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ざいあくひげき  作者: Balance
天上楽園編
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48話 決意

船室の空気は淀み、ダンテの明かした事実の息苦しい重みに満ちていた。乗組員たちは信じがたさと、じわじわと忍び寄る激しい恐怖の間で表情を強張らせ、彼を凝視していた。属性使いの青年は薄暗い光の中に立ち、杖に身を預けながら、神話を暗誦する熟練の学者そのものの佇まいを演じていた。


だが、その銀色の瞳の裏で、彼は本を読んでいるのではなかった。彼は未来の灰燼の中を歩いていたのだ。


「大蛇が……たった一匹に過ぎないのだとしたら」テーブルの縁を握りしめる拳を白くさせながら、船長がかすれた声で言った。「神よご慈悲を……残りの十一人は一体何なんだ?」


ダンテは一瞬だけ目を閉じ、自らのトラウマを超然とした学術的冷徹さの壁の向こうへ封印した。彼が再び口を開いた時、その声は催眠的なまでに規則正しい韻律を帯びていた――まだ終わっていない世界への追悼の辞のように。


「外典の記述において、それらは『概念的破壊の歪んだ車輪』として語られています」航海図のテーブルの周りをゆっくりと歩きながら、ダンテは語り始めた。「アナンタシェーシャが記憶の『虚無』であるとするなら、その同胞の筆頭は『漆黒の疫病ブラック・プレイグ』。それは病気ではなく、意思を持った蠢く腐敗。文明の礎を貪り喰らい、跡形もなく破滅と泣き叫ぶ廃墟だけを残す生ける伝染病です」


ダンテが杖で床板を突くと、その音が鐘の音のように不気味に響き渡った。


「次に『天の巨牛グガルアンナ』。地殻変動の猛威を司る巨人。それが歩む時、大陸は砕け散り山々は崩落する。その蹄は地震であり、その呼吸は噴火する火山から生じる火砕流そのものです」


「嵐の虎、『ヌエ』。純粋な大気暴力によって編み上げられたキメラ。狩りをするのではなく、統治する存在。それが空を舞う時、天は黒い稲妻を流し、暴風は骨から肉を削ぎ落とします」


乗組員たちは完璧に静まり返っていた。学者の不吉な暗誦を遮ろうとする者は一人もいなかった。


「『地獄の兎』」声を不気味な静寂へと落とし、ダンテは続けた。「朱い月の先触れ。狂気と歪んだ空間の具現。それを見つめることは、己の精神を最悪の恐怖が叫ぶ千の反射へと粉々に砕かれることを意味します」


「『竜ニーズヘッグ』。根を貪る者。地殻の奥深くに眠り、惑星の生命力を絶えず齧り取る絶対的腐敗の龍。それが浮上する時、海洋は毒へと変わり、生命という概念そのものが腐り始めます」


ダンテは舷窓の方を向き、霧深き海を見つめた。だが彼の目には炎しか映っていなかった。


「『フリージアンのケンタウロス』」彼は囁いた。「終末の先鋒。時間そのものを追い抜く、肉体と戦火で鍛えられた鉄でできた巨大な異形。それは抗いようのない圧殺的モメンタム(推進力)の体現――未来をただ粉塵へと踏みにじる力です」


「『山羊の主バフォメット』。不敬なる錬金術と自然法則の歪曲を司る存在。要素を捻じ曲げ、水を炎へ、重力を逃げ場のない押し潰す激痛へと変えることで、世界の創造をあざ笑うのです」


彼は部屋の中央へと視線を戻し、恐怖に引きつった船乗りたちの顔を一人ずつ見やった。


「『最古の謀反(原初の霊長)』。絶対的で不屈の反逆から鍛え上げられた戦王。普遍的秩序の破壊を意味する存在――ただ天を砕き、星々を泥の中へと引きずり下ろすためだけに生まれた混沌の力です」


「『堕天使』」ダンテの顎が微かに強張った。「『偽りの黎明』。焼き尽くすほど眩い光を放つ熾天使。夜明けや温もりをもたらすのではない。歪んだ無慈悲な救済の名のもとに、都市全体を白灰へと焼き尽くす浄化の炎をもたらすのです」


「『喰らい尽くす狼フェンリル』。そのあごは天から地へと届く。温もりの絶対的終焉。太陽の凍結。逃れることのできない最終極寒の冬」


ダンテは歩みを止めた。彼は両手を杖の頭に預け、その銀色の瞳に冷たく恐ろしい確信を宿らせた。


「そして、最後の一体」静寂の中、彼の声は囁きに過ぎなかったが重く響いた。「『封豕フウシ』。すべてを貪る大豚。全存在を飲み込む沼地。渇望に満ちた宇宙規模の飢餓であり、世界に果てしない沈黙の湿原しか残らなくなるまで、海洋も、森林も、魔法すらも呑み込み尽くします」


長い間、誰も息をしなかった。聞こえるのは、自分たちが知っていたよりも遥かに巨大で、遥かに敵意に満ちた世界の重みに悲鳴を上げるように、暗い海上で軋む船体の音だけだった。


船室を覆っていた息苦しい絶望は、突如として打ち砕かれた。


それは叫び声でも鋼鉄のぶつかる音でもなく、重厚な甲冑が木板を叩く鋭い音だった。ジャンヌが一歩踏み出し、甲冑に包まれたガントレットを海図の真ん中、テーブルの上に叩きつけたのだ。


彼女の動作に伴う運動エネルギーが、薄暗い室内に鮮やかなピンク色の光のパルスを走らせ、ダンテの言葉が呼び寄せた冷たく忍び寄る恐怖を一瞬で吹き飛ばした。


「それらが何であろうと」誰もが自分を見ざるを得ないような、一切の妥協のない絶対的な威厳を声に宿らせ、ジャンヌは言葉を挟んだ。「私たちが倒せるような相手ではないわ。そして、戦うつもりもない」


彼女はダンテを見つめた。その輝くピンク色の瞳は落ち着き払い、他の乗組員たちを麻痺させていた存在論的恐怖など欠片も浮かんでいなかった。原初の法則だの宇宙規模の破壊だの、彼女にはどうでもよかった。彼女の世界は血と肉、そして自らが愛する人々によって測られていたのだから。


「神だろうと、怪物だろうと、神話だろうと関係ないわ」純粋な母性の鋼から鍛え上げられた口調で、ジャンヌは宣言した。「私たちの目的は、終末と戦うことではない。生き残ること、ただそれだけよ」


彼女はテーブルから甲冑の手をゆっくりと引き寄せ、自らのお腹の上に優しく沿えた。甲冑越しであっても、その保護的な仕草は明確だった。彼女は戦士であったが、何よりも家族を必死につなぎ止めようとする一人の母親だった。


「私は決意を捨てないわ」《安宅船 II》の木材そのものに響き渡るような、激しくも静かな誓いを立てて彼女は言った。「奪われた我が子を見つけ出し、必ず連れ戻す。夫であるラッキーに、自分が誰なのか、私たちが共に築いてきた人生が何だったのかを思い出させる。そして、私の中で育っている四つの命――この四つ子を無事にこの世界へ産み落として見せるわ」


ヴァンス船長は自分が止めていた息を吐き出し、衰えた顔にゆっくりと血の気が戻っていった。ダンテは彼女を見つめ、銀色の瞳を微かに見開いた。数々の引き裂かれたタイムラインを旅してきた彼にとっても、『終末』の影に対してこれほど鮮烈に燃え上がる人間の意志を目にすることは滅多にないことだった。


ジャンヌは顎を上げ、疲弊し傷ついた乗組員たちをぐるりと見渡した。彼女は彼らの「錨」となり、ダンテの語る怪談の深淵から彼らを引き上げ、苛酷で眼前に迫る旅の現実に彼らをつなぎ留めた。


「アンド、そのすべてを果たした時――」その瞳に激しく揺るぎない光を宿し、ジャンヌは締めくくった。「私たちはこの悪夢から航海して脱出するの。私たちの家、ヤマト幕府へ帰るわ。それまで、誰一人として諦めることは許さない。誰一人として挫けるんじゃないわよ」


それに続いた静寂は、もはや絶望のそれではなかった。息をし続ける理由を与えられた乗組員たちの、静かで重厚な静謐だった。


船室の重い静寂は、小さくためらいがちな声によって破られた。


ジャンヌの脇で、アーニャはフィンの手を固く握りしめていた。二人の子供たちは問いかけるような見開いた目で、甲冑を纏った高い背の女性を見上げていた。混乱と恐怖の只中で、彼らは自分たちにとって最も重要な一つの事実に引っかかっていたのだ。


「ママ……?」アーニャは首を傾げ、静かに尋ねた。「……あたしたち、弟か妹がいるの?」


フィンは瞬きをし、同様に困惑しながらも、どこか誇らしげな表情を浮かべていた。彼らはこの奇妙な擬似家族に加わる前に連れ去られた子供の存在を知らなかったのだ。


指揮官の頑なで妥協なき表情は瞬時に消え去った。ジャンヌの強張っていた姿勢は緩み、ピンク色の瞳に宿っていた激しい光は、深く無条件の温もりへと和らいだ。静かな室内で重い甲冑の音を響かせ、彼女は片膝をついて子供たちと目線を合わせた。


彼女は手を伸ばし、アーニャの顔にかかったほつれ毛を優しく払い、甲冑の包まれた大きな手でフィンの肩をそっと叩いた。


「厳密に言えば……そうね。年齢で言えば」めったに乗組員には見せない、静かな母性の痛みを声に滲ませながらジャンヌは答えた。彼女は子供たちを自らの懐へと手繰り寄せながら、安心させるような小さな笑みを向けた。「あなたたち二人が、ママの『一番上のお兄ちゃんと、お姉ちゃん』よ」


『一番上』という言葉に、アーニャとフィンの目が微かに見開かれた。それは誇らしい勲章であり、足元が常に揺らぐような世界において、一瞬にして自らを繋ぎ止める重みとなった。


「あの子を見つけ出したら」彼女の口調は、優しくも確固たる頼み事へと変わった。「あなたたちの助けが必要なの。あの子にとって、頼もしいお兄ちゃんとお姉ちゃんでいてくれるかしら?」


ダンテの語る終末の物語の恐ろしさは子供たちの頭から完全に吹き飛び、即座に激しく純粋な責任感へと取って代わられた。フィンは胸を張って背筋を伸びやかにし、アーニャは真剣な眼差しで力強く頷いた。


「うん、ママ!」二人は声を揃えて答えた。


ジャンヌは二人を短く強く抱きしめ、彼らの小さな身体から力を得るように、一瞬だけ顔をうずめた。彼女が立ち上がった時、その温もりは残りつつも、指揮官としての鉄の意志が以前にも増して研ぎ澄まされて戻ってきた。彼女はそっと涙を拭っていたヴァンスを見やり、それから家族の絆の光景を静かな敬意をもって見つめていたダンテへと視線を移した。


「聞いたわね、船長」新たなる決意を声に宿らせてジャンヌは言った。「舵を取りなさい。私達には、引き裂かれた家族を元に戻すという仕事があるわ」

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