58話 不運
突然、空気がひどく、ひどく冷たくなった。地面の揺れが止まった。通りは完全に静まり返った。あまりにも静かすぎた。
道のど真ん中、彼らの唯一の退路を塞ぐように、一人の「人」がいた。しかし、その姿は到底普通の人間のものとは思えなかった。
彼はハイボス。恐ろしい怪物たちのリーダーだった。『宝玉の猛攻・悲哀の忘却の騎士(ジュエル・オンスロート・モーンフル・オブリビオン・ナイト)』。その名はディルス。
彼を見ると、目が痛くなった。その体は実体がなかった。ただのぼやけた、毛羽立ったような黒い輪郭だった。じっとしていない暗いシミを見ているようだった。体の境界線は常に震え、暗い通りと混ざり合っていた。
ラッキーは歩みを止めた。地面を感じた。このボスは、普通の黒い怪物たちとは違った。世界中を食い尽くそうとする、巨大で深い「穴」のように感じられた。
ディルスは襲いかかってこなかった。ただそこに立ち、門を塞いでいた。
そして、ディルスが口を開いた。その声は柔らかかったが、聞いた者全員の耳鳴りを引き起こした。
「残念だね、小さな子供」ぼやけた黒い騎士が言った。
全員が凍りついた。怯えた市民たちは静かに泣き始めた。ジャンヌは剣を強く握りしめたが、初めてその手が震えていた。止められない力が目の前にあり、他に逃げ場はどこにもなかった。
ラッキーが一歩前に出た。彼は震えていたが、勇気を振り絞った。「どうしてこんなことをするんだ!」ラッキーは叫んだ。
ぼやけた黒い輪郭は動かなかった。「運命は残酷なものだ」ディルスは言った。その声は冷たく静かだった。「だが安心するといい。これが起きたのは王都だけではない。大爆発は、セーヌ帝国のすべての都市で起きたのだ。例外なくね」
ラッキーは息を呑んだ。「嘘だ!」ショックのあまり叫んだ。「信じないぞ!」
「いいや、子供よ」ディルスはゆっくりと説明した。「私はあらゆる最悪な行いをしてきた。だが、嘘をつくことはその中に含まれていない」
その言葉は、巨大な岩よりも重くラッキーを打ちのめした。その悲しみはあまりにも重すぎた。
もしディルスの言っていることが本当なら、帝国全体が壊れてしまったということだ。ラッキーは自分の故郷、クロービス・シティのことを思った。遠く離れた、小さく静かな場所。もしすべての都市が爆発したなら、クロービス・シティも破壊されたのだ。
それは、自分の家がなくなったということ。お母さんとお父さんが死んでしまったということ。
ラッキーの指から、重い革のカバンが滑り落ちた。石の道にドスンと鈍い音を立てて落ちた。息ができなかった。心臓が痛すぎた。膝の力が抜け、彼は地面に崩れ落ちた。ただぼやけた黒い騎士を見つめたまま、見えない灰色の目から涙が溢れ出した。一人の子供が受け止めるには、あまりにも大きすぎる悲報だった。
ラッキーは膝をついた。悲しい気持ちが大きすぎた。彼は爪が肌に食い込むほど強く拳を握りしめた。冷たい石の上に、手から血の滴が落ちた。
もう隠れることなんてどうでもよかった。安全でいることなんてどうでもよかった。お母さんとお父さんを奪った、このぼやけた黒い騎士をただ傷つけたかった。
ラッキーは精神の力のすべて――目に見えない念動力のすべての欠片――を、ディルスに真っ直ぐに叩きつけた。
しかし、その力は一人の子供が抱えるにはあまりにも強大すぎた。彼の身体が壊れ始めた。見えない灰色の目から濃い赤い血の涙が溢れ出した。耳から血が流れ出た。鼻から血が滴り落ち、口からは赤い飛沫を咳き込んだ。
彼はその巨大な見えない力のすべてをぼやけた輪郭に叩きつけたが、ディルスは完全に静止したままだった。暗黒の騎士は一歩も下がらなかった。
「アァァァァァァァァッ!!!!!!!!」ラッキーは絶叫した。
それは勇敢な戦いの叫びではなかった。純粋な、壊れた悲しみの悲鳴だった。彼から放出される見えない力はあまりにも荒れ狂い、通りをひび割れさせ、空気を地震のように揺らした。
ジャンヌは彼の顔の血を見た。自分の小さな弟が、自らを破壊しているのを見た。
止めることのできない黒い騎士への恐怖は、彼女の心から消え去った。彼女は重い鉄の剣を地面に落とした。ディルスと戦うことなどもうどうでもよかった。ただラッキーを救わなければならなかった。
「ラッキー! ダメ!!」ジャンヌは悲鳴を上げた。
彼女は荒れ狂い、揺れる空気の中を真っ直ぐに走った。見えない力が彼女の服を切り裂き、押し返そうとしたが、彼女は痛みを無視した。彼女は地面に身を投げ出し、ラッキーを両腕で強く抱きしめた。震え、血を流す彼の体を強く抱き寄せ、怒りの力が彼自身を完全に引き裂いてしまう前に、彼を落ち着かせようと必死に抱きしめた。
ジャンヌは彼をできる限り強く抱きしめた。彼の力から生じる見えない風が彼女を押し引きしたが、彼女は決して手を放そうとはしなかった。
「痛いのはわかってる!」ジャンヌは、激しく揺れ動く空気の轟音に負けじと叫んだ。
彼女自身の涙も、ついに堰を切ったように溢れ出した。涙は汚れた顔を伝い、ラッキーの頬の土埃や血と混ざり合った。
「でも、私が一緒に乗り越えてあげるから!」彼女は大声で泣き叫んだ。
ラッキーは、体がバラバラになってしまうのではないかと感じるほど激しく震えていた。彼の魔法は、その小さな体にはあまりにも大きすぎたのだ。
「お願いだから、自分を傷つけるのはやめて!」ジャンヌは彼の肩に顔を埋め、懇願した。
今の彼女には、恐ろしい黒い騎士のことなどどうでもよかった。壊れた街や世界の終わりすらどうでもよかった。彼女が気にかけているのはラッキーのことだけだった。彼は義理の弟だ。彼女の家族だ。もし彼のお母さんとお父さんがいなくなってしまったのなら、彼女が彼を一人になんてさせるわけがない。そして絶対に、彼を死なせたりはしない。
「お願い、やめて」ジャンヌは硬い石の道の上で彼を前後に揺らしながらしゃくり上げた。「私はここにいる。あなたにはまだ私がいるわ。お願いだから、私まで置いていかないで!」
ラッキーにはジャンヌの声が聞こえていた。顔に落ちる彼女の温かい涙を感じた。義理の姉が泣きながら、やめてくれと懇願しているのが聞こえた。
心の奥底では、彼も彼女を抱きしめ返したかった。「ごめんね」と伝えたかった。
しかし、できなかった。もう遅すぎた。暗く悲しい感情が彼を飲み込んでいた。彼は自分自身の絶望の中に沈んでいった。見えない力は今や完全に制御を失っていた。それは巨大な洪水のように彼から漏れ出しており、彼自身にもどうやってそれを止めればいいのかわからなかった。
彼の荒れ狂う怒りの念動力のすべてが、真っ直ぐ前方へと押し出された。それは見えない列車のように、ぼやけた黒い騎士へと激突した。硬い石の通りが細かく砕け散る。重苦しい空気が轟音を立てた。
だが、ディルスは動かなかった。
上位のボスは、壊れた道の真ん中で完全に静止したまま立っていた。攻撃を防ぐために手を上げることもない。ただの一歩も下がらなかった。ただ見つめているだけだった。
巨大な見えない力がディルスに直撃し……そして何も起きなかった。力は彼の毛羽立った黒い体をただ通り抜けただけだった。まるで影を殴ろうとしているかのようだ。ディルスはただ静かにそこに立ち、血を流す小さな少年がすべての力を無駄に使い果たしていくのを眺めていた。
ラッキーの体は、もはやその巨大な魔法を保持できなかった。それは彼の体を外側からも壊し始めていた。
彼の皮膚が、古く乾いた紙のように剥がれ落ち始めた。腕や顔から皮膚が剥がれ、その下にある赤い筋肉や硬い白い骨が露わになる。あまりにも恐ろしい光景だった。彼は通りのど真ん中で、文字通りバラバラに崩れ落ちようとしていた。
彼の周囲に、どす黒い赤血の大きな水たまりが広がった。それは砕けた石を覆い隠していった。
ジャンヌはその血の海のど真ん中に座り込んでいた。血はズボンに染み込み、彼女の手を滑らせたが、彼女は彼を放さなかった。生々しい筋肉や恐ろしい骨から逃げ出したりはしなかった。ただ、さらに強く彼を抱きしめた。
「ラッキー、戻ってきて!」ジャンヌは大声で叫んだ。その声は掠れ、ひび割れていた。「お願い! 私を見て! やめて!」
彼女は血の水たまりの中で、彼を前後に揺さぶった。私のもとに戻ってきてと、何度も懇願し続けた。ぼやけた騎士のことも、世界の終わりのこともどうでもよかった。ただ、自分の腕の中で小さな弟が溶け去っていくのを止めたかっただけなのだ。しかし、彼自身の壊れた心の大きなノイズのせいで、ラッキーには彼女の声が届かなかった。見えない力はただ流れ出し続け、彼の命を一緒に持ち去っていった。
ジャンヌも傷ついていた。ラッキーの荒れ狂う見えない魔法が彼女を押し引きした。その力は彼女の服を引き裂き、切り傷を負わせたが、彼女は決して彼を放さなかった。




