33話 腐敗
月光の魔力の銀の奔流が崖を洗い流し、将軍と配下の武将たちに神聖で底知れぬ力を与えた。蘇った彼らのオーラで空気はパチパチと音を立て、十三人の人間の武将たちは、押し寄せる闇を背景に地上に降り立った星々のように輝いていた。
だが、高い岩の足場の上に立つ堂々たる存在は、微動だにしなかった。彼は障壁を張ることも、女神の加護を打ち消そうとすることもしなかった。
代わりに、魔導王は青白い手をゆっくりと伸ばした。そして、指先で漂う月光の霊妙な銀の欠片をそっと捕らえた。神聖な魔力は彼を焼くことはなく、ただ彼の肌の上で踊るように跳ねた後、彼の存在が放つ圧倒的な深淵の闇の中へと消えていった。
その完璧な顔に、かすかな、どこか哀愁を帯びた微笑が浮かんだ。
「なるほど」
その存在は呟いた。その声には未だあの恐るべき、地殻変動のような重みが伴っていたが、今は深く、古き郷愁が混じり合っていた。
「現代(この時代)において、彼女は月女神の座を継いだか。なんと……いじらしい」
ひび割れた大地の上で、織田信長将軍の目が危険なほどに細められた。彼のサクラズキの刀の周囲で脈打つ銀のオーラが激しく揺らめく。**Sランク**の支配者である彼が簡単に動揺することなどないが、この怪物が最高神についてあまりにも平然と、親しげに語る様子に、背筋を冷たい不安の棘が突き刺した。これは心なき獣などではない。神々をまるで古い知人のように語る存在なのだ。
「どういう意味だ?」オダは、絶対的な、屈することのない鉄の響きを帯びた声で問い詰めた。「貴様は、一体何者だ?」
その存在は、地の底で岩が擦れ合うような、低く響く含み笑いを漏らした。彼の周囲に渦巻く歪んだ重力が突如としてシフトし、外側へと拡大する。彼は険しい岩から足を踏み出したが、落ちることはなかった。ただ静かに戦場へと浮遊し、その薄暮のローブは吹くはずのない風に翻っていた。
「おっと、失礼」その存在は、忘れ去られた帝国の不可能とも言える重みを伴った、軽蔑的な、わずかな一礼をしてみせた。「生者と会話を交わすのは数千年ぶりのことでな。歴史は私の顔を忘れたかもしれんが、断言しよう、凡夫たちは神話の中で私の影を生き長らえさせてきたはずだ」
彼は両腕を広げた。彼が言葉を発すると同時に、海岸の上空は激しく暗転し、雲は彼の頭上で直接、巨大で不自然な渦へと巻き上がっていった。ヒミコの加護である銀の光は、彼の精神圧の圧倒的な濃密さを貫くのに苦戦していた。
「万古の時を超え、民は我を様々な名で呼んできた」
その存在は声を張り上げ、その振動は居合わせるすべてのヤマトの将軍たちの骨にまで響き渡った。
> 「**叡智の王! 魔導の皇帝! 奇跡の御子! 凡夫の光! 真理の門番!**」
称号が口にされるたびに大地は震え、空気は呼吸が困難になるほどに濃くなっていった。背後に控える二人の精鋭――そびえ立つ武器の達人と、目隠しをされた聖女――は、絶対的な、沈黙の畏敬をもって彼の後ろで跪いた。
その存在は腕を下げ、その輝く古の瞳を織田信長将軍へと真っ直ぐに向けた。
「だが、ヤマトの将軍よ。お前は私を真の名で呼ぶが良い」その存在は、すべての終焉を約束するかのような、冷たく恐ろしい表情で微笑んだ。
「**我が名は、ソロモン。**」
その名は、彼らを取り囲む押し潰すような重力よりも重く、空気中にただよった。
ほんの一瞬、織田信長将軍の完璧で神がかった落ち着きが、目に見えて瓦解した。彼の目は見開かれ、サクラズキの刃の周囲で脈打つ銀のオーラが揺らいだ。最高支配者であり、大陸の最も深く禁じられた歴史を修めた学者として、その名は彼にとって単なる神話ではなかった。それは、現実の根底を支える法則そのものだった。
「あり得ん……」
オダは息を漏らした。その衝撃は彼の貴族的な仮面を完全に切り裂いていた。「ソロモンは死んだはずだ。貴様は第五の時代、あの大絶滅の折に消滅した。貴様が倒れたがゆえに、魔術の歴史そのものが断絶したのだ!」
魔導王はその無礼に対して彼を攻撃することはしなかった。代わりに、その存在は輝く目を閉じ、一瞬の間、その完璧な磁器のような容貌に、深く、苦悶に満ちた悲哀が押し寄せた。
「いかにも」ソロモンは答え、その地殻変動のような轟音の声は、重く、古き囁きへと変わった。「お前たちの歴史の記録通り、私は永遠の闇へと堕ちた。永遠に眠り続けるはずだったのだ」
彼は青白い手をゆっくりと上げ、長い指を自身の胸に押し当てた。
「だが、あの者が、死者を眠らせてはくれなかった」ソロモンの口調に、突如として激しい嫌悪の棘が混じった。「奴らは深淵へと手を伸ばし、万古の時を超えて私の魂を引き戻したのだ。百万の無辜なる魂の、苦悶に満ちた生贄を燃料として、生と死の隙間に橋を架け、私を蘇らせた。そして、私の魂をこの器へと縛り付けたのだ」
織田信長は歯を食いしばり、その魔術の恐るべき規模を処理しようと脳をフル回転させた。第五の時代の存在を蘇らせるために……そしてそのために**100万人**の命を犠牲にするなど。セーヌ帝国は単に征服されたのではない。その民は、一人の亡霊を動かすバッテリーとして完全に消費し尽くされたのだ。
「この肉体は単なる器に過ぎん」ソロモンは自身の薄暮のローブを見下ろしながら続けた。「元の持ち主である、この肉体を宿していた少年……彼の意識は、今もこの内部で目覚めたままだ。彼は私の瞳の裏に閉じ込められ、私の行うすべてを強制的に見せつけられ、私にしか聞こえぬ静寂の中で悲鳴を上げ続けている」
徳川将軍と他の**Aランク**の指揮官たちは剣をさらに強く握りしめ、胃の腑に冷たい恐怖が溜まっていくのを感じた。彼らが直面しているのは、領土を欲する暴君ではない。絶対的な、宇宙規模の悲劇だった。
「ならば、なぜヤマトへ進軍する!」オダは前へ踏み出し、ヒミコの加護である銀の光が押し寄せる闇に対抗して激しく燃え上がった。「お前が叡智の王であり、真理の門番であるならば、なぜ世界を灰に帰そうとする? なぜ心なき腐肉の軍勢を率いて、無辜の民を虐殺するのだ!」
ソロモンが顔を上げると、その瞳から悲哀は消え去り、一瞬にして絶対的な闇の、渦巻く混沌とした嵐へと飲み込まれた。歪んだ重力が激しく跳ね上がり、将軍のブーツの下の岩を粉砕した。
「私がこの船の舵を握っていると思っているのか、凡夫よ」
ソロモンの声は、恐ろしく歪んだ二重の音声へと変貌した。それは、犠牲となった百万の魂の、集団としての苦悶の悲鳴の上に重なる、古の王の声だった。彼の周囲の空気が歪み、息の詰まるような、腐敗した黒い煙が立ち込める。
「百万の無辜なる血をもって大絶滅から引き戻されれば、その『叡智』は汚染される」ソロモンの完璧な顔が、王としての落ち着きを保とうと抗うように痙攣した。「彼らの恐怖、彼らの痛み、生者に対する終わりのない憎悪が……私の精神の血管を駆け巡るのだ。これは私には浄化できぬ汚染だ」
彼は両腕を広げ、海岸の上空の黒い渦がさらに速度を増し、空を引き裂かんばかりに荒れ狂った。彼の傍らにいたそびえ立つ武器の達人と目隠しの聖女が立ち上がり、王のオーラが激しく瓦解していく中で、闇に歪んだ武器を抜いた。
「大陸への侵攻……ジョソンの壁の破壊……そしてお前たちの甲州回廊への進軍……」ソロモンの声はさらに大きくなり、狂気がその古の精神を完全に支配していくにつれて、大地の基礎を揺るがした。
「これは計算された征服などではない、将軍! 私が制御を失った瞬間に引き起こされるのだ! これは、神の力を操り人形とする、百万の死せる魂の怒りだ!」
ソロモンの目がカッと見開かれ、不浄な、漆黒の炎で燃え上がった。穏やかで哀愁を帯びた古の王は消え去り、復活による混沌とした、汚染された怒りに完全に飲み込まれていた。
「そして今この瞬間!」汚染された魔導王は咆哮し、その音の衝撃だけでヤマトの将軍たちを物理的に後方へと吹き飛ばした。
「**私は、制御を失いつつある!**」
魔導王の周囲に渦巻く歪んだ重力の黒い渦は、空を覆い尽くすほどに濃密になった。ヒミコの神聖な加護の銀の光だけが、ひび割れた荒涼とした海岸線を照らし、押し寄せる深淵に対する脆弱な盾となっていた。




