第三十一話 ゲームオーバー
ー前回のあらすじ
犬飼 魔虎は、ついに最上戒の魔戒と対面してしまう。
その頃、斑目 瞬が音波の魔戒を瞬殺した。
そして梶 才牙は、反顛羅に苦戦を強いられる。
「前言撤回だ。相手にとって不足なし」
その声を聞いた瞬間、反顛羅の口角がゆっくりと吊り上がった。獲物を見つけた獣のような、愉悦を隠さない笑みで言った。
「んじゃ続けよう」
――何か手があるはず……何か……
――だが、視界が上下反転してるせいでどうにも……
反顛羅が一歩、踏み込む。間合いを詰める動きに、空気が張り詰めた。
「輪廻解錠――虚実転置」
拳が振るわれる。左から来たと思った衝撃は右に、上から来たはずの攻撃は下へ。殴打の感覚と視界が完全に食い違い、身体が判断を誤らされる。
――クソ……!
才牙は後退しながら、即座に判断を切り替えた。近接では分が悪い。
「輪廻解錠――紅嵐」
血が噴き上がり、殺傷性の高い赤黒い竜巻となって荒れ狂う。周囲の空気ごと引き裂くような威力。
だが――
「あぶねぇなぁ……」
反顛羅の身体は無残に裂け、両腕が吹き飛ぶ。それでも次の瞬間、肉が蠢き、何事もなかったかのように再生していく。
「間一髪」
「残念。核には届かなかったな」
――どうする……また、暴走ギリギリの紅血刃戯を使うか……?
――いや、この状況でそれはまずい……
才牙は歯を食いしばり、思考を加速させる。
――上下が反転してるだけだ。位置そのものは変わらない。上に見えてるなら……少し下方向に攻撃すれば当たる
――ここはとりあえず、血の消費が少ない技で……
「輪廻解錠――断罪ノ剣」
血が形を成し、刃となる。才牙は踏み込み、一閃。
だが、刃はかすめるだけで致命には至らない。
「こんなもんかぁ?」
――クソ……
反顛羅は間を与えない。さらに一段、追い打ちをかける。
「輪廻解錠――裏眼」
「ッ……!!なんだ、これ……」
視界が変わる。上下だけでなく、前後までもが反転する。前を向いているはずなのに、視界は背後を映していた。
――戦いづれぇな……
反顛羅は、才牙の顔を殴る。しかし、感覚は後頭部から衝撃を受けたと錯覚し、身体は前へ崩れる。その勢いのまま腹部に追撃が叩き込まれ、宙を舞った。
――はぁ……はぁ……今度は……腹に……
――能力は自由にオンオフできるのか……
地面に転がる才牙を見下ろし、反顛羅が嘲るように言葉を投げる。
「やはりどれだけ才能があって頭が良くても、結局は経験がものを言う。お前じゃ俺に勝てないよ」
だが、才牙の瞳はまだ死んでいなかった。ゆっくりと立ち上がり、覚悟を固める。
「輪廻解錠……」
「ん?」
「無差別断罪・紅血刃戯……」
――コイツ……!
血の刃が暴風のように周囲を切り裂く。木々は薙ぎ倒され、大地が裂け、反顛羅の身体にも無数の傷が刻まれる。
それを見て、反顛羅は驚いたように、しかし不敵な笑みを浮かべた。
――こいつマジか……面白いやつ……
――死ぬ気で殺すってか?いいぜ、乗ってやるよ……
笑いながら刃の嵐を捌き、反顛羅は一気に距離を詰める。そして、そのまま首を掴み上げた。
血の刃が、止まる。
使える血が、尽きたのだ。
「ク……ソ……」
「いやぁ良かったぞ。だがもう、使える血は残ってねぇだろ」
――こいつの言うとおり……使える血はもう使い果たした……
――これ以上は……死ぬ……
――クソ、クソ、クソ……!! ここまで……きて……
「お前は、もう終わりだよ」
――たまるか……負けて……たまるか!
――俺は……!!
梶 才牙――敗北。
ザシュッ




