第一回戦
「あれは一体、どんな能力なんだ?」栗色の髪の少年――ライデンが興味津々に尋ねた。
「能力なんかじゃないさ」赤髪の少年――カサイが答える。
二人は他の出場者たちと共に巨大な控え室に留まり、小さなモニターを通して試合の行方を見守っていた。
「じゃあ、何なんだよ?」
「魔法だ」
「な、魔法!? そんなのありかよ? ってことは……あいつ、魔法使いなのか?」
「違う、魔術師だ」赤髪の少年が訂正した。
「同じようなもんじゃないのか?」
「いや、違う。魔法使いは娯楽のために魔法を使うが、魔術師は純粋に戦闘のためだけにそれを行使するんだ」
「だけど、なんでそんな奴らがここにいるんだ? 本来ならこの場所に関わるべきじゃないだろ」
「魔術師は人間側の資源を奪おうとしてるのさ」
「資源って、具体的に何のことだ?」
「どういうわけか、人間の居住区には『魔石』が存在する。当然、俺たち人間には使えないがな」
「え? なんで使えないんだ?」
「俺たちには『魔力』がないからだ。魔法使い、エルフ、魔術師、妖精……あいつらは皆、体内にその神秘の力を宿している。対して俺たち人間に発現するのは『能力』だ。……まあ、俺の知らない力が他にもまだたくさん存在するんだろうけどな」
突如、控え室の扉が開いた。勝利を収めたホシノ・タカミツが、静かに中へと入ってきた。
(能力の他にも、そんな力があるなんて……)
ライデンは外の観客席から湧き上がる大歓声を背景に、得た情報を頭の中で整理していた。
「よし、それでは次の試合を始めるぞ!」先ほどの圧倒的な見せ場に未だ興奮冷めやらぬ審判がアナウンスした。「第二試合、スズキ・ケンジ対チョウ・シヤ!」
二人の出場者が前方へと歩みを進め、舞台に上がった。
スズキ・ケンジは灰色の髪をしており、長袖のシャツにサスペンダーで留めた礼服のズボンを穿き、悠然と何かを噛み締めていた。もう一方の少年、シヤは王族を思わせる服装をしていたが、やや簡素なものだった。黒いブーツに、脚の細さを完全に隠すほどのダボついた青いズボン、白いシャツ、 shadow そして背主にマントのように羽織った、少し濃い青色のジャケット。
二人は視線を交わし、礼儀正しく一礼した。
「始め!」審判が素早く手を振り下ろした。
即座に、何かを噛んでいた少年――ケンジが両頬を膨らませた。それを見たシヤは、相手の能力が未知数であることを警戒し、ゆっくりと後退し始めた。(距離を取らなければ……)と彼は考えた。
――フッ!
ケンジの口から吐き出された物体が、凄まじい速度で対戦相手へと弾け飛んだ。
「喰らえ、これが俺のゴム弾だ!」自信満方に叫ぶ。
シヤは身をかすめるようにしてその球体を辛うじてかわした。(一体何なんだ!?)と疑問を抱く間もなく、背後から強烈な衝撃が全力を伴って彼の背中に直撃し、激しい痛みが走った。放たれた球体は、彼のすぐ後ろの地面で跳ね返っていたのだ。
シヤは衝撃に身を震わせながら、荒々しく背中を押さえて膝をついた。
「降参した方が身のためだぞ」ケンジが警告する。
「そう……思うか?」シヤは痛みに喘ぎながら言った。
彼は震える手をゆっくりと持ち上げ、二本の指を突き出した。その瞬間、ゴムの球体が超自然的な力で地面から浮かび上がった。
「これが俺の能力……物体を操る力だ」
球体は瞬時に軌道を変え、本来の持ち主へと逆流し、ケンジを執拗に殴りつけた。何度も衝撃を受けながらも、ケンジは足を止めず、焦るようにさらに何かを噛み続けていた。シヤは即座に察知した。(まずい……あれは……!)
操られた球体は大きく後方へと引き伸ばされ、観客席の間近に達するほどの膨大な距離を取った。次の瞬間、シヤが凄まじい勢いで手を振り下ろすと、彼の周囲に小さな突風が巻き起こった。球体はまさに推進力を持った砲弾の如く突っ込んできた。
――バキッ!
容赦のない重い一撃が、ケンジの腹部にクリーンヒットした。少年は激しく地面へと吹き飛ばされ、その凄まじい衝撃により、完全に意識を失う寸前、口から新たな球体が空へと向かって吐き出された。
「勝者、チョウ・シヤ!」審判が宣言した。
大会を見守る群衆の中に、短く刈り込んだ黒髪に薄い髭を蓄えた一人の男がいた。その服装は、薄茶色のズボン、濃い茶色のブーツ、金属製のニーパッド、濃い茶色のシャツ、そして薄茶色のマントを羽織った、警備隊の公式制服だった。背中には大剣を背負い、黒っぽい手袋を嵌めている。
「年々、退屈さが増していくな」男はやる気なさそうに呟いた。
「そうでしょうか、隊長?」彼の隣に立つ、同様の装備を身に纏い、厳格なミリタリーカットの髪型をしたもう一人の人物が尋ねた。
「あぁ。強い人材をスカウトする時はいつもヴァルドリス王国に来るんだが、ここしばらく骨のある奴に会った試しがない。まあいい、この大会の結末を最後まで見届けるとしよう」
彼らが話している間、医療班の集団が失神した少年を担架で運び去っていった。
「さあ、次はコバヤシ・リョウ対サイトウ・トモヤの番だ!」
二人の少年は舞台に上がり、一礼を交わした。
コバヤシは極めて裕福な家柄の出身だった。その衣服は高級な生地で仕立てられており、彼の高い社会的地位を物語っていた。金色のボタンと装飾があしらわれた紫色のベスト、その下に白いシャツ、さらに濃い紫色のズボンと手袋を着用し、少し長めの黒髪をなびかせていた。
一方、サイトウ・トモヤは貧しい少年だった。首回りに飾り縫いのある茶色のシャツに、履き古された茶色のハーフパンツ、 shadow そして古いブーツ。髪は極端に短く、ほとんど坊主頭で、ズボンの裾は使い込まれて激しく傷んでいた。
コバヤシはもう片方の手で手袋を直しながら左手を掲げた。対するサイトウは、右足を力強く前方へ踏み出すと、驚くべきことに、その身体が徐々に巨大化し始めた。
突如、コバヤシはサイトウ目がけて猛スピードで突進し、明確に相手に触れようと手を伸ばした。しかし、サイトウは素早く足を跳ね上げ、戦闘フィールドの砂を激しく巻き上げることでその前進を阻んだ。富豪の少年は急ブレーキをかけざるを得なかった。
「お前の能力は分かっているんだ、コバヤシ。触れさせはしないぞ」サイトウが警告した。
「おや、ならば少々不利なようですね」
「少々だと? とんでもない!」サイトウは舞台に凄まじい踏み込みを炸裂させ、巨大な石畳を粉砕し、濃い土煙を巻き上げた。
控え室から、ライデンはその戦いを注視していた。サイトウの、肉体の純粋な力に頼る戦闘スタイルが、自分自身のものと酷く酷似していることに気づいていた。
押し寄せる土煙と破片から身を守るため、コバヤシは両腕を交差させて顔を覆った。
「隙ありだ!」濃い霧の向こうからサイトウの叫び声が響いた。
――ドカッ!
痛烈な蹴りがコバヤシの身体にクリーンヒットし、彼を舞台の外へと真っ直ぐ吹き飛ばした。
――ズドン!
コバヤシの身体が場外の地面に激突した。舞台の上では、サイトウがその膨大なエネルギー消費によって激しく息を切らせていた。審判が近づき、彼の片手を掴んで高く掲げた。
「この試合の勝者、サイトウ・トモヤ!」レフェリーが叫んだ。「控え室へ戻りなさい」そう言うと、観客席を見上げて申し訳なさそうに付け加えた。「申し訳ありませんが、舞台の損壊を修復するため、少々お待ちいただきます!」
観客席で、警備隊の隊長がため息をついた。
「ほら見ろ、言った通りだろう。実につまらん。もう帰りたくなってきたぞ」
「ですが隊長、大会はまだ始まったばかりですよ」
「待つ価値があると思うか? これまでで強そうだと思ったのはあの魔術師のガキだけだが、法によって魔術師が警備隊になることは許されていない」
「ええ、存じております、閣下。ですが、この島で『最強』と噂される少年が、この大会に出場しているという話を耳にしました」
「最強だと? 名は何という?」
「カサイ・ヒノカミです」
「ヒノカミ……? ふむ。ならば待つ価値もあるかもしれんな。そいつの能力はさぞ凄まじいのだろう。もう少し辛抱してみるか」
一方その頃、控え室ではライデンとカサイが言葉を交わしていた。
「なぁ、ライデン。お前のじいちゃんは元気か?」
「相変わらずの偏屈じじいさ」
「ははは、目に浮かぶよ」
突如、フードを被った謎の人物が二人の少年の前に毅然と立ちはだかった。
「おい、お前」新参者は低い声で言った。
「ん? 俺か?」赤髪の少年が不審そうに聞き返す。
「名前は何という?」
「俺の名前? なんでそんなことを知りたいんだ?」
「ただ、ある事を確認したいだけだ」
「俺はカサイ・ヒノカミだ」
それを聞くと、フードの男は衣服の間に手を入れ、固く閉ざされた巻物を取り出した。
「やはり、私の見立てに間違いはなかったか……お前がヒノカミ殿の息子だな」
「それは何だ?」カサイは片眉を上げて尋ねた。
「これは『魔導王』からの親書だ」
「魔導王……?」
「魔術師たちの居住区を統べる絶対的な支配者だ」
「で、俺にこれをどうしろって言うんだ?」
「父親に渡すがいい。 shadow そして、決して中身を読もうなどとは思うなよ」
カサイは全く感情を動かさずに手を伸ばし、巻物を受け取った。「親父の用事なんか、俺には興味ないね」
その瞬間、巻物が突如として自然発火した。わずか数秒で完全に消滅し、空中にはいくつかの火の粉が漂うだけとなった。
「おい! 一体何てことをするんだ!」フードの男は狼狽し、一歩後退しながら叫んだ。
「落ち着けよ。メッセージはどのみち届くさ」
彼の言葉に応じるかのように、漂う火の粉が集まり始め、この上なく美しい『火の鳥』の姿を形作った。その鳥は力強く羽ばたき、瞬く間に部屋の出口へと飛び去っていった。
「……失礼する」フードของ男はそう言い残すと、背を向けて大急ぎでその場から立ち去った。
「ははは、お前はいつも人を脅かすな、カサイ」栗色の髪の少年がからかった。
「おいおい、そりゃひどい言い草だな、ライデン」カサイは皮肉混じりの苦笑いを浮かべ、わざと憤慨してみせた。
「あ、見ろよ!」ライデンが壁の小さなモニターを指差して遮った。「舞台の修復が終わったみたいだぞ」
外では、実況者の声が再び力強く響き渡った。
「大変お待たせいたしました! それでは第四試合を始めましょう! ワタナベ・ユウト、そしてタナカ・マサト、前へ!」
指名された二人は控え室の席から立ち上がり、外へと歩み出て舞台の石段を上った。中央に到達すると、二人は鋭い視線を交わした。
ワタナベ・ユウトは黒髪で、目の周りには深く暗い隈が刻まれていた。その服装はライデンの祖父の修道服を思わせるものだったが、より細部まで作り込まれていた。対するタナカ・マサトは、優雅に流れる長い青髪を持ち、澄んだライトブルーの瞳も相まって、極めてスタイリッシュで中性的な容姿をしていた。彼の衣服は全身、純白で統一されていた。
「始め!」審判が手を振り下ろして命じた。
タナカは即座に両腕を前方へと突き出し、対戦相手を凝視した。しかし、ユウトは絶対的な静寂に身を浸したまま、微塵も動かなかった。突如、タナカの視界からコロシアムの光景が消え去り、完全な闇へと沈んだ。
(え!? 一体何が起きたんだ!?)青髪の少年は驚愕した。(何も見えない……! これが、あいつの能力か……)
――ドクン、ドクン、ドクン。
耳に届くのは、彼自身の激しく脈打つ鼓動の音だけだった。彼は身体を落ち着かせるために深く息を吐き出した。(この手のタイプがどう動くかは、百も承知だ)彼は両腕を前方に固く突き出したまま、自らに言い聞かせた。
――タッ、タッ、タッ。
足音の残響が、何者かが自分の位置に向かって猛スピードで接近していることを告げていた。(そこか……!)
タナカの腕から膨大な水が湧き出し、瞬時に高密度の盾へと圧縮された。
――ザシュッ!
闇が一瞬だけ晴れ、上段からの蹴りを放つワタナベ・ユウトの姿が露わになったが、その一撃は水の障壁によって完全に阻まれていた。
「読み通りだ」青い瞳の少年が微かに笑みを浮かべて言い放った。
「くそっ……!」深い隈のある少年が毒づいた。
ユウトは後退し、相手の側面に回り込んで鋭い突きを放った。
――バシャッ!
だが、再び水の壁が完璧なタイミングで出現し、その衝撃を受け止めた。
(しまっ……時間が足りない!)ユウトは心の中で焦った。次第に戦場を包んでいた暗闇が完全に霧散し、タナカの視界が完全に回復した。
「やはり、お前の技には時間制限があるようだな……」
「目が見えない状態で、どうして俺の居場所が分かったんだ!?」ユウトが悔しげに尋ねた。
「音さ。目が使えないなら、耳を使えばいい」タナカは明らかな優越感を湛えた笑みを浮かべて答えた。「だがな……俺の能力は至ってシンプルで、水の盾端を作り出すことしかできないんだ」
「何?」
「それでも、俺は血の滲むような特訓を重ねてきた」
突如、タナカが力強く前進すると同時に、水の盾が爆発的に巨大化した。その膨大な液体の壁が、ユウトを舞台の端へと容赦なく押し込んでいく。ユウトは全力を振り絞ってその質量を止めようとしたが、圧力があまりにも強すぎた。わずか数秒の後、彼の両足は場外の地面を踏んでいた。
「勝者、タナカ・マサト!」
「ふん、つまらん」警備隊の隊長が席から呟いた。「どんどん質が落ちていくな」
「そうでしょうか、隊長……」二人の出場者はアリーナから退場していった。
「次の試合は、ヤマモト・タケシ対タカハシ・ダイキだ!」
二人の若者が石造りのリングへと足を踏み入れた。
ヤマモト・タケシはオレンジ色の炎の模様があしらわれた赤いブーツを履き、赤いハーフパンツに白いシャツを着用していた。対するタカハシ・ダイキは、モノクロームな風貌をしていた。灰色の髪と瞳に、非常に濃い灰色のシャツ、そしてさらにくすんだ灰色のズボン。
「始め!」審判が叫んだ。
タケシはダイキの周囲を円を描くように走り始めたが、最初は彼の動きは妙に遅く見えた。
「おい、一体何をするつもりだ?」ダイキは相手を見失わないよう、その場で身体を回転させながら尋ねた。
――タッ、タッ、タッ。
しかし、クロノメーターの秒針が進むにつれ、タケシの速度は指数関数的に跳ね上がっていった。
(まずい……!)ペースが危険な領域に達していることに気づいたダイキは、両腕を左右に広げて力強く叫んだ。「『濃霧』!!」
彼の身体から極めて濃密な霧が吹き出し、一瞬にして舞台の表面を覆い尽くした。「これでどこを踏めばいいか分からなくなるぞ」
「そう思うか?」タケシの声が四方八方から木霊した。
突如として、猛烈な風が霧を巻き込み始め、リングの中央に巨大な竜巻を形成した。
「なっ……!?」
「俺は10秒ごとに、さらに加速するんだ!」
猛烈な突風がダイキを容赦なく直撃し、彼の身体を地面から引き剥がして戦闘エリアの外へと激しく吹き飛ばした。
審判は場外への転落を確認し、マイクを通して告げた。「この対決の勝者、ヤマモト・タケシ!」
タケシは地面に踵を鋭く食い込ませて急停止し、それによって竜巻は完全に消滅した。
「なんという凄まじい戦いでしょう!」実況者が興奮気味に付け加えた。「コロシアムの中に本物の嵐が吹き荒れるところでした、ははは! それでは即座に次の試合へ移りましょう!」
控え室で、ライデンは両腕の包帯を締め直しながら、勢いよく立ち上がった。
「ついに……俺の番だ」彼は誇らしげに言った。
「運がいいな、ライデン」赤髪の少年が少し羨ましそうに呟いた。
「へへ、カサイ、目を皿のようにしてよく見ててくれよ」
「あ?」
「俺の修行の、本当の成果を見せてやるからさ」栗色の髪の少年は強い決意を秘めた笑みを浮かべて言い放った。
「期待してるぜ、ライデン」
ライデンは毅然とした足取りで控え室の出口へと歩き出した。ちょうど通路に差し掛かったところで、彼は次の対戦相手とすれ違った。短く刈り込んだ黒髪に、威圧的で強靭な体躯。上下ともに黒っぽい衣服に身を包んだその男――カトウ・ハルキだった。能力を持たない少年を目にすると、ハルキは侮蔑の嘲笑を漏らした。
「おいおい、誰かと思えば……」
ライデンは一切の反応を示さなかった。歩みを緩めることなく、コロシアムの眩い光の中へと真っ直ら進んでいく。
両雄はゆっくりと石造りの階段を上り、舞台へと上がった。
「ナカムラ・ライデン対カトウ・ハルキ!」レフェリーがアナウンスする。
ライデンは相手に対して礼儀正しく上体を曲げて一礼したが、ハルキは直立したまま、その敬意を鼻で笑った。彼にとって、ライデンは自然の出来損ないに過ぎなかった。
「始め!」審判が腕を鋭く振り下ろして叫んだ。
「もうお前を守ってくれるカサイはここにいないぞ」ハルキが悪辣な笑みで挑発する。
「誰も俺を守る必要なんてないさ」ライデンが答えた。
即座に、彼は強固な戦闘の構え(スタンス)を取り、プロの格闘家の如く両腕を高く掲げてガードを固めた。
「口だけは達者になったようだな……本気で俺に勝てると思ってんのか?」
ハルキの身体が不気味に縮み、圧縮され始め、巨大で完璧な『球体』へと変貌を遂げた。
「容赦はしねえぞ!!」
巨大な球体が、恐るべき速度でライデン目がけて一直線に突進してきた。
――ドガッ!
ライデンは足をしっかりと地につけ、球体の表面へ向かって強烈な拳を叩き込んだ。しかし、彼の拳は弾き返されてしまう。
「ははは! 俺の能力の前には、どんな痛みも一切通用しねえんだよ!」ハルキが球体の内部から嘲笑した。
拳の衝撃により、巨大な球体は上空へと激しく跳ね上がった。
「今の俺は能力を完全にコントロールできる! どこへ跳ね返るかも自由自在だ! ははは!」
球体は石畳に激突し、凄まじい速度で垂直にバウンドを繰り返し、落下するたびにさらなる推進力を得ていった。十分な加速に達した瞬間、それは栗色の髪の少年がいる場所へと正面から一直線に突っ込んできた。
ライデンはその衝撃を受け止めるべく、両腕を前方へと突き出した。
――ドォン!
巨大な質量が彼に激突し、その勢いのまま数メートル後方へと引きずっていく。彼の靴のソールが、舞台の石畳に激しく摩擦音を立てて削れていく。
「くっ……!」ライデンは歯を食いしばり、重い球体の慣性を止めようと必死に声を漏らした。
彼はなおも舞台の端へと押し込まれ続けたが、次第にその質量が速度を失っていくのを感じていた。 shadow そして、奈落へと転落するまさに一歩手前で、ライデンはその前進を完全に制動してみせた。
激しく息を切らしながら、彼は両膝を深く曲げた。
「おい、何をするつもりだ!?」ハルキの声が詰問する。
ライデンはその巨大な球体を両腕で抱え込み、全力を込めて締め付けた。
「離せ、この出来損ないが!」
規格外の怪力を爆発させ、ライデンはその重い質量を肩の上へと担ぎ上げ、自身の軸を中心に猛烈な速度で回転し始めた。
「な、何……!? 一体何をしてるんだ!?」
ライデンは十分な遠心力を生み出すまで回転を続け、強烈な一撃を伴う動作で、その球体を遥か上空へと垂直に放り投げた。
一瞬の猶予も無駄にせず、少年は両脚をバネのようにしならせて大気へと跳躍した。その驚異的な速度は、空中で球体と同じ高度に達することを可能にした。頭上で両腕を真っ直ぐに伸ばし、組んだ両手を一本の巨大な槌の如く振り下ろし、試合に終止符を打った。
――ドカッ!
ライデンは球体の頂点へと痛烈な一撃を叩き落とした。
――ズドン!
その衝撃は、ハルキを破壊的な速度で地面へと叩きつけ返した。舞台の外の砂地に激突した瞬間、強烈な一撃が膨大な土煙と破片を巻き上げた。ハルキは完全に有効エリアの外へと弾き出され、意識を失って横たわっていた。
「勝者、ナカムラ・ライデン!」審判が叫んだ。
コロシアムが割れんばかりの大歓声に包まれる中、ライデンはゆっくりと降下し、一分の狂いもなく舞台の上に完璧に着地した。




