57話 親であること
「自分の感情に気づいていなかったのは、あなたの方だった可能性が高いけれどね」ジャンヌが言葉を挟み、彼の胸の中央を軽んじて突っつきながら、不満気で茶目っ気のある溜息をついた。
ラッキーはパチパチと瞬きし、純粋な衝撃に口を開けたが、やがて気まずそうな、自虐的な笑みが顔に広がった。彼女の言う通りだと気づき、彼は低い笑いを漏らした。自分は「お姉ちゃん」にあまりにも全霊を捧げており、生き残ることと彼女の傍にいることに必死すぎて、目の前にあった恋愛感情の変化に全く気づいていなかったのだ。
「そこまでにぶかったんだね、僕は」首の筋をさすりながら、彼は苦笑した。
「信じられないくらいにね」ジャンヌはからかったが、そのピンク色の瞳には愛おしさが溢れていた。彼女の手が上がり、指先で薬指の付け根を軽く撫でると、彼女の瞳に宿っていた茶目っ気のある光は、深い敬虔なものへと変わっていった。
「信長様の突然のストレートな物言いに面食らった私達は、当然指輪なんて準備していなかったわ」彼女の声は優しく、旋律的な調子へと落ちていった。「でも私達は一流の鍛冶職人よ。商人から買い求めるような真似はしたくなかった。だから私達はまっすぐ工房に戻り、炉に火を入れたの。自分たちの手で指輪を作ろうって決めたのよ」
飛び散る火花、炎の熱気、そしてハンマーの規則正しい打撃音の記憶に身を委ね、彼女は目を閉じた。
「私達は一緒に金属を打ち、完璧な形に仕立て上げた。そして完成した瞬間……」彼女は目を開け、純粋で純度の高い愛の表情で彼を見つめた。「あなたは待たなかった。大層なスピーチを準備することもなく、豪華な夕食を待つこともなかった。煤で顔を汚し、金床の上でまだ金属が温かいその鍛冶場で、あなたは指輪を取り、私の目を真っ直ぐ見つめて……求婚してくれたの」
輝くような、息を呑む笑みが彼女の顔を覆い尽くし、過去の悲劇の残り香を払拭した。
「今でも」ジャンヌは囁いた。感情の重みに声が微かに震えていた。「あの瞬間を思い出すだけで……胸がこんなにも温かくなる。私の人生で、一番幸せな日だったわ」
ラッキーは彼女を見つめ、胸が深く、圧倒的な感情の怒涛に締め付けられた。鍛冶場の光景は記憶の霧の中に失われていたが、彼女を妻にしたいという激しく拒みがたい衝動、その場で彼女に自らの命を捧げたいという誓い――その感情は完全に損なわれずに残っていた。記憶などなくても、その瞬間にどれほど彼女を愛したのか、彼には正確に分かった。
彼は手を伸ばして彼女の手を取り、優しく持ち上げて、彼女の薬指の上に柔らかく長い口づけを落とした。
「あの日の前は君の気持ちに完全に鈍感だったかもしれないけれど」静かな船室で、ラッキーの声は低く確かな誓いとなった。「でも約束するよ、ジャンヌ……今の僕にははっきりと見えている。君がこんな風に笑ってくれるなら、煤だらけの鍛冶場で何千回でも求婚し直すよ」
彼の唇が自分の肌に触れると、ジャンヌの息が止まった。そのシンプルで愛おしい仕草に、彼女の背筋をはっきりと震えが走り、最後の強固な「指揮官」としての外皮が、船室の静かな温もりの中へと溶け去っていった。
彼女は小さく震える息を吐き出し、兄であり、相棒であり、夫であった男性を見つめると、そのピンク色の瞳が揺らめいた。
「あなたって人は、時々本当にずるいわ」言葉とは裏腹に、彼女の顔に浮かぶ輝くような笑みが、彼の言葉にどれほど深く動かされたかを物語っていた。彼女は慎重に手を動かし、指を彼の指に絡めて強く握りしめ、あたかもこの『現在』という瞬間に自分を繋ぎ止めるかのようにした。
「結婚した後」ジャンヌは続けた。声は静かで懐かしいリズムへと落ちていった。「私達の間で何かが変わったの。単に生き残るためだけの関係ではなくなった。生きていくための関係になったのよ。私達には鍛冶場があり、ヤマトに家があり、そして互いが互いのものであるという絶対的な確信があった。あの数年間は、私の人生で最も静かで、最も美しい時間だった。兵士としてでも、神童としてでもなく、ただあなたの『妻』として、毎朝あなたの隣で目を覚ますことができたのだから」
彼女は身を寄せ、彼の肩にそっと頬を預け、彼の規則正しい呼吸に耳を澄ませながら目を閉じた。《安宅船 II》の周囲の音――エンジンの低音や繰り返される波の唸り――が、二人を包み込む保護膜のように感じられた。
「私達はそこに聖域を築いたの」彼女の手の甲を親指でぼんやりとなぞりながら、彼女は静かに言った。「世界がまだ忘却騎士団の襲来や帝国の崩壊から回復しきっていなかった頃、私達だけの小さな宇宙を持っていたのよ。昼間は幕府のために武器を鍛え、夜はただ……二人で存在した。料理をし、訓練をし、未来について語り合った」
ジャンヌは言葉を止め、複雑な感情が顔をよぎった後、彼の抱擁へとさらに深く収まった。
「あの鍛冶場で私達は約束したわ。何が起ころうとも、世界が私達をどこへ引きずり込もうとも、二度と離れ離れにはならないって。私達の絆はどんな戦争よりも、どんな終末よりも、どんな記憶喪失よりも強いんだって」
彼女は目を開け、彼の強い横顔を見上げ、生涯をかけて愛してきた顔の輪郭を目で辿った。
「私達はその約束を守ったのよ、ラッキー」ジャンヌは強い感情を込めて囁いた。声には生涯の献身の重みが宿っていた。「記憶が砕けてしまった今でさえ……私達はこうしてここにいる。一緒にね。約束した通りに」
船室を覆っていた柔らかく懐かしい温もりが、まるで目に見えない重みによって空気が重くなったかのように、突如として恐ろしいほど儚いものへと変わった。彼の手の上で円を描いていたジャンヌの親指が止まり、彼女の指は必死な力で、指関節が白くなるほど彼の手を強く握りしめた。
「信長様は、ヤマト幕府がこれまでに見たこともないほどの盛大な結婚式を挙げてくださったわ」ジャンヌの声は、圧倒的な喜びと押し寄せる息苦しい悲しみの混ざり合いで震えていた。「素晴らしかった。私は言葉にできないほど幸せだった。その後、私達は新婚旅行に出かけることにしたの。最後にもう一度だけ、故郷を訪ねたかった。私達はセーヌ帝国の廃墟へと戻り、かつてクローヴィス市があった場所へ向かったわ」
彼女は目を閉じ、倒れた故郷の苦くも愛おしい光景を思い出しながら、唇に甘く切ない笑みを浮かべた。
「自然がすっかり街を奪い返していたわ」彼女は囁いた。「瓦礫は蔦で覆われ、植物は生い茂り、至る所に花が咲き誇っていた。見捨てられ、誰もいない場所だったけれど……とても綺麗だった。地球がようやく癒やされつつあるように感じられたわ」
ジャンヌは生唾を飲み込み、物語を先へ進めるにつれて呼吸が荒くなっていった。
「ヤマトへの帰り道、私、ひどく体調を崩し始めたの。旅の疲労か、荒野の放射能のせいかと思ったけれど……違っていたわ」彼女は顔を上げ、ピンク色の瞳に新たな涙を溜めていた。「私、妊娠2週間だったのよ、ラッキー。私達、親になるはずだったの」
ラッキーは胸に突然の巨大な衝撃を感じた。呼吸が止まり、記憶にない父親としての激しく深い愛の幻影が、彼の中で目覚めて激しく燃え上がった。子供。自分たちには子供がいたのだ。
「私達は幕府で親としての次の階段を歩み始めたわ」一すじの涙が頬を伝い落ち、ジャンヌの声が途切れた。「妊娠と出産は……途方なく困難だった。私の動物遺伝子のせいで、すべてが複雑で、危険に満ちていた。でも私達は乗り越えたの。私は双子を産んだわ。男の子と、女の子を」
嗚咽が彼女の喉を詰まらせ、彼女は彼の胸に固く顔を押し当て、溺れる者がすがりつくようにシャツを掴んだ。
「本当に可愛かったのよ、ラッキー。私達の世界の全てだった。私の遺伝子のせいで、二人は異例な速さで成長したわ。2年が経過して私達が19歳になる頃には……二人は生物学的に幼児のように機能していた。もう歩いていたのよ。言葉もしゃべり始めていたわ」
彼女は乱れた、胸の破れるような喘ぎ声を漏らし、全身を彼の腕の中で震わせた。強固な指揮官の面影は完全に消え去り、想像を絶する喪失によって粉々に砕かれた一人の『母親』がそこにいた。
「本当に完璧な子たちだったの……」外の波音に消え入りそうな囁き声で、彼女は絞り出した。「でも……でも、それだけだったの。それが、私達が二人を見た最後の瞬間になってしまった……!」
その後に続いた静寂は絶対的であり、重く、苦痛に満ちていた。
ラッキーは肺から空気が抜け出ていくのを感じた。子供たちを抱きしめた記憶も、名前も、目の色も分からなかった。それでも、彼の魂に穿たれた苦痛に満ちた空虚な穴が、容赦なく押し広げられた。それは砕けた記憶を迂回し、直接彼の心臓を打ち抜く、本能的で身体的な哀しみだった。
一言も発することなく、ラッキーは両腕で妻を強く抱き締め、物理的に可能な限り彼女を引き寄せた。彼は彼女の銀髪に顔をうずめ、壊滅的な悲しみの中で彼女を支えながら、自らの目も熱く焼けつくのを感じた。何が起きたのかは尋ねなかった。まだ惨劇の詳細を問いただす気にはなれなかった。彼はただ彼女を抱きしめ、二人が築き、そして失った家族のために、記憶の中で何としても逢いたかった子供たちのために、彼女が涙を流すのに身を委ねた。




