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僕は無難にニューライフがしたい  作者: OGRE
拠点の拡充を始めよう
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63ー大地地母神と世界樹からの贈り物ー

 転生後380日ほど経過。なんだかんだあり、世界樹のバーゲンセールが終わった。大地地母神さんの依頼で世界樹の種を僕の縄張りに植え、定着し若木に育つまで様子を見ていたんだよ。新たに持ち込んだ世界樹は全て順調に育ってくれた。まあ、僕達が何かしらせずとも勝手に育ったかもだけど。

 第一の世界樹ユグドラシルは巨大なブドウの木になった。第三の世界樹ウルズパーダは巨大な栗の木。第六の世界樹シュアシラヤは……まだ分からないけど、柿だと思う。第十の世界樹カムイカバラは桃の木っぽい。まだ実をつけていない木は分からないけど、形が特徴的なユグドラシルと種の段階からわかり易かったウルズパーダはお察しレベルだけど。


『あーあー、聞こえてますかー?』

「聞こえてますよ。世界樹の種は全て回収し、僕の拠点に根付きました。虫害や病害の心配もなさそうですし、我が家の植物マニアが毎日楽しそうに生育日記をつけてますよ」

『わー。ありがとうございました! それでですね。我が子を助けていただいたお礼をしたいと思いますが……』

「加護や神器はもう間に合ってますよ?」

『へうっ……。そ、それでしたらば、この土地に豊穣の祝福を授けてもよろしいでしょうか?』

「土地に?」

『はい。簡単に説明しますと……』


 今回のお願いは大地地母神さんのわがままのようなもので、他の神族の関与は一切なかった。なので大地地母神さんだけの神力行使で可能な範囲になる。僕個人に加護や神器を与えるだけというのが一番リーズナブルらしいのだが、僕は現段階でいろいろ抱えすぎているんだよ。大地地母神さんの加護だけ見ても二つ持っているし……。

 大地地母神さんと相談した結果、彼女が出せる土地への加護で一番弱い加護を菜園や農場に施してもらうことになった。

 本来ならば聖地を構えるための加護なので、あまり乱発すると彼女より上位の神族に叱られてしまうそうだ。しかし、今回は聖地を形成するわけではなく、大地地母神さんが関わる作物関係の部分に品質向上のバフがのるだけのごく弱い物だそうで。

 そういう意味では今までの中で一番現実味のある祝福となったわけだが……。そこはもうお察しである。僕は特に何かアクションを起こしているわけではないのだが、僕の周りにはありえない事がよく起きるのだ。……別に望んでいるわけではないのに。


『ただ、それだけではお礼がたりないので、……そうですね。夕方までには準備しておきます』

「あ、いや、別にいいんだけど……」

『神族にもしっかりとルールがるんですよ~! ここでお礼を適量出さなかったら、わたくしが上役に叱られてしまうんです~! 天秤神様は怖いんですよ~……。いじわる言わないでくださあい!』

「天秤神……か。もしかして、裁判とか審判を司る系の女神様?」

『はい〜。とっても怖いお姉様なんですよ……。ふええ……』

『私はそこまで融通の利かない神ではありませんよ。大地地母神さん、私を貶めたいのですか? いい度胸ですね? その胸に全ての栄養が行くから頭がお花畑なのですか?』


 なんか、やたら辛辣な言葉を浴びせるキツい声音が聞こえてきた。そして僕の周囲で神像に祈りを捧げていた皆が硬直している。

 そこに現れたのは涙目の大地地母神さん…全身は初めて見たけど、まさにゴージャスなボンキュッボンの美女神様。……若干、残念な部分はあるけど見た目は間違いなく女神様だ。その背後には眉間に皺を寄せたツリ目で細面な女神様。細渕メガネと小脇に抱えられた分厚い本…長身スレンダーな女神様である。

 何故彼女が現れたのか気になるところだが、まずは長身スレンダーの女神様からの自己紹介。話の流れで察することはできるだろうけど彼女が“審判神”。背中が大きく開いたイブニングドレス調の衣服だからか、背中に彫られた天秤の刺青が凄く印象的。それから足元を見たらこの女神様、ピンヒールをお召になられているではありませんの……。そんでもってスルンストンスルンの…ある意味真っ直ぐな女神様だ。体型も……。


『あまり失礼な事を考えては行けませんよ? 鬼の王。では、私が来た要件ですが、大地地母神さんの言う通り、神族には大きな責任があります』

「それは先程も聞きましたね」

『ええ、ですので、貴方が煩わしく感じたとしても、貴方にも受け取る義務があるのです。それがこの世界に存在する個の権利と義務の関係ですので。私からの助言としては、それをどのように使うかは貴方次第と言うこと。ですから、貴方にはもう少し彼女から受け取っていただかなくてはなりません。大地地母神さんだけでは押し切れない様子でしたので、干渉させていただきました。……それでは私とはあまり出会わない事を願うばかり。お元気で』

『お、お元気で~……』


 キツい印象ではあるが、凛とした雰囲気と強い責任感を持つ女神様だったね。……権利と義務ね。そうやって言われては受け取らざるを得ないか。神族にはそれだけの力を振るうだけの権利が認められる代わりに、払うべき物は必ず払わねばならない。そこにもらう側の意思は関係なく、世界の法則を守る為には必ず行わなければならない事なのだろう。

 その辺りは僕もこの世界に根を張ったわけだし……。ちょっとイレギュラーだけど、僕はウィスプライト神も含めた神族との関係性が深い。恩恵も多大に受けている。だから、しっかりと“ルール”には従っておこう。

 そうやって神殿を後にしようとしたのだけど、聞き覚えのある声が頭の中に響いた。

 張りがあり、キツめの声音は先程出会った女神……審判神だ。その審判神からは僕との繋がりができたので、神像の製作を依頼された……。その対価として、僕に下級の加護と“真贋の魔眼”と言う特殊な権能をくれるらしい。


「またなんか背負わされた気はするけど……。前払いされちゃったし、しっかり作らせてもらいましょうか?」


 審判神の神像を造りに僕の工房兼私室に入って作業をしていたら、タイミングを見計らっていたようになんなん一号が飛び込んできた。なんなん一号ことキャラメル一号が関わることは、たいていが菜園や農場、異界樹の関連だ。加工食品ならキャラ子かメル子のどちらかが来る。

 キャラメル一号にはちゃんと世界樹を4株増やす話はしたし、狂喜乱舞していたはずなのだが……。何かのっぴきならないことでも起きたのか?

 僕は大興奮しているキャラメル一号が語るに任せ、その間に審判神の神像の仕上げ作業をしていたのだが……。だいぶ脇道に逸れた話題がようやっと本題に帰って来たタイミングで、キャラメル一号が亜空間収納ポーチから取り出したそれに目を見開いた。


「ねえ、コレはどの樹から採れたの?」

「異界樹なん! もっの凄い量の聖氣が凝縮されてて、ものっ凄く美味しいなん! 頬っぺた落ちるとかそんなレベルの話じゃないなん! ビックリ仰天でヤバみ満載な美味みなん!」


 とりあえず、僕は初めて見る物には鑑定を使うことにしているので、すぐさまキャラメル一号が持ち込んだ巨大サクランボを鑑定した。その結果が本気で頭を抱えたくなる案件だったのだが……。見なかったことにした。見なかっことにしたというか、そうする他なかった? 鑑定結果は以下になる↓。


 “地母神の贈り物”

 大地地母神が認定した個人が所有する世界樹に生る果実。

 その実は天上の美味となり、その種子を正しく扱えば死者すら蘇生させる霊薬となる。生育条件がとても厳しく、神代の世から現代まで生した実は数える程。膨大な聖氣を必要とし、実るまでに数千年の時を要する。また、種子はほおっておくと世界樹として芽吹く。


 美味い実で種が薬になる辺りまではまあ、いい。だけど、普通なら実るまでに数千年が必要な木の実が目の前にあるんだが? あと、種を薬に加工しなかったら勝手に世界樹が生えるとかヤバすぎるだろ。


「あ、ご主人も鑑定したなん? 凄くお得な実が生ったなん! 僕、凄く嬉しいなん!」

「ああ……まあ……適切に管理してくれたら自由にして構わないよ。ただ、絶対に魔物の森から出しちゃだめだからね?」

「分かってるなん! むしろ1個もあげないなん! あっ、ご主人の気が変わったとかならOKなん!」


 こんなヤバい物を外に出す気はないけどね……。

 とりあえず、審判神の神像を神殿に持ち込むついでに、異界樹の様子を見に行った。最近はあんまり様子見をしていなかったが、成長はほぼほぼ止まっており、枝葉を天まで伸ばす勢い以外は何ら問題ない。ただ、その異界樹の周りを飛び回る妖精族の手には、様々な種類の光り輝く木の実が……。ホント常識が無いらしく、スイカやマスクメロンなども枝にぶら下がっている。異世界に常識を求めるのが問題なのか?

 とりあえず、忙しそうな妖精族には軽く声をかけるだけに留め、妖精族が運んで行く“地母神の贈り物”の行先を見る。

 いつの間にやら立体的な水路が引かれていたらしく、チビセイレーン達が梱包された箱が積まれた小舟を引いたり押したりしながら泳いでいく。彼らも慣れたものだ……。初期は干からびそうになったり、迷子になったりと手がかかった小さな住人だったが、彼女らもそれなりの働き手になった。


「ん? おお、主殿ではないか。今日はこちらに来られたようですな」

「……もしかして、ブルーフィン?」

「ああ、この姿では初めてになりますかな? いやはや、エビ養殖の手伝いでエビを捕獲しておりましたらいつの間にやら……。ピグミーからノーマルのセイレーンに進化致しましたぞ」

「おめでとう。これでまたできることが増えそうだね」

「はい。陸上での活動可能時間が伸びました。それから我が部下からミニセイレーンとプチセイレーンに進化した者が現れつつあります。いずれは繁殖も始まります故、数も更に増えることでしょう」

「ん? セイレーンって血が濃くなりすぎることは無いの?」

「そうですな。セイレーン族は本来ならばメスのみの魔物です。狭いコロニー内ですが、血が濃くとも種が劣化せぬように同型異体の存在を作り出すとお考え頂ければ」


 ブルーフィンが部下のチビセイレーンの様子見をしながら教えてくれた。……実はチビセイレーンは盗み食いの常習犯なのだ。体が小さいので見なかったことにできる程度のものだけど。

 話が逸れたけど、セイレーン族はギンブナみたいな生態らしい。繁殖は有性生殖ながら、生まれてくる子供は雌のクローンとなる。ただし、コロニーに新たなクイーンセイレーンが生まれるには必ず突然変異体扱いになる雄のセイレーンが必要らしい。雄のセイレーンが居るコロニー内で一番力が強い雌のセイレーンがクイーンセイレーンとなる場合が多いのだそうだ。

 それからアランドール氏の所蔵資料にはクイーンセイレーンにも上位種がいると記されている。かなりレアな種らしいので見られるかは時の運次第となる。


「まったく……。連中は本当に遠慮がない」

「ははは……。地母神の贈り物を摘み食いしなければ問題ないよ。チビやミニ程度の摘み食いなら大して気にならない量だしね」

「地母神の贈り物とはこちらの光り輝く果実でしょうか?」

「そう。この土地じゃないと生育条件的に実らないみたいだね」

「なるほど、確かに凄まじい氣を感じますな。……して、これはどれ程美味なのですか?」

「気になる? なら、今晩に皆で食べよう。地母神の贈り物の収穫記念にね」


 結論から言うと、僕のこの判断が更なる変化を呼び込む。特に進化しやすい下位種の魔物達にはかなり大きな変化を与える原因になったらしい。

 地母神の贈り物は単なる果物ではないのだ。世界を睥睨する王妃である樹木が生す天上界の果実だと言うことを甘く考えていた。なんというか、常識のズレと言うか、地球とこちらでの差が大きくて困惑させられる。地母神の贈り物が内包していた聖氣や魔素などの“根源要素”が僕含め、拠点の住民の多くに影響を出していく事となる。

 余談だけど、この地母神の贈り物は凄く美味い。なので拠点の生産加工班が目をつけないわけもなく……。僕が気づいた時には対策のしようも無いほどに僕の拠点内に浸透仕切っていた。果物は水分、糖分、食物繊維と食べ過ぎには注意が必要ではあるが、体にいいのだ。我が拠点では健康食品のように食べられているのでね……。僕が苦労したかと言えばまた異なるけど、こちらの世界からすればまたぶっ飛んだ場所になってしまったわけだよ。このとんでも現象はいつまで続くのやら。

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