36話 思い出す
最後の光景は最も暗いものだった。この時間軸には、大和幕府も、陰陽閣も、子供たちも存在しなかった。セーヌの崩壊を生き延びた後、彼とジャンヌは隠遁する謎の老人に拾われた。二人は純粋な復讐の兵器へと鍛え上げられ、ディルスの血統を狩ることだけに没頭していた。
だが、その力には恐ろしい代償が伴っていた。ラッキーは別時間の自分の正気を蝕む【暴食の呪い】の、焼けるような貪欲な乾きを感じ取っていた。それは経路上のすべてを喰らい尽くすことを要求する、終わりのない飢餓の虚無だった。そして彼の隣には、【色欲の呪い】に捻じ曲げられ狂わされたジャンヌがおり、彼女の精神は原始的で圧倒的な腐敗と常に戦っていた。二人は人間であることを捨てていた――荒涼とした世界を彷徨い、お互いに必死にしがみつく、愛すらも悲劇的で苦痛に満ちた生存本能へと変質した、呪われた野性の狩人たちだった。
**――ハッ!**
ラッキーの目がカッと見開かれた。
幻影は蒸発し、新たに拡張された彼の精神の、広大で整理されたアーカイブへと即座に退いていった。宇宙の書庫は静まり返り、彼の鉄の意志に膝を屈した。
彼は蒼松館の主寝室へと戻っていた。かすかなラベンダーと白檀の香りが空気中に漂っていた。部屋は完璧な平穏に包まれ、障子を透かして入る柔らかい銀の月光だけが室内を照らしていた。
ラッキーの胸が微かに上下していた。千の死の幻影の痛み、真理の書庫での孤立、そして暴食の呪いの飢える痛みがあたかも幽霊のように彼の皮膚に残っていた。
彼は視線を落とした。
ジャンヌはまだそこにいた。彼女は安らかに息をつき、深い眠りの中で顔を緩め、四つ子たちが安全に育つ妊娠八週目の小さなお腹の上に手を置くように重ねていた。廊下の奥では、アーニャ、フィン、ヒノラ、ヨウカが温かいベッドで眠っていた。庭園の向こうでは、ダンテとアビゲイルが安全に休んでいた。
――これこそが、彼らの「時間軸」だった。
宇宙が辿り得たあらゆる恐ろしく、悲劇的で、精神を破壊するような道のりの中で、彼らは薄氷の刃の上を渡り切り、この場所を見つけ出したのだ。自分たちが帝国を築き、子供たちが存在し、精神が完全であり、そして二人の愛が絶望的な生存戦術ではなく王朝の基礎となっている、この時間軸を。
その奇跡の、途方もなく圧倒的な重みが、物理的な衝撃となってラッキーを打ちのめした。
彼は身を転じ、その巨大な体を彼女へと向けた。彼は両腕でジャンヌを抱きしめ、自分の胸にぴったりと押し当て、彼女の金髪の中に顔を埋めた。彼は猛烈な、震えるような崇拝の念を込めて、彼女が千回死ぬのを見届けてきた男だけが理解しうる、絶対的で切実な感謝をもって彼女を抱きしめた。
唐突で強い抱擁にジャンヌは少し身をよじり、柔らかく眠たげな呟きを漏らした。「ラッキー……?」まだ目を閉じたまま、彼女は本能的に彼の温もりへと深く寄り添った。
「ここにいる」感情を隠そうともせず、声を太く震わせながらラッキーは低く唸った。彼は彼女の額にキスをし、それから手を下ろして彼女のお腹の上に優しく重ねた。「ここにいるよ。お前は安全だ。みんな、無事だ」
彼は今や多元宇宙の真実を知っていた。現層の狭間に潜む恐怖を知っていた。だが、薬学の都の中心で妊婦の妻を抱きしめながら、その武将は宇宙そのものに対して、静かで破られぬ誓いを立てた。
**――どの時間軸の惨劇も、金輪際彼女に触れさせはしない。**
彼には神々の知識があり、タイタンの力があり、そして背後には忠実な血の軍勢がいる。彼女にあの運命を味わわせるくらいなら、彼は現実そのものを灰に焼き払うだろう。
半分眠りの中にありながらも、ジャンヌの直感は鍛え上げられた刃よりも鋭かった。
何十年もの生存、戦闘、そして指揮の経験が、空気のわずかな揺らぎや大気圧の微細な変化すら拾い上げるまでに彼女の感覚を研ぎ澄ませていた。だが、彼女の目を完全に覚まさせたのは、戦士としての本能ではなかった。
夫の魂を自分自身以上に知り尽くしている「妻」としての本能だった。
ラッキーが猛烈で震えるような強さで自分をその巨大な胸へと引き寄せた瞬間、彼女の精神から残留していた睡眠の霧が消し去られた。彼の抱きしめ方は「違って」いた。それは過去一ヶ月間、旅を共にしてきた男の、単なる保護的な固い抱擁ではなかった。
それは切実だった。深遠だった。長年の共有された歴史の、圧倒的で美しく重い重みに裏打ちされた抱擁だった。
ジャンヌは目を開け、部屋に射し込む銀色の月光に瞬きをした。彼女は彼が「ここにいる。お前は安全だ」と囁いた時の、声の韻律に耳を澄ませた。そのトーンはより太く、より豊かで、彼が眠りにつく前にはなかった、感情の海洋のような深みを帯びていた。
そして、彼女はさらに別のことに気づいた。
彼女は彼の手の上に自分の掌を重ね、胸のちょうど心臓の上へと押し当てた。数週間もの間、彼の皮膚の下で振動し続けていた『第三紀元のアートファクト』の不自然で静かなハミングが――消えていた。代わりに、力強く規則正しい、人間たる彼の鼓動だけが響いていた。
ジャンヌは息を呑んだ。彼女は少しだけ体を起こし、肘で体を支えて影の中にある彼の顔を見下ろした。
ラッキーは彼女から目を逸らさなかった。彼は彼女を見上げ、その薄暗い光の中で、ジャンヌはそれを見た。
**――ヴェールが、消えていた。**
時間軸の断絶以来、彼の眼光の裏に座していた静かで空虚な脱落が、完全に消失していた。彼の暗い瞳は底知れず、宇宙の知識が渦巻いていたが、同時に時間を超えて存在する、深く痛切なまでに猛烈な愛によって固く繋ぎ止められていた。
彼は、あの大和幕府でのまさに最初の夜に彼女を見つめたのと、まったく同じ眼差しで彼女を見ていた。
ジャンヌの手が震え、指先が彼の顎のラインをそっととなぞった。彼女の桃色の瞳に新たな涙が溢れ出したが、今度はそこに悲痛の色はなかった。そこにあったのは、切実で圧倒的な「希望」だけだった。
「ラッキー……?」
声にならない息のような音で、彼女は囁いた。彼女は尋ねるのを恐れ、確かめるのを恐れながら、彼の顔を見つめ――
「その目……私を見つめる、その眼差しが……」
ラッキーは手を伸ばし、自分の頬に添えられていた彼女の手を、タコのある巨大な手で優しく包み込んだ。彼は彼女に言葉を最後まで言わせる必要はなかった。彼女が今何を感じているのか、彼には完璧に理解できていた。なぜなら、彼女が自分をそのように見つめてくれた過去のすべての瞬間を、ついに彼が思い出したからだ。
「契約のこと」彼女の頬からこぼれ落ちる涙を親指でそっと拭いながら、ラッキーは静かに低く語りかけた。「大和の空虚な屋敷。天界のパラダイス。セーヌの崩壊」
ジャンヌは小さく息を呑み、溢れ出る涙がまつ毛を伝い落ちる中、手で口元を覆った。
「覚えているよ」圧倒的な記憶の重みに、声をわずかに震わせながらラッキーは囁いた。「全部覚えている、ジャンヌ。お前を愛してきた、すべての瞬間を」
ジャンヌの喉から、絞り出すような泣き声が漏れ出た。彼女は一言も発せず、ただ前へと倒れ込み、彼の首筋に顔を埋めて肩を激しく震わせながら泣きじゃくった。だがそれは、夕食の時のあのかすかで苦痛に満ちた涙とは違っていた。それは絶対的で、混じり気のない安堵の濁流だった。二人の過去のすべてをたった一人で背負うという耐え難い重荷が、今まさに彼女の肩から降ろされたのだ。
ラッキーは彼女を両腕で包み込み、泣きじゃくる体を固く抱きしめ、彼女の頭頂部に優しく唇を押し当てた。彼は彼女が必要としていた「動かざる大黒柱」となり、溜め込んでいた感情のすべてを吐き出させた。
「俺がいる」暗闇の中で己の瞳を潤ませながら、ラッキーは彼女の髪に向かって囁いた。「戻ったよ。完全に、戻ってきた」
二人は新しい我が家の静かな聖域で、強く抱き合い続けた。神々や怪物、そして現実の断絶そのものに抗い、ただ互いのもとへと辿り着くためだけに時間を渡ってきた二人の武将。宇宙は二人を引き裂くために千もの手段を試みたが、蒼松館のベッドに横たわる今、彼らはついに、永遠に覆ることのない完全な勝利を収めたのだ。




