34話 月明かり
枯渇しかけた生命力の一滴をさらに金属へ注ぎ込もうとしたその時、温かくタコのついた手が、彼女の手首を優しく包み込んだ。
ジャンヌはハッと息を呑んだが、手の中に灯っていた運動エネルギーの火花は即座に打ち消された。
ラッキーだった。
彼は岩場の物陰から一人で歩み出てきていた。ダンテが警戒網の監視につき、ヴァンス船長はアーニャとフィンに付き添っている。暗い波の静かな押し寄せる音に包まれ、そこには二人しかいなかった。
ラッキーは最初、何も言わなかった。ただ彼女を見つめる彼の瞳には、深く胸を締め付けるような愛おしさが満ちていた。彼女の弱々しい抵抗を無視し、彼はその手を船体からそっと引き離した。
「完成させなくちゃいけないの、ラッキー」ジャンヌは息も絶え絶えの、切実な囁き声で訴えた。サーチライトが掠めていく崖の方を、彼女は不安そうに振り返った。「巡回部隊が……近づいてる。船体の密閉を終わらせないと、出航できないわ。守らなくちゃ。守らなくちゃいけないの……!」
「よし、静かに」ラッキーは囁き、一歩踏み込んで彼女を両腕で抱きしめた。彼は彼女を胸に引き寄せ、その全体重を自分に預けさせた。
ついにジャンヌの膝から力が抜け、彼女はラッキーに崩れかかった。喉から押し殺したすすり泣きが漏れ、彼の首筋に顔をうずめた。
「今夜はもう十分やったよ、ジャンヌ」ラッキーは彼女の頭頂部に顎をのせ、優しく囁いた。彼は片手を下ろし、彼女のお腹の上にそっと、いたわるように添えた。「君のお腹には四つの命がある。俺たちの子供たちだ。こんな風に生命力を削り続けちゃいけない。君のオーラが完全に燃え尽きたら、傷つくのは君だけじゃないんだ」
「でも、兵士たちが……」ジャンヌは静かに涙を流し、彼の襟元を濡らした。
「兵士のことはダンテと俺に任せろ」ラッキーの声は力強く、揺るぎなかった。「俺の念動力は回復してきてる。もし巡回部隊に見つかったら、君やこの船に触れさせる前に砂浜ごと吹き飛ばしてやる。だから今は、立ち止まるんだ」
彼は彼女の顎をそっと持ち上げ、親指で頬についた血と煤の筋を拭った。
「世界中の重荷を、君一人で背負う必要はないんだ」目と目を合わせながら、ラッキーは語りかけた。「たまには俺たちに守らせてくれ。座って、息を整えるんだ。船は完成させるし、俺たちはこの島を脱出する。でも今は……俺の子供たちの母親に、この夜を生き延びてほしいんだ」
彼の声のこもった真摯で静かな誠実さが、ついにジャンヌのパニックを打ち破った。彼女の皮膚の下で震えていた必死な運動エネルギーの振動が、ゆっくりと消えていった。彼女は弱々しく頷き、ラッキーが風を遮る物陰にある柔らかい羊毛の毛布の束へとそっと腰掛けさせる間、彼の抱擁に深く身を預けた。
闇の中へ転落して以来初めて、ジャンヌは目を閉じ、ただ体を休めることを自らに許した。隣にいる男の頼もしく、守るような存在感に魂を繋ぎ止められながら。
ラッキーが影から歩み出て、身を削るジャンヌを止める前、彼は彼らが野営地を構えた小さく隠れた窪みの傍らに座っていた。
アーニャとフィンは身を震わせていた。二人の小さな心は、地下深淵の恐怖に未だ動揺していた。二人を落ち着かせるため、ラッキーは重い羊毛の毛布で包み込み、声を低めて穏やかな物語を紡いでいた。怪獣や終わりのない闇の物語ではない。故郷に伝わる古い伝説――描かれた月を横切って飛び、迷える旅人を夜明けへと安全に導く一羽の銀の鷺の物語を。
彼の低く安定したバリトンの声と、崖に打ち寄せる波の規則的な音にあやされ、二人の孤児はようやく疲労に身を委ねた。今や二人は体を寄せ合って温もりを分かち合い、静かに深く眠っていた。息遣いは穏やかで整っていた。
二人が穏やかに休んでいるのを見届けて初めて、ラッキーは海岸へと降りていき、《安宅船 II》の忌々しい金属からジャンヌを引き離したのだった。
今、岩場の物陰の暗がりで寄り添って座るラッキーとジャンヌの間には、重々しくも、もはや切迫感のない静寂が流れていた。
ボロボロの身体からアドレナリンが抜け、ジャンヌは彼の胸に寄りかかった。ラッキーは彼女を腕の中にしっかりと抱きしめ、4つの新しく儚い命が休む彼女のお腹の上に、そっと手を重ねていた。彼女の背中に触れる彼の力強い鼓動は、冷たい夜の中での頼もしい錨だった。
だが、静けさはまた別の痛みを呼び覚ました。
ジャンヌは彼の手の上に自分の手をそっと重ね、指先で彼の指関節にあるタコをなぞった。うねる沿岸の霧を見つめる彼女のピンク色の瞳は、深く胸を締め付ける悲しみにうるんでいた。
「あの子たちも、今夜同じ月を見上げていると思う?」ジャンヌは声を微かに震わせて囁いた。
ラッキーは息を詰まらせた。誰のことを言っているのか訊く必要すらなかった。彼は抱擁を強め、彼女の銀髪に頬を寄せた。
『ヘブンリー・パラダイス』の混乱の前、命を狙われる逃亡者となる前、彼らには別の生活があった。ラッキーとジャンヌがヤマト幕府の崇められる重鎮だった頃の生活だ。彼らは軍を率い、金碧の広間に座し、国家を動かす影響力を振るっていた。武士として、名誉と地位の面で望み得るすべてを手に入れていた。
だが、かつて自分たちの屋敷で安らかに眠っていた二人の赤ん坊に比べれば、そんなものは何の意味も持たなかった。
「男の子はあなたに似た目をしていたわ」煤に汚れた頬を一筋の涙が伝い落ちる中、ジャンヌが呟いた。「強くて、すべてを見透かすような目。でも女の子は……何かを壊した直後に笑う、あなたの悪い癖を受け継いでいたわ」
苦く切ない、歪んだ笑みがラッキーの唇に浮かんだ。「そうだったな。それに、君のかんしゃく持ちも似ていた」
あの日の記憶は、今なお焼き鏝のようにラッキーの心に焼きついていた。ヤマト幕府の上に太陽が輝いていた。屋敷は厳重に警護されていた。それにもかかわらず、敵は煙のように忍び込んできたのだ。
目的は幕府最強の戦士たちを暗殺することではなかった。彼らを打ち砕くことだった。赤ん坊の双子の誘拐は、精密で致命的な一撃だった。
その日、ラッキーとジャンヌは紋章を脱ぎ捨て、高位の地位を捨て、幕府を後にした。政治的権力の生活を捨て、傭兵や冒険者という苛酷で容赦のない道を選んだのだ。焼き払ったあらゆる都市、解体したあらゆるシンジケート、屠ったあらゆるモンスターは、自分たちの息子と娘を見つけ出すという痛苦の道のりの、単なる一歩に過ぎなかった。
「私たちが守るはずだったのに」ジャンヌは胸の奥でお腹に強く手を押し当てながら、喉を締め付ける罪悪感に喘いだ。「そして今……また四人も。あの子たちのことも守れなかったらどうしよう、ラッキー? この世界が、双子を奪ったようにこの子たちまで奪っていったら?」
ラッキーは彼女の体を抱きかかえたまま優しく向き直らせた。両手で彼女の顔を包み込み、親指で涙を優しく拭った。普段は戦闘で冷徹かつ計算深く光る彼の瞳が、絶対的で揺るぎない献身の念で燃えていた。
「俺たちはヤマトにいた頃の人間じゃない」ラッキーは激しくも静かな誓いを立てた。「あの頃の俺たちは名誉や幕府の掟に従って戦っていた。手加減をしていたんだ」
彼は額を彼女の額に押し当て、彼女の悲しみの重みを分かち合いながら目を閉じた。
「名誉なんてどうでもいいんだ、ジャンヌ。『ヘブンリー・パラダイス』の法も、神々の怒りも関係ない。俺たちの双子を奪った奴らは致命的な過ちを犯した――俺たちを生かしておいたことだ」
ラッキーは彼女の額に優しくキスをし、しばらくそのままにしてから、再び彼女の目を見つめた。
「この船を完成させよう」彼女のためだけのロマンチックで甘い囁きへと声を落とし、彼は約束した。「この島を脱出しよう。アーニャ、フィン、そして四つ子たちのための安全な場所を見つけるんだ。そして……俺たちの息子と娘が見つかるまで、この地を根こそぎひっくり返してやる。魂に誓うよ、ジャンヌ。俺たちの家族は、必ず元通りになる」
ジャンヌは震える息を吐き出し、胸の中の冷たい恐怖の結び目が彼の言葉の温もりで解けていくのを感じた。彼女は顔を寄せ、彼の唇に優しく自分の唇を重ねた。それは生き残るための必死のキスではなかった。我が子のために世界を灰にすら変える二人の親の間の、純粋な愛と静かな誓いという、ゆっくりとした確固たる錨だった。
「二人で」彼の唇に触れながら、ジャンヌは首筋に頭を預けて囁いた。
「二人で」ラッキーも繰り返した。頭上の敵の探照灯から安全に身を隠すように、沿岸の霧が二人を深く包み込んでいった。




