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魔天道  作者: 外野透哉
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第四十話 内通者

ー前回のあらすじ

 犬飼 魔虎は、父親・犬飼 誠司の家へ行く。

久しぶりの団欒のはずが……

 魔虎が自室のベッドに腰を下ろし、天井をぼんやり眺めていると、扉の向こうから軽い音が響いた。


 トントン


 一瞬遅れて、意識が現実に引き戻される。


 立ち上がり、扉に手をかける。


 ガチャッ


 開いた先に立っていたのは、この前知り合った顔だった。


「よっ!元気そうだな!」


 屈託なく笑う清の姿に、魔虎の肩から自然と力が抜ける。


「あ、佐藤!」


 軽く手を上げると、魔虎はそのまま部屋に招き入れた。

 清は部屋に入るなり、慣れた様子でベッドに腰を下ろす。


「どうだ? 三年の授業。やっぱキツいのか?」


 魔虎がそう聞くと、清は大げさに天を仰いだ。


「そうなんだよ〜。ほんとキッツい……毎日死にそうだよ……」


 愚痴を吐き出したかと思うと、次の瞬間、急に目を輝かせる。


「あっ! そういや、うちの学年に新入生来たんだよ! しかもめっちゃ美人!」


「新入生?」


 聞き返す魔虎に、清は勢いよく頷いた。


「そうそう!」


「へぇ……」


 間の抜けた声を出す魔虎を見て、清は笑う。


「とは言っても、俺が三年に上がったのと同じタイミングで来たから、数ヶ月前なんだけどな!」


 そこで、魔虎の中に小さな疑問が浮かぶ。


「でも、一年からじゃないのか? 聖与って、確かこの一校しか無いだろ」


 清は少し声を落とし、身を乗り出した。


「そこなんだよな、問題は」


 視線を泳がせてから、続ける。


「気になって本人に聞いたんだけどさ、実はその子、前に一回聖与を辞めてるらしい。三年の時にな」


「辞めてた?」


「先生にも聞いたから間違いない。それで、もう一回頑張りたいってことで、三年から入り直したって流れらしい」


 少し間を置いて、名前を口にする。


川霧(かわきり) 美里(みさと)って子なんだけど」


「なるほど」


 魔虎は短く頷いた。


――そんな事情があったのか


 その名前が、頭の片隅に引っかかる。




 会議室。


 重苦しい空気の中、秀明が前に立つ。


「集まってもらってすまない。話があってな」


 それだけで、何の話か察した者も多かった。


「なんのことか、大方予想はついてます」


 脩が静かに言う。


「西園寺くん、説明を」


「はい」


 千洋は一歩前に出て、淡々と話し始めた。


「羅墜という魔戒の侵入後、セキュリティはさらに強化しました。しかし、それ以前から聖与の防御は強固なものでした」


 職員たちの視線が集まる。


「それでも侵入を許した。その理由が、どうしても説明できなかった」


 一拍置き、言葉を選ぶ。


「そこで二つの可能性が浮上しました。一つは、セキュリティを掻い潜れる能力を持っていた」


 空気が張り詰める。


「そしてもう一つ。正直、こちらが本命です」


 皆が息を呑む。


()()()の存在」


 その言葉が落ちた瞬間、会議室がざわめいた。


「内通……!?」


「一体誰が……」


「でも、なんで……魔戒に手を貸す人間が……」


「それは、隊員や教員……ですか?」


 脩の問いに、秀明はゆっくり頷く。


「可能性としてはあり得る。だからこそ、こうして会議を開いた」


 視線を巡らせる。


「教員の中にいた場合、こうして全教員集めて会議を開くことが抑止力になる。念のため、生徒にも伝える」


 一瞬、言葉を切る。


「生徒のことは疑いたくはないが、可能性はゼロではない」


「わかりました。やりましょう」


 癒希の返事に、秀明は立ち上がった。


「内通者を、必ず炙り出す」



 翌日。


 教室には、いつもより重い空気が漂っていた。


 脩の口から、内通者の可能性が生徒にも告げられる。


「内通者……」


「マジかよ……」


「生徒の中に……?」


「それはあくまで可能性の話だから、確定ではない」


 不安が広がる中、摩稀が呟く。


「でも、いるかもしれないってことだよな……」


「人間が……魔戒に……」


 千智の声は震えていた。


――裏切り者が、この組織に……

――いや、もしかすると……この中に……!!


 魔虎の視線が、教室をゆっくりと巡る。



 放課後。


 廊下を歩いていた魔虎に、背後から声がかかった。


「犬飼 魔虎くん、だよね?」


 振り返ると、見知らぬ女子生徒が立っている。


「そうだけど……」


――誰だ……?


「私は、川霧 美里」


――あぁ、例の……


「ちょっと話があるんだけど、いいかな?」


「あぁ、まぁ」


 少し考えたあと、魔虎は頷いた。


「やった! じゃあ、屋上行こう!」


「屋上? 学校の屋上なんて開いてるわけ……」


 言い切る前に、美里は歩き出していた。

 魔虎も仕方なく後を追う。


 屋上前。


 美里が扉を開ける。


 ガチャッ


「開いてんのかよ!!」


 思わず声が出る。


 吹き抜ける風の中、二人は屋上に足を踏み出した。


 話とは、一体何なのか……

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