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僕は無難にニューライフがしたい  作者: OGRE
拠点の拡充を始めよう
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45ーアトラクション的追い込み作戦ー

 転生後から250日経過。僕が拠点を作ってから初めての大イベントが勃発した。魔物の森の太守と言えど、皆さん揃って頭がいいわけではないようで……。僕の拠点のことをよく調べず、二方向から別々の思惑を持った太守が攻め込んできた。いつもの僕なら面倒くさがっていただろうけど……、今回ばかりは渡りに船。我が拠点に住まう住民のストレス発散のために大いに活用させてもらっている。


「お、始まったな。タマモとザクロの一騎打ちだ。太守級の魔物の私闘なんて不利益しかないからな。絶対やらかさないんだが……。今回は特例中の特例だぞ」

「それは間違いないな。普段ならワシが全力で止めさせてもらう案件じゃが。魔物の森の王が認めたのだ。問題はなかろう」

「それにザクロの方は気づいてないのじゃ。タマモも以前までのタマモじゃないのじゃ。この拠点にただ居るだけで、割かし簡単に強くなれるのじゃ……。テコ入れされたタマモと絶体絶命状態のザクロなのじゃ。バカなわらわでも結果は分かるのじゃ」


 カナンさんはその辺をあんまり気にしない方がいいと思うが、タマモさんとザクロの力量差はまさにそんな感じ。この拠点の生産物は魔素を豊富に含み、魔物にとっては非常に良質な食事なんだよね。だから、ただ飲んで食べるだけでもそれなりに強くなれると言うのもあながち間違いじゃない。

 ただタマモさんもただ食っちゃ寝してるだけではないんだよ。彼女は彼女で変わったのだ。僕との会話がきっかけではあるけど、妖術を研究し研鑽を積むことを忘れない勤勉なところがちゃんと実を結んだ。以前のタマモさんの妖術なんか比にならない精度と効力をしている。それは間違いない。

 タマモさんとは楽しく遊びながら術練度を上げた。だるまさんが転んだとか、鬼ごっこ、かくれんぼ、単純に追いかけっこに鬼火のキャッチボール……。やってることは子供のお遊びとホントに変わらないのだが、これが意外と効果が非常に高かった。だるまさんが転んだは“分身の術”の精度を急上昇。鬼ごっこでは速力強化の“転速の術”と分身の術の併用。かくれんぼでは“隠遁の術”を。追いかけっこでは全身強化術の“剛身の術”を長時間持続させる訓練として。鬼火のキャッチボールに関しては別にこれと言って指定の術ではないんだけど、妖術全般の精度上昇にかなり有効な方法だった。


「あ゛あ゛ん? あんのめ~ぎ~つ~ね~ッ! アタシの知らん間に一人だけキャッキャウフフとか……。絶対に許さんッ!」

「まあ待て待て……。それはあくまで術の訓練なんじゃろ? おそらくタマモには他意はないはずなんじゃ。ちゃんとタマモの話も聞いてやらねばならんじゃろう?」

「……二人ともほどほどにしてあげてね」


 管理用監視魔道具でタマモさんとザクロの様子を見ているが、タマモさんもこちらでブチ切れているヴィエラさんと黒い笑顔を見せているサンドラさんからの狂気に、尻尾を逆立ててビビッていた。どこに怒る要素があったのかは不明だが、とにかくタマモさんに対して何か言いたいことはあるんだろう。僕は深掘りすると面倒そうだから、当たり障りない言葉で流しておく。

 気を取り直してタマモさんとザクロの一騎打ちを見ていこう。

 タマモさんは物理攻撃はあまり得意ではない。基本的には妖術により攪乱し、決め手を確実に打ち込む一撃必殺が最も効率のよい戦い方になる。それが取れない相手になると、妖術で相手を攪乱し、精神的ダメージや幻惑系の術で自滅を誘うなどの搦め手で持久戦を選ぶ。今回の相手であるザクロは上半身が女性、下半身が蛇という魔物で、攻撃、防御、回避の全てにかなりバランスの良い戦闘スタイルをもっている。蛇の下半身が特徴的で、蛇が持つ独特なフットワーク?はとても強力なんだよね。足回りが強い戦士はその分だけ基礎もできあがってるし、攻撃の手数も多く読みにくい。


「まったく、敵地のど真ん中で孤立してなお、アチキには敵対心バリバリとはのう……」

「つーかなんでお前がここにいんだよ! ここは最近立ち上がった鬼の派閥が牛耳ってる縄張りだろ?! まさかもう手を組んでアタシを陥れようと!」

「いや、お主じゃないんじゃ。アチキはそんな無駄なことはせんよ。じゃが……、これまでの嫌がらせの分はのしをつけて返させてもらうから…覚悟せえよ?」

「ヒッ!?」


 タマモさんが分身の術で自身を大量に作り出す。本物は中に一つしかないけど、分身の攻撃力は本人とほぼ同じで、影分身の術とは異なり物理判定がしっかりとある。僕と一緒にだるまさんが転んだをずっとしていたのは、分身の術で生み出す分身の制御力を高めていたのだ。分身の術で作り出す分身をしっかりと制御できないと僕が分身を攻撃して潰すって言うやり方だね。かなり頑張らないとだるまさんをしている僕に到達できないので、かなり必死に頑張っていた……。

 そのタマモさんが制御する分身はどこからか僕が用意していた便利グッズを取り出し、様々な攪乱の妖術を繰り出してザクロさんを牽制しながら罠を仕掛けていく。

 あの便利グッズは別に対ザクロのために作ったわけではないのだけど、おそらく彼女に対してはドンピシャだろう。がっつり使われたらホントに手も足も出ずに負けに追い込まれるだろう。……いや、脚は出るか?


「なッ?! なんじゃこりゃあああああああッ!!? アタシの自慢の脚が! 醜く能力の低い人の脚になっただとおおおおおおッ!!!!!」

「オオ……。本当に強力じゃな。アチキの変化の術も無効化するし、使い方を考えればこのように使えるとは聞いていたが……。これで自慢の脚を封殺できたのう! うしゃしゃしゃしゃ! どう料理してやろうか? 扱い慣れぬ人の脚で万全なアチキとタイマン張れるかのう? うん? どうじゃ? ううん? ぐふふふふ……」


 前から思っていたけど、どっちが悪役かホントに分からないよな……。

 それからは本当に酷かった。血みどろの戦いになるとか、熱いバトル展開なんてものは無く、一方的な蹂躙劇となった。蹂躙劇というか、前にも似たような展開を見たことがあるんだよね? ボコっている人物とボコられている人物は異なるけど、やり口はほぼ同じ。既視感しかないが、僕は監視魔道具から送られて来る映像からそっと目を逸らした。血みどろの私刑も見るに堪えないとは思うけど、ああいう類いの私刑も僕が見るにはちょっと刺激が強い。そうとう溜まっていたのか、タマモさんは楽しそうにザクロを攻める。どう攻めているかはR-18ワードが出過ぎるので、僕からの明言は避けた。

 それから女性陣の皆さん……。面白そうに見ているのはいいですけど、そろそろお仕置き対象がザクロからライゴウに切り替わりますよ? 監視魔道具も別の物に切り替えますんで、そっちが見たい人はこちらに集まってくださいね。


「お、ついにビリビリ虎の仕置きが始まるのか?」

「かなり頑張って門前で持久戦してくれてましたけど、雷虎の戦士の多くは戦闘不能状態です。動いているのは精鋭の雷虎の戦士だけみたいです」

「では、例の術式を作動させるのか?」

「ええ。強制転移陣を起動します。各員、巻き込みに注意するようにい~」


 注意する方向が違うんだよなー。ライゴウと数名の雷虎の戦士が強制転移陣によって、ザクロと愉快な仲間達と同じようにダンジョンエリアの中間層に放り込まれた。ただ、一緒に巻き込まれに行った身内が全部で18名程居る。もうわざとらしい歓声を上げながら、強制転移範囲に入り込んで一緒に転送地点に飛ばされに行ってたんだよね。

 『あーれーなんーwww』とか『足が滑ったじゃーんwww』とか『これって本当に反応するんだな?www』とか……。この辺りまではわざとらしくはあるが、一応事故を装っている。しかし、最後の方になると『レッツパーリィタイム!』なんて完全に遊びに行く感じで飛び込んだ奴らもいる。

 そして、転移陣によってダンジョンエリアに飛ばされたライゴウ一行と、同じ部屋にレオパード部隊とファットテール部隊…総勢18名の幼児みたいな鬼が大集結。先ほどまでボコすか強力な魔法や物理攻撃を撃ち込んで来ていた連中がね。真横に等しいあんなに近くに居ればビビり散らすのも当然。ライゴウ一行はかわいらしく右手を上げ、『やあっ!』と挨拶をした二部隊を見るや絶叫を上げて逃亡を開始した。彼女らからしたらば絶体絶命の逃亡劇。二部隊の隊員からすると超楽しい追いかけっこの始まりだ


「わーい! 追いかけっこなーん!」

「どれくらいもつじゃーん? 追い立てるじゃーん!」

「とっとこ走るんだなー! 逃がさないんだなー!」


 それから追走者は生産二部隊だけじゃない。今回はもうメインゲストが待ちきれずに転移陣を使ってどん詰まりの部屋に待機しているので、ライゴウをあの部屋に追い込む必要がある。なので、創黒羅刹の面々を適度に分隊して配備し、追い込み作戦を仕掛けているのだ。

 見た目は美人さんだけど、ペロ助レベルの身体能力をいかんなく発揮し、彼女らも凄く楽しそうに追いかけている。実に楽しそうだ。

 ちなみに彼女らには今回は訓練という事にしてあり、武器使用禁止で分隊された一部隊あたりで雷虎の戦士を拿捕した人数分だけ褒賞を出すと言ってある。アトラクション性を高めるため、お邪魔キャラのレオパード部隊とファットテール部隊が参戦しているが、僕としたらば楽しんでくれているなら何でもいい。

 ……ただ、美人の娘さん達が発するにはね。ちょっとドスの効き過ぎた怒声が響いているのは非常に気になる。可愛い感じで追いかけまわしている生産二部隊とのギャップもあるので、かなりお嬢さん達の恐ろしい怒声が際立ってマジで怖い。いくら美人でもあんな迫られ方だけはされたくない。


「待てやごらあ!!」

「おらあ! 逃げんなワレエェ!」

「人様の家に断りも無く侵入するとかどない落とし前つけるつもりじゃおらあ!」

「大人しくお縄につけやこらあ! アタイらが捕縛数トップを飾るんじゃああ!」

「おん?! 抜け駆けは許さへんぞおらあ!」

「おい! チビ共のが捕まえる手際がええぞ! 仲間割れなんぞしとる場合とちゃうわい!」

「「へいッ! アリシアの姉御! 全力で取っ捕まえやすッ! 待てや虎公おおおおお!」」


 純粋に追いかけっこを楽しんでいる生産二部隊と、捕まえることに必死な創黒羅刹のお嬢さん達。空気感は二色に色分けされたが、逃げ惑うライゴウ一行からすれば迷惑この上ないだろう。本当はここにペロ助も参加したがったのだが、ここにペロ助を投入したらライゴウすら予定しているどん詰まりまでご案内することが叶わないだろうから……。

 ちょっと競争意欲を高め過ぎたかもしれない。創黒羅刹のお嬢さん達がガチすぎる。ライゴウ一行の減りが速過ぎてこれ以上の虐めると本当にライゴウも打ち取られてしまう。

 それは少々困るので、途中で指示を出して創黒羅刹のお嬢さん達には追い込み訓練に作戦変更。そういう作戦の意図を理解してくれないお祭り大好き元爬虫類たちはどうしようもなかったが、元から生産二部隊は捕まえるよりも追いかけっこをするのが楽しいようなので……。なんとか“雷槌の太守ライゴウ”だけは指定の部屋に追い込むことができた。


「よーう! 久しぶりじゃねえか。ビリビリ虎」

「あんっ? テメーは北の氷狼じゃねーか! なんでテメーがここにいんだ?!」

「っとに……。相変わらずその頭は飾りか何かなのか? バカはどこまで行ってもバカだな。そんなの決まってんだろ? アタシはここの新しい太守……“王の太守”と仲がいいんだよ。アタシもお前みたいなバカが身内に手を出さねーなら無視を決め込んでたが……。いい機会だろ? ここいらで互いの立場ってもんを明確にしとこうと思ってなあ!」


 ヴィエラさんが魔法や聖法を使う事はあまりないけど、彼女も術法を使わないことはない。ただ、あまり術法での迂遠な駆け引きや、牽制のような戦術を好まない彼女が使う事は稀なんだよね。それでも感情の上下で彼女の体から魔素や聖氣が漏れ出すことはある。今の彼女は相当興奮しているようで、彼女の周辺の気温がどんどん下がり、靄が沸き上がっていた。

 僕もそこそこ長い付き合いになって来てはいるんだけど、ヴィエラさんとの模擬戦の経験はないので実はかなり興味がある。

 何度か模擬戦をしたことがあるミラさんとゼラさんからは、二人でかかっても勝てないと言っていたので、相当な強者だと思うのだが彼女の戦闘スタイルは手加減してくれている時の物しか見たことが無いのだ。武術や体術の方面では確実に僕よりも秀でているので、彼女の戦闘スタイルはぜひ見て見たい。


「そんじゃ、ラウンド1と行こうか?」

「くっ……。こんなせめーところで……ぐぼあっ?!」


 これは圧倒的……。ヴィエラさんの体が一瞬ブレたと思ったら、武器を構えて警戒態勢だったライゴウの右頬をヴィエラさんの拳が捉えていた。なるほど、いつもはどっしりと沈めた重心をいつもはこういうふうに動かすんだ。勉強になりますな。…ただ、一撃ノックアウトされてるライゴウが凄い気の毒。一応彼女もそこそこ美人の女性なのだ。それから女性同士の私闘ってこんなにも怖いもんなんだね。ちょっとこれは別の意味で目をそむけたくなるよ。

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