↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔天道  作者: 外野透哉
45/61

第四十五話 輪廻施錠習得訓練

ー前回のあらすじ

 全員が力を合わせたことで、ペルソナとの決着がついた。

 ペルソナとの戦いを終えた一同が中庭へ戻ってきた時、張り詰めていた空気がようやく緩み始めていた。砕けた石畳の上に転がっていた清の体が、小さく動く。


 最初にそれに気付いたのは魔虎だった。額の汗を乱暴に拭いながら、慌てて駆け寄る。


「お!目ぇ覚ました!」


 視界の焦点を合わせるように瞬きを繰り返しながら、清がゆっくりと上体を起こす。まだ状況が掴めていない顔だった。


「わ、悪い……気失ってたみたいだ」


 その声に、少し離れた場所で壁にもたれていた迅が肩をすくめる。


「いやぁでも、あの爆音で起きなかったの逆に才能っすよ!」


 冗談めかした口調だったが、心配していたのは明らかだった。清は申し訳なさそうに視線を落とす。


「俺……何の役にも……」


 その言葉を遮るように、千智が前に出る。優しく、けれどはっきりとした声だった。


「そんなことないです。佐藤先輩の演技があったから、あいつを油断させることができたんですから」


 清が目を見開く。その視界に、もう一人の影が飛び込んできた。


「さ、帰ろう!佐藤くん!」


 無邪気に手を振る千弥の姿に、清の心臓が一瞬跳ね上がる。


――い、一ノ瀬 千弥!?


「は、はい……!」


 裏返りそうな声で返事をし、慌てて立ち上がる清。その様子を見て、魔虎は小さく吹き出した。



 戦闘の余韻と疲労を抱えたまま、その日はそれぞれの部屋へ戻り、泥のように眠りについた。




 翌朝の演習場には、澄んだ冷気と朝露の匂いが漂っていた。今日の訓練内容は、輪廻施錠の習得。


 生徒たちの前に立った千弥が、やる気満々の笑顔で手を叩く。


「僕が直接教えるよっ!」


 予想外の宣言に、魔虎が思わず眉をひそめる。


「……え?」


 その隣で脩が苦笑した。


「残念だけど、生憎僕は輪廻施錠が使えなくてね……」


 迅が目を丸くする。


「永瀬先生でもダメなのか……」


 軽い空気とは裏腹に、訓練はすぐに過酷さを見せ始めた。

 すると鬼灯が――


「お前は俺だ!」



 演習場から離れた平原エリア。魔虎は鬼灯に連れられてそこまで来ていた。


 朝日を背に立つ鬼灯の姿は、いつもより厳しく見える。


「で、何すりゃいいんだよ」


 魔虎が腕を組みながら問うと、鬼灯は自分の胸を指で叩いた。


「能力によって違うが、俺の能力の場合、まず全身に炎を巡らせろ。血管の一本、指先の末端までだ。行き渡った瞬間、タイミングを逃すな。その瞬間に全てを放出しろ」


 魔虎は深く息を吸い、目を閉じる。


――集中しろ……集中……全身に……炎を……巡らせろ……


 次の瞬間、魔虎の身体中に熱が籠った。


「ぐっ……!」


 だが数秒も保たない。膝が崩れ、地面に手をつく。


「だはぁっ……!はぁっ……!はぁっ……!たった数秒でこれかよ……!」


 輪廻施錠はかなりの神経を使う。当然、そううまくはいかない。

 全身が焼けるように熱い。心臓が暴れ回っているみたいだ。


「もう一回だ……!」


 ふらつきながらも立ち上がる魔虎。再び目を閉じる。


――今度こそ……やってやる……全神経を……巡らせろ……!


 だが結果は同じだった。体内の熱が制御不能になり、全身が内側から焼かれるような感覚に襲われる。


「がっ……! 心臓が……!鼓膜も……焼け爛れそうだ……」


 ついに耐えきれず、その場に倒れ込む。


 鬼灯は腕を組んだまま、それを見下ろしていた。


――そりゃあ、一朝一夕にはいかないわな



 一方その頃、演習場では他の生徒たちも限界を迎えていた。


 石の床に仰向けに倒れ込んだ迅が、荒い呼吸のまま空を見上げる。


「はぁ……はぁ……キッツ……」


 少し離れた場所で摩稀がうずくまっている。


「無理……頭クラクラする……」


 才牙は膝をついたまま地面を睨み続けていた。汗が顎から滴り落ちる。


「なぜだ……なぜできない……」


 その様子を見ていた千弥が、少し困ったように首を傾げる。


「あぁ、梶くんはね、そもそもまだできないんじゃないかな?」


 空気がピリつく。才牙の視線が鋭く跳ね上がる。


「――なに?」


 静かな怒気が滲んでいた。


 千弥は後ろに視線を向ける。


「ね?血酷」


  振られた血酷が説明を始める。


「体の構造の問題だ。俺の輪廻施錠は、血を使いすぎる。今の器じゃ発動と同時に失血死だ」


 才牙の奥歯が軋む。


「チッ……そういうことかよ」


 拳を握り締め、爪が食い込む。


――なら……まず俺がやるべきことは……



 それぞれが、それぞれの壁にぶつかっていた。


 だが誰一人、立ち止まるつもりはない。


 覚醒の扉は、まだ固く閉ざされたままだった。

ついに"内通者編"終了となります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。