17話 ランクD:千里眼(クレアボヤンス)
その夜、寮の部屋は水を打ったように静まり返り、ガラス窓から差し込む月明かりだけが室内を照らしていた。ジャンヌがちょっとした擦り傷の手当てを終えた時、ラッキーがベッドの上であぐらをかき、エララ教授からもらった緑色のモンスターコアをしっかりと握りしめているのに気がついた。
突然、コアからの緑色の発光が激しくなり、濃密なエメラルドの光が部屋全体を包み込んだ。ラッキーの小さな体は激しく震えていた。コアはただエネルギーを供給しているだけではなく、ラッキーの意識を真っ直ぐに吸い込んでいるかのようだった。
「ラッキー?」ジャンヌは腹の底に不安の塊を感じながら近づいた。「ちょっと、無理してない? 一回やめなさいって!」
ラッキーは答えなかった。彼の顔は死人のように青ざめ、全身が冷や汗でずぶ濡れになっていた。一瞬後、彼の手から力が抜け、コアが床に転がり落ちた。ラッキーは白目を剥き、前のめりに倒れ込んだ。
「ラッキー! 弟! 目を開けて!」ジャンヌは彼の顔が床にぶつかる寸前で抱きとめた。彼の肌から焼け焦げるような熱が放たれているのを感じ、彼女の心臓は激しく早鐘を打った。これまでに経験したことのないパニックの波が彼女を襲う。「くそっ! 先生! サイラス先生! 誰か、助けて!」
ジャンヌはラッキーを腕に抱き上げ、ありったけの声で叫びながら部屋を飛び出した。彼女の必死の声が、静かな寮の廊下を揺らした。
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**【ラッキーの意識の中……】**
ラッキーは、底なしの空っぽな海へと沈んでいくように感じた。それは黒く、静かで、完全に無だった――村で初めて力を覚醒させた時と全く同じだ。しかし今回、その絶対的な暗闇の中に、頂上が見えないほど高くそびえ立つ、巨大な光の柱が立っていた。
柱は、ラッキーの心拍と完璧に同調して脈打っている。
ラッキーは前に歩み出た。一歩踏み出すごとに、足元から青いエネルギーの波紋が広がる。彼の手のひらが柱の冷たい表面に触れた瞬間、純粋な情報と生々しいエネルギーの爆発が彼の魂に叩きつけられた。彼のランクE+++のエネルギーの器に亀裂が走った――壊れたからではない、進化したからだ。彼のエネルギー容量は指数関数的に拡大し、ついにランクDの境界を越えた。
そしてそのまさに瞬間、彼の二つ目の固有能力が開花した。
もはや物体を動かすことだけに限らない。ラッキーの視覚は突然、空間と時間を貫いた。壁の向こう側のエネルギーの流れが見え、数秒先の未来が起こる前に見え、周囲のすべての原子構造が見えた。
ランクD固有能力:『千里眼』(真なる視覚と予知)。
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**学園の医務室……**
サイラスとエララ教授は、ラッキーのベッドの傍らで緊張した面持ちで立っていた。ジャンヌは彼の隣の椅子に座り、パニックで泣きはらした目をしながら弟の手をしっかりと握りしめていた。
「エネルギーが急激に跳ね上がった」エララは魔法のモニターを見つめながら囁いた。「こんなことはあり得ない。彼はまだ6歳だぞ。しかし、彼のエネルギーの器は今、進化の跳躍を遂げた」
突然、ラッキーの目がパチリと開いた。しかし、彼の視線は天井には焦点が合っていなかった。彼のオッドアイの瞳は、水晶のように透明で眩い青い光を放っていた。
「ラッキー? 目が覚めたの?」ジャンヌが期待を込めて尋ねた。
ラッキーはすぐには答えなかった。彼はきつく閉ざされた医務室のドアを見つめた。「3……2……1……」彼は静かに呟いた。
**バンッ!**
ラッキーのカウントダウンが終わったまさにそのミリ秒、ドアが開き、厳しい顔をしたアーサー校長が入ってきた。
ラッキーはサイラスの方を向いたが、彼にはもう、この傷だらけの教師がただの普通の人間には見えなかった。サイラスの筋肉の中に渦巻く赤い運動エネルギーの流れが見え、明日の朝に生徒に投げるつもりでポケットに残している小石が見えた。
「先生……」ラッキーの声は、普段よりも落ち着いていて、ずっと重々しく響いた。「僕……全部、見えます」
サイラスは凍りつき、目を細めた。戦闘のベテランとして、彼は何が起きているのかを正確に理解した。「千里眼か」サイラスは信じられないというように囁いた。「ランクDで視覚系の能力を覚醒させやがった。6歳にして……こいつはとんでもないバケモノだ」
ジャンヌは深い安堵と畏敬の念が入り混じった表情で弟を見た。ラッキーはもう、運の良い村の少年ではなかった。彼は、人間の限界を突破してエリートの領域に足を踏み入れた、彼らの世代の最初の開拓者となったのだ。
ラッキーは脳に流れ込んでくる圧倒的な情報の洪水をせき止めようと、激しく瞬きをした。瞳の澄んだ青い光はゆっくりと元の色に戻っていったが、彼の視覚は今、恐ろしいほど鋭く感じられた。
「ラッキー? 何が見えたの?」ジャンヌが心配そうに彼の手を握りしめながら尋ねた。
ラッキーは激しくズキズキと痛むこめかみを揉んだ。「僕……これから何が起こるか見えるんだ、お姉ちゃん。でも、少しの間だけ」彼は震える自分の手を見つめた。「さっき、校長先生が入ってくる5秒くらい前に、頭の中で先生がドアを開けるのが見えたんだ」
アーサー校長が一歩近づき、賢明な瞳で深い興味を抱きながらラッキーを観察した。「信じられん。ランクDの千里眼は、通常、短距離の予知に限られる。君の限界はどれくらいだね、少年?」
ラッキーは意識を再び集中させ、エネルギーを前方に投影した。1秒……2秒……サイラスが傷跡を掻く映像が見えた……10秒……外の窓に鳥がぶつかるのが見えた……。
30秒を超えようとした途端、頭を何千本もの熱い針で刺されているような激痛が走った。再び顔から冷や汗が流れ落ちる。
「1分……」ラッキーは激しく喘ぎながら言った。「絶対的な限界まで無理をすれば、1分先の未来まで見えます。でも、頭が……爆発しそうに痛いです」
「無理をするな!」サイラスが鋭く遮り、前に出てラッキーの肩をベッドに押し戻した。「未来を見ることは、たとえ数秒であっても人間の脳に耐え難い精神的負担を強いる。お前のような年齢の子供ならなおさらだ。それは小さな体に閉じ込められた神レベルの能力なんだぞ」
サイラスはアーサーとエララの方を向いた。「これで全てが変わる。攻撃用の『念動力』と、敵の動きを予測する『千里眼』。ラッキーはもはや単なる遠距離アタッカーじゃない。完璧な戦術指揮官だ」
エララ教授は同意して頷き、魔法のタブレットに何かを書き留めた。「6歳でランクD……これが外部に漏れれば、学園全体が揺れるぞ。外部の政治的派閥の標的にならないよう、彼の能力の正確な詳細は今のところ秘密にしておかなければならない」
静かに聞いていたジャンヌは、ついに安堵の長いため息をついた。彼女は愛情を込めてラッキーの髪をくしゃくしゃに撫でた。「もう、死ぬかと思うくらい心配したんだからね! でも、すっごくかっこいいじゃない……これからは、私があんたのおでこを弾こうとするのがいつか、正確にわかるってことよね?」
ラッキーはまだ顔色が青白いままだったが、小さく笑った。「かもね、お姉ちゃん。でも、叩かれるのがわかっていたとしても、僕の体がそれを避けられるくらい速いかどうかは別の話だよ」
「その通りだ」サイラスが割って入り、冷たい口調で完全に残忍な教師の顔に戻った。「未来が見える目を持っていても、反応する体が鈍間なら全くの無意味だ。ラッキー、お前はランクDに到達したのだから、明日の体力トレーニングは2倍だ。目に追いつけるように筋肉を鍛え上げろ」
ラッキーは長くて力のないため息をつくことしかできなかった。気絶してランクアップから目覚めたばかりだというのに、即座に地獄の特訓を脅かされるとは。
どうやらラッキーのランクアップは、1年Aクラスの中にさらに危険なライバル意識の導火線に火をつけたようだった。
名前:ラッキー
性別:男性
潜在ランク:S+++
現在ランク:D
能力:
初期能力:念動力テレキネシス ― 物理的な接触なしに物体を操作できる精神能力
第二能力:千里眼クレアボヤンス ― 遠方を見通し、未来を予知する精神能力




