56話 新婚旅行
セーヌ帝国の名が出ると、部屋はほんの少し静かになった。
怯える子供として、あの灰に覆われた廃墟の地から逃げ延びてから、10年という長い歳月が流れていた。この10年間、二人は前を向くことだけに集中し、ヤマト幕府で新しい生活と新しい家を築いてきた。しかし今、ついに未来が保障されたことで、過去はもはや逃げ出すべき悪夢のようには感じられなかった。それは、ついに閉じる準備ができた章のように感じられた。
ラッキーはジャンヌの手を握りしめ、彼女を見つめた。その灰と銀の瞳には静かで揺るぎない自信が満ちていた。
「工でも新婚旅行の前に、かつての故郷を訪ねてみようと思う」ラッキーは静かに、しかししっかりとした声で言った。「滅びたセーヌ帝国だ。あの場所から逃げ出して以来、10年が経つ」
ジャンヌは彼を見つめ、ピンク色の瞳をわずかに見開いた。古い記憶――炎、キメラの姿、恐怖――が脳裏をよぎったが、彼の手が自分の手を握る温もりを感じた瞬間にそれは消え去った。
ラッキーは彼女に、破壊的なほど滑らかでハンサムな微笑みを向けた。
「それに、俺たちはもうBランクだしな」ラッキーは付け加え、彼女を少しだけ近くに引き寄せながら、甘くからかうようなトーンに声を落とした。「生涯愛する人を守るだけの強さは、もう十分にある」
ジャンヌの顔は瞬時に見事な真紅に染まった。彼女の長い白いウサギの耳が激しくピクピクと動いた。昨夜の後でさえ、彼女は夫のこの新しい、あからさまにロマンチックな一面にまだ完全に慣れていなかった。彼女は真っ赤に染まった顔を彼の肩に隠し、恥ずかしそうに小さな笑い声を漏らしながら、膝で軽く彼にちょっかいを出した。
新婚の二人がいちゃつくのを見て、織田信長将軍は頭を後ろにのけぞらせ、テーブルの上の茶杯を揺らすほどの巨大な、地鳴りのような笑い声を上げた。彼は軍の最高司令官としてではなく、まさに子供たちの成長を見守る誇らしげな父親のように二人を見ていた。
「ハハハ!好きにするが良い!」織田は笑い、金属の手で膝を叩いた。「お前たちはそれを受け取る資格がある!10年の契約のおかげで、二人とも山のような黄金を持っているのだからな。そこいらの大名たちよりも裕福だぞ!馬車を買うなり、船を雇うなり、好きなことをするが良い!」
将軍は再びお茶を一口すすり、傷のある顔に愛おしげな笑みを浮かべた。セーヌ帝国の生き残りのいかなるものも、「双星」には決して敵わないということを、彼はよく知っていた。
しかし、織田が笑っている間、ヒミコ大巫女は笑っていなかった。
彼女はラッキーとジャンヌを見つめ、その銀色に光る瞳は深く、紛れもない心配に満ちていた。二人がBランクの戦闘員であることも、先鋒隊全体を武装させたマスタークリエイターであることも、彼女にとっては関係なかった。大巫女にとって、二人は今でも自分が育てるのを手伝った大切な二人の子供だった。
彼女は優しく手を伸ばし、ラッキーとジャンヌの絡み合う指の上に、自分の柔らかい手を重ねた。
「お前たちが強いことは知っています」ヒミコは静かに言った。その声には母親としての優しい戒めが込められていた。「ですが、旧世界の廃墟は何が起こるか分かりません。どうか、不必要なリスクは冒さないと約束してください。お前たちには今、長く美しい未来が待っているのです。過去の亡霊に未来を傷つけさせてはなりません」
ジャンヌは大巫女を見つめ、その目に宿る本物の母性愛に胸を熱くした。セーヌに戻ることへの恐怖は完全に溶け去った。
「約束します、大巫女様」ジャンヌは優しく言い、明るく安心させるような微笑みを向けた。「気をつけます。ただ過去に別れを告げに行くだけですから。そうしたら、すぐに家に帰ってきます」
朝日が空を淡いピンクと金色に染め始めたばかりの頃、二人は首都の正門に到着した。今日は王室のラッパも、群衆も、花びらもなかった。静かで平和な朝だった。
ラッキーとジャンヌは、シンプルで頑丈な旅馬車の木製のベンチに並んで座り、荷物は後ろにしっかりと積み込まれていた。二人は重くて高価な婚礼の絹の衣装を、快適で耐久性のある旅の服へと着替えていたが、お揃いの銀とプラチナの指輪は、今もなお早朝の光を捉えていた。
彼らを見送るために重厚な杉の門の傍らに立っていたのは、そこにいるべき唯一の二人、織田信長将軍とヒミコ大巫女だった。
ラッキーは馬の手綱を握り、恩師たちに穏やかで安心させるような微笑みを向けた。
「できるだけ早く戻ります」ラッキーは約束した。その声には、家への道を知るマスターとしての安定した自信が宿っていた。「ですから、どうかあまり心配しないでください」
ジャンヌは彼の肩に寄りかかり、明るく温かい笑顔でそっと手を振った。「またね」
将軍は胸の前で腕を組み、力強く頷いた。「ああ。またな」
ヒミコは木製の杖をしっかりと握りしめ、その銀色の瞳には計り知れない誇りと静かな不安が入り混じって輝いた。「道中気をつけるのですよ、我が子たちよ」
手綱を優しくひと振りすると、馬車は前方へと動き出した。
木の車輪が石畳の道にカタコトと音を立てた。そのリズミカルで心地よい音は、次第に小さくなっていった。織田とヒミコは門の前で完全に静止したまま、ヤマト幕府から出ていく長く曲がりくねった道を下る馬車が、だんだんと小さくなっていくのを見守っていた。
二人は、馬車が地平線の小さな点にしか見えなくなるまで、そして最後には朝霧の中に完全に消え去るまで、長い間そこに立ち尽くして見つめていた。
首都の重厚な金属製の門が、彼らの背後に静かに佇んでいた。「双星」は旅立った。
門の前の沈黙は重かった。
10年間、首都は「虎」と「兎」の混沌としつつも輝かしいエネルギーで満ち溢れていた。今、彼らがいない世界は、突然少し静かすぎるように感じられた。
ヒミコ大巫女はうつむいた。信者たちの前で見せる、冷静で侵しがたい落ち着きがついに崩れた。一粒の静かな涙が彼女の頬を伝い落ち、すぐにまた一粒が続いた。彼女は胸に手を当て、呼吸を整えようとした。
「月の女神の神社の神職として、神聖な法により、私は結婚することも子供を持つことも禁じられています」ヒミコは、涙を流しながら声を震わせて囁いた。「ですが、彼らが私の人生に現れた時……母親が感じるものと全く同じものを、私に感じさせてくれたのです」
誰もいない道を見つめながら、彼女の涙の間からほろ苦い微笑みがこぼれた。「本当は、私から離れてほしくなかった。でも……彼らは成長しなければならなかったのですね」
彼女の隣で、ヤマト幕府の最高司令官は笑うことも、からかうこともしなかった。
織田信長は涙を流す大巫女を見下ろした。彼の激しくエキセントリックな眼差しが完全に和らいだ。彼は手を伸ばし、傷だらけの重厚な肉の手を彼女の肩に優しく置き、深く、物言わぬ理解を示した。
「分かっている」織田が口を開いた。その豪快な声は、柔らかく深く感情の込もった地鳴りのような響きへと静まっていた。「俺も全く同じ気持ちだ」
彼は馬車が消え去った地平線を見つめた。この10年間の重みが彼の肩に重くのしかかっていた。彼の声には静かな悲劇、二人が縛られている境界への認識、そして同時に圧倒的な誇りが込められていた。
「俺はお前と結婚することはできなかったな、ヒミコ」将軍は、帝国の二人の統治者の間にずっと漂っていた語られぬ繋がりを認めるように静かに告白した。「だが、彼らが俺たちの人生に現れてくれたことで……父親になるとはどういう感覚なのかを、彼らが教えてくれたのだ」
織田は彼女の肩を優しく、慰めるように握りしめた。
「彼らは俺たちに家族をくれた」将軍は微笑んだ。朝の太陽が、彼の紺碧の機械義手の端を捉えていた。「そして今……俺たちの子供たちは、世界を探索しに行く必要があるのだ」
ヤマト幕府からの旅は数週間を要し、平和な帝国の手入れの行き届いた清潔な道から、忘れ去られた地の荒々しく未開の荒野へと移り変わっていった。
木の馬車がついに最後の丘を越えた時、セーヌ帝国の廃墟が視界に入ってきた。
ラッキーは手綱を引き、馬を静かに静止させた。彼とジャンヌは木製のベンチに座り、自分たちの人生が始まった場所を見下ろした。それは、彼らの記憶にある悪夢とは完全に似ても似つかないものになっていた。
10年前、セーヌの首都は燃え盛る地獄絵図だった。息の詰まるような黒い灰、砕け散った石、そして歪んだ魔術の恐ろしい咆哮が響き渡る場所だった。
しかし、時間と自然がその土地を癒やしていた。
崩壊した都市は、森に完全に飲み込まれていた。巨大で太い樹木の根が古い石畳の通りを突き破って現れ、石を砕き、新しい土の道を作り出していた。鮮やかなエメラルド色の蔓が崩れ落ちた城の塔の側面を這い上がり、折れた柱に絡みついて、それらを優しく土の中へと引き戻していた。古い城壁の裂け目には野生の花々が咲き誇り、墓場を静かで美しい緑の聖域へと変えていた。




