表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔天道  作者: 外野透哉
43/44

第四十三話 ティラノサウルス

ー前回のあらすじ

 内通者は佐藤 清ではなく、川霧 美里へと擬態していたペルソナだった。

そして犬飼 魔虎たちが追い詰めるが…

 ペルソナは、喉の奥を鳴らすように笑い出した。乾いた笑いは、追い詰められた者のそれだった。


「ははは……最悪……」


 次の瞬間、美里の姿をしたペルソナは踵を返し、全力で駆け出す。そのまま迷いなく屋上の縁を蹴り、空へと身を投げた。


「逃げやがった……!!」


 清が叫ぶのと同時に、魔虎も歯を食いしばる。


「この……!」


 二人は屋上の縁まで走り寄り、身を乗り出して下を覗き込む。しかし、そこにあるはずの姿はどこにも見当たらなかった。


「アイツ……庭の植物に擬態しやがった……!!」


――でも……


 魔虎の視界の先、聖与の中庭には、すでに人影が集まっていた。


 迅、才牙、雫、千智、摩稀。


 それぞれが警戒した表情で、庭の一角を囲むように立っている。


――え……なんで……


 植物に紛れたままのペルソナの思考が、一瞬だけ揺れる。


「正直、映像が送られてきたときは目を疑ったが……まさか本当だったとはな」


 迅は腕を組み、低くそう告げた。


「しかも、擬態する瞬間まで見えちゃったしねぇ〜」


 摩稀は軽い調子とは裏腹に、視線は一切逸らしていない。


「行くぞ、佐藤」


「え!? ちょ待っ……!」


 魔虎は返事を待たず、清の手首を掴んだまま屋上から飛び降りる。


「ぎゃああぁぁ!!!」


 落下の直前、魔虎は拳に炎を纏い、地面へと叩きつける。


 烈掌。


 衝撃は大地へと逃がされ、二人は強引に着地する。その場所は、まさにペルソナが擬態していた地点だった。


 次の瞬間、植物の一部が歪み、黒い影が弾けるように姿を現す。


 ペルソナは擬態を解除し、後方へ跳んで攻撃を回避した。


「それが……お前の本来の姿だよな」


 魔虎と千智は、前日に調査した際、その姿をすでに見ていた。


 全身は黒く、異様な質感を持ち、紫色の瞳が不気味に光っている。


「でも……待ち構えてたっていうの……?」


 魔虎はニヤリと口角を上げ、目元に手を伸ばした。


「テッテレー。パート2(ツー)


 コンタクトレンズが外される。


「まさか……!」


「やっと解放された……変な感じ……普段裸眼だから、コンタクトなんか初めてしたわ……」


「……撮ってたの?」


「あぁ。このコンタクト、特殊でな。映像を撮影して、リアルタイムで送信できる。画期的だろ?」


「犬飼からこの映像がスマホに送られてきたときは、正直意味分かんなかったけどね」


 摩稀が続ける。


「そのあと千智から話を聞いて、全員でスタンバってたってわけ」


「驚いたけど……まさか本当だったなんて……」


 雫は信じられないものを見るように、ペルソナを見つめていた。


 才牙が一歩前に出る。


「詰んだんだよ。お前はもう」


「俺らは全員一年だ」


 魔虎は静かに言葉を重ねる。


「対してお前は最上戒。だが……お前の能力は決定打に欠ける」


「擬態はできるが、能力まではコピーできねぇ。筋力や身体能力は擬態したやつそのものになるが、能力使えない以上限界はある」


 魔虎は周囲を見渡す。


「この人数相手に、分が悪いって分かってるだろ?」


 ペルソナはゆっくりと立ち上がった。


「……さすが。ここまで追い詰めるとはね」


 次の瞬間、ペルソナは地面を蹴り、全速力で走り出す。

 全員が息を呑む。


「ッ……!!」


「逃げた……!!」


 千智の声を合図に、全員が一斉に追走する。


――クッソ、一歩出遅れた……!


 清は歯を噛みしめ、必死に足を動かす。



 しかし――


「マジかよ……見失った……!」


 走り込んだ先は、木々と岩が入り混じるエリアだった。


「いや、まだだ」


 才牙は周囲を睨みつける。


「この木や岩のどれかに擬態してるはずだ」


 全員が散開し、手当たり次第に木や岩を殴り始める。


 魔虎も木に拳を叩きつける。


「いってぇ……」


――俺の能力使ったら、この一帯ごと焼きかねねぇ……


「どこだよ!! どこにもいねぇぞ!!」


 迅が苛立ちを露わにする。


「ここまできたのに……!!」


 千智も焦りを隠せない。


 その瞬間――


 才牙が、いきなり清を殴り飛ばした。

 全員が驚き、目を見開く。


「ッ……!!」


「何してんだよ、お前……!」


 魔虎が叫ぶ。


 倒れた清は、ゆっくりと起き上がり、不敵な笑みを浮かべた。


「あれぇ? なんで分かったの?」


「え……?」


「コイツだ」


 才牙の一言で、空気が凍る。


「え……? まさか……!」


 清の身体が歪み、輪郭が崩れ、本来の姿へと変貌する。


 黒い体躯、紫の眼。


「でも……なんで……」


 雫の声が震える。


「私たち、ずっと一緒にいた……そんな隙……」


「あったんだよ」


 才牙は即答する。


「一瞬だけな。佐藤は、あの時……一歩出遅れた」



 数分前。


「……さすが。ここまで追い詰めるとはね」


 ペルソナは走り出す。


 「ッ……!!」


「逃げた……!!」


 全員が追う中、ペルソナは一瞬だけ進路を変え、回り込んだ。


――クッソ、一歩出遅れた……!


 その隙を狙い、最後尾にいた清の背後へ一瞬で接近し、気絶させる。


 そして、その姿を奪った。




「まさか……あの一瞬で……」


「つまり、本物の佐藤は庭で倒れてるってことか」


 魔虎が低く言う。


「はぁ……もういいや」


 ペルソナは肩の力を抜き、笑みを浮かべる。


「ねぇ、犬飼くん。『死体をどうやって消したかは分からなかった』って言ってたよね?」


「あぁ」


「じゃあ冥土の土産に教えてあげる」


 ペルソナの瞳が怪しく光る。


「死体消失マジックの種を」


「なに……?」


「私の擬態はね……現代のものだけじゃないんだよ」


 一同が息を呑む。


輪廻施錠(りんねせじょう)……」


――輪廻施錠りんねせじょう!?


 魔虎が驚き、息を呑む。


古代変化(エンシェントシェイプ)


 背中が隆起し、骨が軋む音が響く。身体は急激に巨大化し、異形へと変わっていく。


 その姿を前に、誰も言葉を失う。


「嘘だろ……」


「大きすぎる……」


「夢じゃないよね……?」


「なるほど……」


 千智が震える声で呟く。


「死体が消えた理由……丸呑み、ですか……」


 才牙が驚いた声で言う。


「これは……」


 魔虎が目を見開く。


「ティラノサウルス!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ