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ざいあくひげき  作者: Balance
セーヌ帝国編
24/246

24話 学習

「ラッキー!」ジャンヌが叫んだ。熟練のストライカーのスピードで動き、彼女は自分の全身を彼の上に投げ出し、沸騰したお湯の直撃を自ら受けるために、ラッキーの頭と肩に乱暴に腕を巻きつけた。


しかし、水しぶきは決して来なかった。


ジャンヌはゆっくりと目を開けた。彼女はまだラッキーの上に覆い被さって彼を守っていたが、彼女の背中から1インチも離れていない空中で、こぼれたお茶と二ダースの甘いパンが完全に静止して浮かんでいた。


ピクッ……ピクッ……


ジャンヌの腕の下で、ラッキーの左の人差し指がわずかに痙攣していた。微細で、ほぼ目に見えないランクDの念動力の波が、大惨事を防いでいたのだ。ラッキーが手首を優しく、そして楽々と軽く振ると、こぼれた物体の重力が反転した。お茶は逆流してカップに戻り、パンはトレイの上に綺麗に積み直された。


「気をつけて、お姉さん」ラッキーは、ジャンヌのジャケットに顔をうずめたまま、くぐもった声で優しく言った。「あなたの左のかかとの後ろにある床板が、半インチほど浮き上がってますよ」


ウェイトレスは純粋な不信の目で見つめ、何度も何度もお辞儀をしてから急いで立ち去った。


ジャンヌはゆっくりと上体を起こし、震える手で弟を見た。ラッキーはただ落ち着いて生温かいミルクのカップを手に取り、一口飲んだだけだった。


「僕は大丈夫だよ、お姉ちゃん」ラッキーは彼女を見た。灰色の目は鋭かったが、信じられないほど優しかった。「僕は自分を守れる。そして、お姉ちゃんのことも守れるよ」


ジャンヌは震える息を吐き出し、ようやくこわばっていた肩を下ろした。彼女は再び彼をきつく抱きしめ、彼の髪に顔をうずめた。「わかってる。ラッキーならできるってわかってるわ。ただ……戦場じゃない時くらい、私に守らせてよね」


「うん」ラッキーは囁き、彼女を抱きしめ返した。


遅い午後が夕暮れに溶け込んでいく頃、グループは街の境界を見下ろす緑の丘の上に座っていた。


夕日は見事なはずだった。ジャンヌはラッキーのすぐ隣に座り、肩をぴったりと彼に押し付けていた。茶屋を出てから、彼女は彼の手を一度も離していなかった。


「空は今、紫と金色のミックスよ」ジャンヌは約束通り、優しく囁いた。「雲はピンク色の炎で描かれているみたい。太陽は、地平線に溶けていく巨大で光り輝く銅貨みたいに見えるわ」


ラッキーはクローヴィス市の広大な景色を見渡した。紫も、金も、ピンクも見えなかった。


しかし、物理的な太陽が地平線の下に沈むと、それに応えるように街の魔法グリッドが燃え上がった。ラッキーには、何百万もの小さなエネルギーのノードが同時に点火するのが見えた。城壁を覆う保護結界が、深く響き渡る周波数で唸り声を上げる。眼下の通りを歩く人々は、小さな、明滅する生命力の星々であり、それらが織り合わさって、呼吸する巨大な存在のタペストリーを形成していた。


「ねえ、お姉ちゃん」ラッキーは、彼女の肩に頭を預けながら静かに言った。「僕の世界にはもう物理的な色はないけど……でも、空っぽじゃないよ」


ジャンヌは彼を見下ろした。その目は零れ落ちそうな涙で潤んでいた。「何が見えるの、ラッキー?」


「みんなが見える」ラッキーは答えた。彼はジャンヌを見た。彼女の魂から放たれる、眩く、目を潰すほど美しい愛の青いオーラが見えた。ローランド、セリーナ、そして1年Aクラスの全員を見た。彼らの忠誠心に満ちた、活気に満ちたエネルギー・シグネチャーが完璧な調和の中で同調しているのが見えた。


「ローランドの風の魔法が、虫を追い払うために僕たちの周りで絶えず渦巻いているのが見える。セリーナの氷の魔法が、飲み物を冷たく保ってくれているのが見える。そして、お姉ちゃんのエネルギーが見える。それはこの街で一番明るい光だよ」ラッキーは微笑み、彼女の手を握る力を強めた。「僕には、本当に大切なものが見えるんだ。そしてそれは、とても、とても美しい世界だよ」


ジャンヌはついに涙をこぼした。しかし今度の涙は、悲しみからくるものではなかった。彼女は自分の頬を彼の頭のてっぺんに乗せた。


「ええ」ジャンヌは、金色の太陽の最後の光が消えていくのを見つめながら、感情の籠もった声で囁いた。「本当にそうね」


先鋒の誓い


丘の上の静かな時間は、草を踏む足音によって優しく破られた。ローランドが歩いてきて、巨大でベタベタしたリンゴ飴を二つ持っていた。彼は一つをジャンヌに渡し、ラッキーの反対側に座り、慣れた貴族的な優雅さで足を組んだ。


やがて1年Aクラスの残りのメンバーも丘を登ってきて、リーダーの周りに緩やかな半円を作った。レオンは串焼き肉を平らげようとしており、セリーナは静かに座り、彼女の受動的な霜の魔法が夕方の湿気を遠ざけていた。


「知ってるかい」ローランドは、光り輝く街を見下ろしながら、彼らしくなく柔らかい声で話し始めた。「ヴァレリウス家では、支配者は臣民の上に立たなければならないと、生まれた時から教えられるんだ。リーダーとは触れられない存在であるべきだ。王は、駒のために血を流したりはしない、とね」


ローランドは首を向け、その鋭い銀色の瞳をラッキーに向けた。ラッキーの視覚の中では、ローランドのエネルギーは断固とした銀色の風の、安定した渦を巻いていた。


「でも、あのヴォイド・センチネルが斧を振り下ろした時……」ローランドは、その記憶がまだ鮮明に蘇り、ゴクリと唾を飲み込んだ。「君は僕たちの後ろに立たなかった。僕たちに傷一つ負わせないために、自分自身の体を壊した。君は王の『ルール』を投げ捨てて、僕たちの盾になったんだ」


ローランドはゆっくりと練習用の剣――刃の潰れた重いブロードソード――を引き抜き、ラッキーの足元の土に突き立てた。彼は片膝をついた。


「君が空の色や、僕たちの旗の色を見られなくなったとしても、そんなことはどうでもいい」ローランドは、絶対的な確信を込めて響く声で言った。「今日から僕の最後の息が絶えるその日まで、僕の剣は君のものだ、ラッキー。君が、僕が生涯認めるただ一人のリーダーだ」


「僕の炎もだ」レオンが前に進み出て、自分の胸を拳で叩いた。


「そして私の霜も」セリーナが付け加え、その声は冷ややかだったが猛烈な忠誠心を帯びており、彼女もローランドの隣に跪いた。


一人、また一人と――ガルド、ユーゴ、ミア、リリア、フレイヤ――彼らは皆、草の丘に跪いた。ためらいも、恐怖もなかった。彼らはただの6歳の子供であり、望みもしない戦争に放り込まれただけだった。しかしその瞬間、彼らは司令官に忠誠を誓う百戦錬磨のベテラン兵士のように見えた。


ジャンヌは跪かなかった。その必要はなかった。彼女はただラッキーの肩に腕を回した。彼女の存在そのものが、無言の、決して破られることのない彼女自身の誓いだったのだ。


ラッキーは跪く人影を見た。彼の灰色の世界では、彼らは純粋で目を潰すような光のそびえ立つ柱だった。涙として溢れ出しそうなほど強力な感情で胸が膨らんだが、彼は自信に満ちた、揺るぎない笑顔を作った。


「立って」ラッキーは優しく命じた。「僕たちは王様とチェスの駒じゃない。僕たちは1年Aクラスだ。そして、全員で一緒に生き残るんだ」


翌日の夕方、クローヴィス学園の重い鉄の門が彼らの前にそびえ立っていた。48時間の休暇は正式に終了した。


その変化は明白だった。学園の敷地に足を踏み入れた瞬間、リラックスした市民の雰囲気は消え去った。子供たちは本能的に陣形を引き締めた。ローランドが自然と前衛に移動し、セリーナが後衛につき、ジャンヌはラッキーの右側にぴったりと張り付いた。


サイラスは寮の入り口で石の壁に寄りかかり、彼らを待ち受けていた。彼は彼らの同調した足取りと、その顔に浮かぶ冷静で集中した表情を一瞥した。


「怯える子供というより、本物のストライカーらしくなってきたな」サイラスは壁から背中を離し、言った。「いいだろう。お前たちの肉体的な休息は終わりだ。校長が俺たちの要請を承認した。明日から、対ヴォイド戦術訓練を開始する」


彼はラッキーを真っ直ぐに見た。「目は休まったか、坊主?」


ラッキーは木の杖を石畳にコツコツと当てた。彼はただ振動を感じただけではなかった。運動の波紋が広がり、中庭の正確な寸法と、それを保護する魔法の結界をマッピングするのを『見た』のだ。


「準備はできています、先生」ラッキーは頷いた。


「しっかり寝ておけ。必要になるからな」サイラスは踵を返し、影の中へと歩いていった。「朝の5時だ。遅れるなよ」


その夜、寮は水を打ったように静まり返っていた。ジャンヌは「医療上の必要性」を理由に、寮母を強引に説き伏せて自分のベッドをラッキーの部屋に移動させることに成功していた。彼女は今、深く規則正しい寝息を立ててぐっすりと眠っている。


ラッキーは自分のベッドに横たわり、天井を見つめていた。目を閉じていても、世界が本当に暗くなることはもう二度となかった。学園の結界から放たれる微かで受動的な唸りが、光るクモの巣のように壁を通り抜けていくのが見えた。隣にいるジャンヌのエネルギーのリズミカルな脈動が見えた。


しかし、時計塔が深夜零時を告げた時、部屋の気温が急降下した。


ラッキーは目を見開いた。部屋の魔力が描く光るグレースケールのタペストリーが歪んでいた。彼のベッドの真上、天井の隅で、環境エネルギーが吸い取られ、完全な、真っ黒な絶対的無の円が残されていた。


それは、ディルスから放たれていたのを見たのと同じ、息の詰まるような虚無だった。


ラッキーはパニックにはならなかった。ジャンヌを起こそうと叫ぶこともしなかった。彼の心拍数は完全に一定に保たれていた。


ゆっくりと、一つの、かすれた囁き声が黒い斑点から響き、彼の心に直接語りかけてきた。


「つかの間の光を楽しむがいい、小さな予言者よ。エクリプスは近づいている……」


黒い斑点が拡大し始めた。次元エネルギーの小さな欠片が、無理やり部屋に押し入ろうとしていたのだ。


ラッキーはオッドアイを細めた。彼の周囲の空気が唸る。筋肉を一つも動かすことなく、彼はランクDの念動力を空間の歪みに直接流し込んだ。彼は魔法で虚無と戦おうとはしなかった。ただ、黒い斑点の周りの物理的空間を掴み、くしゃくしゃの紙切れのように握り潰したのだ。


ポンッ。


黒い斑点は瞬時に砕け散り、無害な灰色の火花となって天井に消えていった。息の詰まるような圧力は消え去り、部屋の正常な魔力の流れが戻ってきた。


ラッキーはゆっくりとベッドの上に起き上がった。彼は天井の何もない隅を見つめ、その表情は完全に読み取れなかった。

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