入ろうとする。
「防衛省の者です、担当の指揮官はいらっしゃいますか?」
「防衛省・・・・・自衛隊?」
警邏の警察官は驚きで目を丸くする。
すると、奥から、眼鏡面の神経質な顔付きをした男がやって来る。
「警視庁警備一課長の藤本です、自衛隊情報保全隊中央情報保全隊の皆さんですね?」
そう言った、藤本は「中に通せ」とだけ言った。
「お邪魔します」
そう言って、中央情報保全隊の面々は東京駅周辺に入る。
「状況は分かりますか? 藤本課長」
「全く、分からないな・・・・・・中の様子が分からない」
そう言う最中でSATの面々がチェーンソーを片手に閉ざされた扉の切断を図ろうとしていた。
「時間がかかりますね」
「犯行グループからの声明は政府との交渉以外は受け付けないの一点張りで、要求も二時間以上が経過しても不明、目的、連中の正体も不明・・・・・・しかも、政府が人気取りのために直接、交渉すると言い出したよ・・・・・・正直言って、警察側は困った限りだよ」
冗談だろう・・・・・・政府が直接、介入だと?
目立ちたがり屋の政治家のせいで、現場が余計に混乱する・・・・・・
そう広池が頭を抱える中で、部下の有本が「広池隊長」と声をかける。
「何です・・・・・・」
「新帝日テレビが現場でのライブ中継を始めているそうです」
その瞬間に現場が凍り付いた。
「何で、そんなことが出来る!」
「どうやら、スマートレンズを使っているそうですね・・・・・・」
「すぐに止めさせろ! 犯行グループを刺激させるな!」
これだから、マスコミは嫌いなんだ!
国益を考えずに視聴率を優先させるから!
広池はすぐに情報保全隊上層部の上司に連絡を取った。
藤本も電話を取る。
恐ろしい程に怒りが込み上げていた。
時刻は午後二十時一分。
東京駅占拠から三時間が経過しようとしていた。
2
二色瑞穂は殺害した犯行グループから、スマートフォンを奪うと、吉希に見てもらっていた。
「位置情報が分かるようになっているね・・・・・・おかげで、連中の首領核の位置情報も分かったけど」
「どこ?」
「駅長室だね」
吉希は手慣れた様子でスマホをいじる。
彼は日本の大手通信会社でホワイトハッカーを生業としているのだ。
自衛隊のサイバー部隊への研修を見学した時に知り合って、食事に行ったら、意気投合して、今は交際するまでに至ったが・・・・・・こういう非常時に頼りになる彼に惚れたという側面もある。
「とりあえず、武器を集めるか」
「あら? こういう事態ではダイハードみたく、銃を使って、ドンパチしたら、位置情報がバレて、集団で返り討ちでハチの巣になるとか言っていなかったけ?」
「外への連絡が出来るならば、応援も期待できる。籠城する為の火器は・・・・・・あぁ、そうかぁ」
「そういうこと」
その会話の内容を聞いていた乗客の一人が「どういうことですか?」と聞いてくる。
「ロケットランチャーとかを出されたら、車両ごと木っ端みじんですよ」
「ロケットランチャーって・・・・・・そんな、大げさな!」
「いや、東京駅を占拠できるぐらいだから、そのぐらいの装備はあるかもしれませんよ」
瑞穂がそう言うと、車内に沈黙が走った。
「お医者さんは?」
「慰安所にいた、女の子たちを見ている、相当、ひどい暴行を受けていたいらしい」
それを聞いた、吉希は「嫌だ、嫌だ、野蛮だなぁ、テロリストは」とだけ言う。
「あんたたち、そんな冗談めかしている場合かよ!」
「テロリストが攻めてくるんだろう! だったら、銃を持ってーー」
「銃で居場所が分かりますよ、それに銃の扱い方が分かりますか? 何だったら、一から教えますけど?」
それを聞いた、乗客の男は絶句する。
「あんたたち、何者なんだ」
「パソコンオタクと軍人さん」
「・・・・・・自衛隊ってことか」
「まぁ、そういうことですね・・・・・・吉希君、東京駅の図面とか分かる?」
「どうするつもり?」
「外の状況が見たい、ただ、いきなり、外に出るとハチの巣だから、排気口とかが分かれば」
「うわぁ、もう、まるっきり、メタルギアソリッドじゃん」
「これはゲームじゃなくて、戦争よ、吉希君」
それを聞いた、乗客の男は「戦争だと・・・・・・冗談じゃない! 何で、こんなことに巻き込まれないといけないんだ!」と錯乱を起こす。
「落ち着いて」
「黙れ! 大体、戦争なんてなぁ! 野蛮人のーー」
すると、後ろから医者の男が男の首筋に何かを打つ。
注射だ。
「こういう非常時にパニックを起こす奴が嫌いでね」
「・・・・・・ありがとうございます」
医者は面倒くさそうに頭をかく。
「俺、日村ね」
「ありがとうございます・・・・・・日村先生」
「行くの? 外に?」
「えぇ、通信とかは奪われたスマホとパソコンを取り戻したので、外への連絡は出来ますが」
「何か、嬢ちゃん、簡単すぎないかい」
言われてみれば、そうだ。
先ほどの制圧時は大人数だったのに、さっきいたのは二人だけだ。
大体、敵の人員と言っても、大部隊をピンポイントで搾っているのか?
まるで、誰かが反撃するのを待っていたかのようだ。
「うわぁ、高価な銃だな・・・・・・ハワイで撃って以来だ」
「あら? 銃の扱い方を知っている?」
「ハワイに行った時には必ず、現地のガンショップを訪ねては撃つんだよ」
そう言って、医者はグロック17のセーフティーを外す。
「一応、銃を使うのは最終手段です」
「そこのパソコン坊やは銃、使えるのか?」
吉希は苦笑いをしながら「あいにく、僕はオタクなので」とだけ言った。
「嬢ちゃんが留守だというのに心もとないなぁ、少し、外に出るのは応援の目途が経ってからだろうな」
「でしょうね、先走っても死ぬだけですから」
すると、吉希が「おっと、これはマズいぞ」と言い出す。
「何?」
「テレビ局が拘束されたADを使って、犯行現場のライブ中継をしているよ」
「はぁ?」
瑞穂が吉希のパソコンを見ると、動画サイトでは新帝日テレビのニュースチャンネルのアカウントで犯行現場で拘束をされた、人質の目線で、ライブ中継がされていた。
「報道協定とかないの・・・・・・」
「昨今のテレビ局がそんなの守ると思うかい?」
これは面倒くさいことになったぞ。
犯行グループは気付かないのか。
「昔のテレビ局はまだ、節操があったんだけどなぁ、警察とも報道協定を結ぶぐらいだし、今じゃあ、無法地帯じゃないか」
日村がそう言うが、厳密に言うと、報道協定は警察とテレビ局上層部が結ぼうと思えば、今現在の世の中でも結べるのだが、これは一部の現場レベルで暴走が起こったのだろう。
新聞やテレビなどのオールドメディアと呼ばれる媒体の上層部は裏で政府と繋がっていることは明白だが、現場レベルの記者やディレクターにプロデュサーは反権力を格好良いと思っている節があって、時折、オフレコでの会話すらも公開してしまうという事態があるぐらいで、今の世の中では体制側と反体制側との間での報道協定は蔑ろにされる傾向があるのは瑞穂にも分かり得た話しだと思えた。
「嬢ちゃん、出るのはまだ、先だ・・・・・・まず、応援を呼ぼう」
医者にそう言われた、瑞穂はとりあえず、席に座ることにした。
時刻は午後二十時十二分。
東京駅占拠から、三時間十分が経過しようとしていた。
3
「よし・・・・・・これは視聴率稼げるぞ!」
清水は冷めた感覚を覚えていた。
プロデューサーの早田は狂喜乱舞を絵にかいたようなはしゃぎ様だったからだ。
「動画の視聴数も伸びています、テレビの方も視聴率が凄いことになっています」
「よし、よし・・・・・・良いぞ、良いぞ」
良いわけないだろう・・・・・・
これがテロリストに見つかったら、殺されるぞ。
清水は早田の狂乱とは裏腹に冷めた感情を覚えざるを得なかった。
(随分と高価な眼鏡だな?)
テロリストの内の一人がそう声をかけると、クルー全員が凍り付く。
「バレた!」
「ヤバ! 逃げろ!」
逃げれるわけないだろう・・・・・・
テレビ局という組織はこういう非常識な奴が多いから、嫌なんだ。
(これは何か、動画に繋がっているのか?)
男が笑みを浮かべながら、そういう。
ADのすすり泣く声が聞こえる。
(おい、泣いていちゃあ、分からないだろう・・・・・・どうなんだ?)
(繋がっています)
「おい! 何をバラしているんだよ!」
黙れよ・・・・・・早田。
少しはあいつの心配をしろよ。
(お前・・・・・・そんなに目立ちたいか?)
(違います、僕は命令されて・・・・・・)
(お前、何だ? 記者か?)
(テレビ局のADです・・・・・・上司に命令されて、だから、助けてください!)
(はははははは!)
男は笑い出す。
すると、次の瞬間、ADの脳天を撃ち抜く。
「ひっ!」
早田の悲鳴が聞こえる。
最悪の事態だ。
公共の電波でテロリストによる、人質の殺害シーンが流されたのだ。
(おい、どこのテレビ局かは知らないが、今度、舐めた真似をするならば、美人の記者か女子アナを用意して来いよ、そうすれば、こんな一発で、仕留めるんじゃなくて、男ども、二十人以上で妊娠するまで、セックスし続けるからよぉ)
そう言って、男は下品な笑いを浮かべる。
「・・・・・・何なの! これは!」
早田はそう怒りを露わにするが、次の瞬間にはスマートグラスが砕け、映像が途切れた。
そして、件の女子アナが絶句した表情を浮かべて、数秒沈黙した後に冷静さを取り戻して、テレビ局史上でも最悪の部類に入るであろう、放送事故の失点を少しでも和らげようとしていた。
「おい! 早田ぁ!」
専務がやって来る。
「専務! 何で、こんなところに!」
「お前、とんでもないものを流してんじゃねぇよ!」
「いや、でも、視聴率がーー」
確かに視聴率は凄いだろうが、民放で唯一、殺害シーンを流してしまったんだ。
これは人事にも影響するだろうな。
俺は目立たない様にしておこう。
清水は顔を伏せるしかなかった。
時刻は午後八時十六分。
東京駅占拠の悪夢は終わらない。
4
中継を見ていた広池たちは頭を抱えていた。
放送事故と言うレベルでは済まない、テレビ局の不祥事だ。
政府は今頃、カンカンだろうな。
まぁ、それは良いとして。
「犯人の要求が分からないならば何も出来ませんね」
「突入の準備は進めていますよ」
藤本がそう言う中で、SATの隊員たちがチェンソーで閉まったシャッターを開こうとしている。
その時だった。
スマートフォンに着信が入る。
二色からだった。
嘘だろう・・・・・・
「はい、広池です」
(二色です、連絡が遅くなって申し訳ありません)
「まさか・・・・・・駅の中にいるんじゃないんでしょうね」
(北陸新幹線の車両内で武装グループと交戦して、二名を殺害、現在、相手の武器を奪って、車両内で籠城の準備を進めていますが・・・・・・)
そこまで、事態が進んでいるか。
しかし、二色に制圧されるぐらいだから、かなり、緩い戦力だな・・・・・・
「ジャミングはされていないそうですね・・・・・・通常ならば、制圧作戦時は通話やインターネットの使用が不可能な状況にさせるのはベターなのですがね」
(相手はプロの組織ではないと?)
「いや、それでは、東京駅の占拠は不可能です」
そう言った、二色は(外の状況を教えてもらえますか?)とだけ言った。
「現在、我々、中央情報保全隊は警視庁警備部と連携をして、突入作戦を立案しています。現在、第一情報保全室が犯人グループの身元を調査していますが・・・・・・要求は依然として、行われず、目的も素性も不明。分かっているのはテレビ局のADを射殺した時の映像を見る限りーー」
(高価な武器を使っている・・・・・・犯人の動きからすると、素人ではないかと思いますが、洗練された感覚も覚えないですね)
広池はその文言が気になった。
「それは何故ですか?」
(車両内で女たちを集めて、慰安所を作っていたんですよ、指揮官が統制を取っていれば、防げた、暴挙です)
「戦争ではあり得ることですが、戦争犯罪を起こさずに部隊を統率するのは指揮官の腕にかかっていますからね、犯人グループが果たして、どのぐらいのレベルにあるのかが、分かりませんね」
かといって、素人でもなく、統率をされたプロにしては詰めの甘さが目立つ。
何なんだ・・・・・・この部隊は?
広池は頭を抱えていた。
(相手が追撃をして来ません)
「戦えるのはあなただけですか?」
(銃を扱える、民間人の医者がいますけど、ロケットランチャーを使ったら、一発じゃないですか?)
そう言う、二色に対して、広池は「この詰めの甘さならば、あったとしても扱えないでしょうね。あまりにも戦力や装備がアンバランス過ぎる」とだけ言った。
(そうか・・・・・・隊長、偵察任務に出てもよろしいでしょうか?)
二色が唐突にそう言うが、広池は少し、試案をした。
「・・・・・・犯行グループに見つからない自信はありますか?」
(周到な準備をすれば)
その一言を聞いた、広池の判断は早かった。
「了解しました、偵察任務への許可を行います」
そう言われた、二色は(準備に移ります、通話は後ほど)と言って、電話を切った。
相手は何を考えているんだ・・・・・・
自分も若干、混乱を覚え始めていた。
二色一尉を安易に偵察に出させて、良かったのだろうか・・・・・・
一瞬、そうは思ったが、もう、言った手前は引き返せない。
上手くやってくれることを願うしかないか。
東京駅のある、丸の内は警察と消防の緊急車両で埋め尽くされ、辺りは赤い赤色灯の光で覆い尽くされていた。
そして、奥では各報道機関のカメラも多数ある。
日本中が注目をしている事件だな・・・・・・
広池は段々と頭が痛くなっていく感覚を覚えていた。
時刻は午後二十時三十分。
東京駅占拠から、三時間半が経過しようとしていた。
5
瑞穂は偵察任務の許諾を広池から取ったので、早速、準備を進めた。
武器はあまり、大きな物は持っていけないな。
グロック17とサバイバルナイフで十分か。
「嬢ちゃん、行くのかい?」
日村がそう言うが、瑞穂は「まぁ、上司と相談した結果、相手がここに攻め入らないと判断してのことです」とだけ言った。
「ふーん」
「吉希君、図面見つかった?」
吉希にそう言うと、スマートフォンに東京駅の図面が転送される。
「とりあえず、保存すれば、ジャミングが出たとしても、使えると思うよ・・・・・・ただ、汚れるけど、大丈夫? 絶対に排気口とかネズミがいるでしょう」
「まぁ、そんなに高価な服は着ていないから、会社帰りでスーツだけどさ」
そうは言ったけど、そんなに上等なスーツではないが、汚れるのは忍びないな。
クリーニングには出さずにこのスーツは帰ったら、廃棄だな。
出費がかさむな・・・・・・
「とりあえず、偵察が主な任務だから、交戦はしないでね」
「可能な限りね」
そう言って、瑞穂は車内を出る事にした。
「行って来る」
「気を付けて」
車内から出ると、東京駅の新幹線ホームは静寂に包まれていた。
おかしい・・・・・・
武装グループが一人もいない。
罠だろうな・・・・・・
大体、何が目的なんだ、あいつらは・・・・・・
瑞穂は不安に駆られながらも、北陸新幹線二〇・二一番ホームを駆け出していた。
時刻は午後二十時四十分。
東京駅占拠から、三時間四十分を超えようとしていた。
6
対策本部が置かれた、東京八重洲ホテルの一室では、東京駅を見下ろすことが出来る。
平時だったら、最高の光景なんだがな・・・・・・
「二色室長が移動を開始しました」
「現在、上越・北陸新幹線二十・二十一番ホームから一階、二十・二十一番線出口へ移動!」
航空自衛隊出身の技官がそうアナウンスするが、ここまで静かな物だな。
大体、二色も堂々と正面から向かうのか・・・・・・
詰めが甘いな。
「広池隊長」
二色の部下である、第一情報保全室の水島二尉が声をかける。
「地上班が内偵を進めていた、第○○期のマルBの大量退官の件ですがーー」
「どうです?」
「数日前に当該隊員が羽田にやって来たとのことです、二日前には丸の内の防犯カメラに映っていたそうです」
となると、その部隊が今回の事件の首謀者か。
にしても、素人臭いな・・・・・・
プロと素人の混成部隊であることは間違いはないが、仮にそのマルBたちが今回の事件の首謀者だとして、その理由は何だ?
「何で、同じ時期のマルBが大量に退官したか・・・・・・」
「まさか、その同期生たちがクーデターをーー」
「あまり、考えたくはないですがね・・・・・・ただ、可能性としては考えた方が良いでしょう、引き続き、調査を」
そう言った後で水島は下がった。
すると、データ上で動いていた、二色の移動が止まった。
そして、小回りに動いている。
「何があったんです?」
「分かりません、突然、移動を止めました」
まさか、交戦でもしているのか?
だとしても、プロ相手に軍人とは言え、諜報機関の人間である、二色が一人で勝てるのか?
広池は歯がゆい思いを感じていた。
時刻は午後二十時五五分。
東京駅占拠から三時間五十分を超えた。
7
瑞穂は一階の上越・北陸新幹線ホームの二十・二十一番線からJRの在来線のホームへ向かおうとした中で、吉希から送られた、ハッキングした監視カメラの画像をスマホで見ると、敵の兵士が多くいる事を発見して、日本橋口のトイレへ駆け込んだ。
何で、新幹線のホームは手薄なのに在来線はガードが堅いんだろうか・・・・・・
ちなみに先ほど、ネットを見た結果、在来線のダイヤは運休をしていて、大幅に乱れており、新幹線も同様。
事実上、首都圏の鉄道網はストップして、大打撃を受けているそうだが・・・・・・
ようするに新幹線のホームから正面突破すると、ハチの巣になるのは目に見えているか・・・・・・
急いで、新幹線改札の方の外れにあるトイレへ向かうと、瑞穂は女子トイレへ駆け込む。
尿意や便意があるわけではない。
問題はここだ。
上に通気口があるのだ。
えぇと・・・・・・制圧した武装グループが持っていた、奴を拝借したけど・・・・・・
プラスとマイナスのドライバーを片手に通気口を開ける。
瑞穂は上背が無いので、トイレに入り込み、チャイルドシートを台座代わりにするが、それは極めて、不安定な物だった。
そして、開くと同時に中に入るが、埃が酷い。
そして、当たり前だが、狭い。
匍匐前進をして、進むが後ろには下がれるだろうか・・・・・・
服は汚れるなぁ・・・・・・
何度も言うけど、一張羅では無いけど、結構な値段したんだけどな、これ。
そう思った、瑞穂は中に入り、匍匐前進で進み始めた。
埃が酷い・・・・・・
私が鼻炎持ちだったら、死んでいるな。
そして、閉所恐怖症だったら、もう、ダメだ・・・・・・
一応は軍人の端くれなので、若い頃に訓練は受けているが、とにかく、過酷な移動だった。
図面は頭に叩き込んでいるけど、このまま、外に繋がると良いんだけどな・・・・・・
そう思いつつ、瑞穂は匍匐前進で移動を続ける。
途中、ネズミに出くわした。
凍り付くがネズミは自分の身体を張って、そのまま後ろへ遠ざかった。
最悪なんだけど・・・・・・
武装グループなんか全員、ぶっ殺してやる・・・・・・
瑞穂は泣きそうになりながら、再度、匍匐前進を続けた。
時刻は午後二十一時一分。
東京駅占拠から、四時間が経過しようとしていた。
8
マリアン・フロストは東京駅ステーションホテルの一室から他の宿泊客と同様にロビーに圧埋められて、軟禁をされていた。
上官との連絡は取れずか。
試験機を私闘で扱うのはご法度だけど、場合によっては使うかもしれないな・・・・・・
マリアンは商売道具のスマホとスマートウォッチを取り上げられた後にどうにか、反転攻勢の機会を考えていた。
「おい、女!」
マリアンは声をかけられる。
「移動しろ、部屋に行け!」
どうやら、慰安所でもあるようだな?
そう言われて、付いていった、部屋では案の定、女たちが武装グループの男たちと性行為をしていた。
「脱げ」
「手錠があるから、脱げないよ」
「それもそうだな・・・・・・」
そう言われて、男は手錠の拘束を解いた。
バカな奴。
次の瞬間には男の首の骨を降り、グロック17を奪う。
「なっ! お前!」
そして、男たち、五人を瞬時に射殺する。
女たちはあっけに取られていた。
戦場でセックスなどにうつつを抜かすから、こうなる。
そう思った、マリアンは部屋を出た後で、ロビーにいる男たちを拳銃で射殺する。
男たちは急いで、アサルトライフルで応戦するが、光の拳銃の腕の方が勝っていた。
このフロアの連中は倒したか・・・・・・
そして、男たちが持っていた、スマホ袋から商売道具を取り出す。
まだ、使うのは早いだろうか・・・・・・
すると、上の回から、男たちがやって来る。
仕方ない・・・・・・なぶり殺しだ。
「あっ、あの・・・・・・」
「ちょっと、待っていろ、皆殺しにしてから、助ける」
そう言って、男たちがやって来る。
試験機を勝手に使ったとなると、大目玉だ。
「装着」
白色の閃光が光を包むと、白色ののっぺりとしたなフォルムのパワードスーツが現れた。
マリアンが着る、軍用パワードスーツソルブスの初期型試験機である、イブだ。
敵が動揺する中で、マリアンはM7アサルトライフルを取り出すと、相手に銃口を向けて、撃ち放つ。
銃撃戦が始まった。
敵は多勢に無勢だが、マリアンの銃撃の腕は正確だった。
次々と一人ずつ、射殺されていく。
ホテル内が地獄絵図になっていく中で、武装グループ側の男が最期の一人になると、マリアンは間髪入れずに男に近づき、ナイフで首を掻っ切る。
頸動脈から血が噴き出した。
鮮血でロビーが汚れる。
「次は・・・・・・誰だ」
東京駅ステーションホテルは最新鋭軍用兵器の実験場と化していた。
時刻は午後二十一時一分。
東京駅占拠から四時間が経過しようとしていた。
9
「ホテルの方で反乱が起きた?」
村木敦は一瞬、耳を疑ったが、すぐに無理もないと感じた。
ジャミングを行わないばかりか、素人も混ぜた混合部隊なのだ。
こんなレベルで東京駅を占拠できること事態が奇跡なのだ。
「新兵器を使っているらしい、素人どもはそれで皆殺しさ」
同期の大矢久がそう言う。
それを聞いていた、村木は親指を噛む癖が始まっていることを知覚していた。
自分が苛立っていると、この癖が始まるのだ。
彼女にも何度もそれを指摘されていた。
「なぁ、村木」
同僚の有街が声をかける。
「降りたいのか?」
「隊長も彼女の為だとか言って、あんな奴らと手を組むことを決めたが、何か、おかしいよな?」
そうは言われても、それ以外に道が無いのだ。
彼女の存在を忘れさせないためにも。
彼女に行った愚行を世に知らしめるためにも俺はあいつらを許さない。
「背に腹は代えられないだろう」
「だけど、その結果、俺たちが踊らされていたら、どうする?」
村木は有街と大矢をじっと見つめる。
「お前と同意見の奴、隊長に疑念を抱いている奴はどのぐらい、いる」
「若手の部隊出身の人間は大体が疑念に思っているよ、俺たちを噛ませ犬にして、隊長は金ととんずらを働くつもりじゃないかとかさ」
村木は一瞬だけ、考え込んだ。
しかし、決断は早かった。
「隊長には知られれるな、俺たちは独自で動く」
そう言われた、有街と大矢の口元が締まるのを目視した。
「分かった」
「裏切りが起こることも想定しろ、俺もお前をいつでも、切る覚悟を決めた、お前も俺が裏切ったら、殺せる覚悟を決めろ」
「・・・・・・お前は大丈夫だよ」
「そういう判断が命取りだぞ、自分以外には味方がいないと思え」
そう言われた、有街は村木の肩を掴む。
「俺はお前を裏切らない、そして、裏切り者やあいつら・・・・・・ピースメーカーの連中はこの手で粛正する、そうしないと、死んでも死に切れねぇよ」
有街の手に力が入る。
「だから、容赦はするな。俺も敵には容赦しない」
そう言われた、有本は村木の肩から手を放す。
「人員を集める、俺たち独自で、真の東京駅占拠を始めよう」
そう言った、有本に対して、俺は敬礼を返した。
「頼むぞ、俺たちはまだ、死ねない」
「お前もだぞ、生きろよ」
そう言って、両者は持ち場へと戻って行った。
「友情だな」
「笑い事じゃねぇぞ、大矢、お前にも役立ってもらう」
隊長が金で俺たちを裏切ったか・・・・・・
それならば、許さない。
国、政府、自衛隊、警察、アメリカ、向かって来る敵、そして、何よりも彼女を玩具のように弄んで、殺した、ピースメーカーたちをこの手で粛正するまでは俺たちは死ぬことは許されないんだ。
そうしないと、あまりにも理不尽で自分で自分を許せないのだから。
村木はM4アサルトライフルを手に持ち場へと戻った。
時刻は午後二一時三三分。
東京駅占拠から四時間半が経過しようとしていた。
続く。
次回、第三話 分裂
次回もよろしくお願いいたします!




