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僕は無難にニューライフがしたい  作者: OGRE
拠点の拡充を始めよう
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46ー太守達とのやり取りー

 転生後250日が経過。僕の拠点に住んでいる住民たちは刺激に飢えているらしい。それを強く感じる一日だったと思う。それから女性同士のガチ戦闘って本気で怖い。それなりに手加減していただろうヴィエラさんだったけど、南西に座す太守であるライゴウは誰かタオルを投げてあげて欲しいレベルでボッコボコにされていた。

 その後は今回のヤラカシ太守の二名、“薬毒の太守ザクロ”と“雷槌の太守ライゴウ”は女性陣に連れていかれ、何かしらそれかしら刷り込まれたのだろう。いつぞやの痴女キツネさんよろしく、ボロカスにされた上で全裸土下座会となっていた。……なんでか、タマモさんが二度目の土下座回になってるけど。

 やはり二人とも衣服は魔力や聖氣で構築しているようで、ボロボロの状態ではそれらを構築している余裕もないようだ。それなら拠点で用意している服を着せればいいのでは? と思うのだが、他の太守組からすると別の考えがあるらしい。なんでも無駄な自尊心があるから魔物の森で最強クラスの僕?に喧嘩が売れたという認識なのだそうで。その自尊心を欠片も維持できなくすることで、二度と同じような愚行を引き起こさないようにさせるのが主目的なのだそうだ。


「ま、まことに申し訳ございませんでした」

「二度と御身を軽んじることは致しません」

「一人でキャッキャウフフしてごめんなさい。今度から皆と情報共有します」


 タマモさんの全裸土下座テイク2はよくわからなかったけど……。

 まあ、とりあえずここまで尊厳も何もない状態にされているなら、僕がこれ以上どうこうしようと言う気はない。ただし、しばらくは他の太守の面々からいろいろ説明を受けて欲しいとも思う。僕は僕でいろいろやるべきことができたこともあり、いつまで続くかわからない私刑にお付き合いする気はない。ちょっとダンジョンに修正箇所があるので、いくつか急いで修正したいのだ。

 ……こんな感じで僕が関与しない。お客さんではあるのだが、自薦もありサンドラさんを中心にした太守の面々にヤラカシ太守の面倒は任せた。

 僕としては作りたいから作ったダンジョンを利用するため、強制転移陣をトラップとして随所に配置した。しかし、あまり効果的ではないと判明したのだ。実験的に敷設した面も否定はしないけど、それにしても追い込み班を動員してそこそこ動かないと誘い込めないのは問題だ。ダンジョンの設計とデザインは僕の担当なので、いろいろ位置を修正したい。結構大規模になると思うので、ファットテール部隊のノーマル班も動員し、位置関係や効率を求めた設備運用を考察した。


「うむ。あまりワシとは面識はないが、ここの恐ろしさは体感できたか? 小娘共」

「うう……。まさかあんな辱めを受けるとは」

「それよりもあのダンジョンは何なんだい? 本当に酷い目に遭ったよ。それからサンドラの姉御までここに居るってことは、それだけ強力な存在なのかい? あの鬼の太守は」

「そうじゃのう。普段はアチキらのことを考えて氣を抑制してくれておるから気づけんのやろう。いちどはあの氣の大波を受けてみるとええかもしれへんわあ」

「むしろよく何も調べずにここを攻め込めたものだ。本当にお前達は命拾いしたぞ? ユウゼン殿は荒事を好まんからこの程度で済んでおるが、本来ならばこのヤラカシはシャレにならんぞ?」


 僕がダンジョンの改築から帰って来ると、太守の皆は食堂で食事会をしていた。いや、食事はついでか。情報の共有と、この拠点がどういう所かを教え込むのにちょうどいいから、案内して食事を始めたんだろう。ちょうどいいので、僕もその環に加わる。

 ファットテール部隊のノーマル班は食事会にはあまり興味がないようで、生産道の鍛冶工房へ向かったんだろう。階下へ向かったからほぼ間違いない。

 僕を見つけると一瞬ビクッとしたライゴウさんとザクロさんだが、他の太守はいつも通り迎えてくれた。展開が怒涛のような状態だったので、あまり紹介されていないが、雷槌の太守ライゴウさんは聖獣に属する血筋だそうだ。タイプとしてはヴィエラさんに近いのだが、ヴィエラさんとはまた違い、肩と太ももの筋肉が凄い。槌を扱うからだろうけどよく鍛えている。身長は小柄な方で160㎝程度で、顔立ちも童顔なことからまたタイプの違う女性だ。

 ザクロさんは若干タマモさんとキャラ被りしてる面は否めないが、身長は圧倒的にザクロさんの方が高い。なんでもキャラ被りしているのがコンプレックスらしいので、あまり指摘しないようにしよう。


「皆ここに集まってたんだね」

「雑談をするにはちょうどいいのでな。ユウゼン殿は所用は片付いたのか?」

「そうだね。今回の実践でなんとなく効率の面で悪かったからさ。強制転移陣の位置だったり、転送先の変更だったりとかいろいろ変えたよ」

「そうか。貴殿もその辺りマメよのう。別に貴殿の城に攻め込むアホウはそうそうおらんて」

「うっ……」

「サンドラの姉御……あんまり虐めないでくれよ」

「いやあ、アレは僕の趣味みたいなもんだしね。気になればこれからも随時更新してくよ。カナンさんはちゃんと渡してある地図で確認してくださいね」

「わかっておるのじゃ!」


 この魔物の森の太守の内6名が既にここへ集まっている。一部の太守はやらかしているけど……。

 その辺りも話しておく、僕は称号に“魔物の森の王”という物と“王の太守”と記されている。だけど僕自身はこの拠点で無難に生活できればいい程度の考えしかないんだよね。全然王様らしい事なんてしてないし。

 最近は神族からの神託や直接の交信は無いので、平和だが……。平和過ぎてちょっとした問題も浮き上がって来ている。そういう意味でも、サンドラさんやカナンさんにはちょっと相談させて欲しい点があるのだ。あと、ちょうどいいのでザクロさんとライゴウさんの縄張りに関してもいろいろ聴いておきたいことがある。主に彼女らが必要としない資源の情報関連だけど、まずはカナンさんの縄張りに採掘班を送りたい。ちょっと血の気が多くなってきている女性陣に外の仕事を任せてみたいのだ。もちろん、僕の縄張り外部に出すのはある程度戦力として信用できる人員になる。


「おお! ついに取引の話なのじゃ! まっておったぞ!」

「ええ。食料は肉や魚関連の方がいいですか? カナンさんもかなり肉を気に入っていたみたいですが」

「いや、わらわとしたらば肉だけでなく果物もあると嬉しいのじゃ。果物はすぐさま力に変わる。肉は確かに体を作るが、肉だけではな……」

「わかりました。その辺りの物品はどうやって運びますか?」

「それはわらわの部下を呼ぶのじゃ。その者の方がわらわよりもその辺りの選定にも詳しいのじゃ」


 カナンさんも僕の拠点に来るようになって少し経つけど、交易の話はまだ進んでいなかった。いや、話そうと思えばいつでも話せたんだけど、カナンさんからのコンタクトを待っていたのだ。ただし待っていても相手からの動きはないので、僕から切り出すことにしたんだよね。

 カナンさんの縄張りのことについてはかなり期待している。とくに鉱産資源についてね。

 切り立った山ばかりで植物も少なく、生態系もかなり独特。時たま鳥型魔物は飛んで来るが、それだけでは縄張りの維持もできず、困窮していたところに僕達が現れたわけだからね。この話題に横槍は入れないが、興味を持っているのはザクロさんとライゴウさん。本来、魔物と言うのは異種族間での協調や共立などは考えること自体稀だ。だけど、僕はそうは思わない。ギブ&テイクはもちろんのことだし、種族が違えど見ている先が同じなら、どの程度かは別にして手を取り合うのは悪い事ではないと思う。

 あからさまにいがみ合うだけでは解決しないこともあるし、場合によっては無理な人助けで共倒れなんてこともあるのでその辺の塩梅は見極めねばならないけど。縄張り間というか、種族間の付き合い方というのは、一様に決まって来る物ではなく、時には前例を破壊して新しい歩み寄りの姿勢を持つことも必要なのだ。


「ほーん……。ホントに変わってんな。アンタ」

「これまでの魔物の社会にはない発想を持つことは否定しないよ。だけど、魔物だろうが人類種だろうが、生き残るために新しい体制を受け入れることも必要なことなんだと思ってるだけさ」

「ユウゼン殿は稀人だからな。そもそもの価値観が私達とは違うのだ。私もここで多くのことを学んだぞ」

「なるほどなー。なあ、カナン姐さんとも取引するんならさ。アタシのとことも取引してくんね? アタシはその辺詳しくないから、そういうのに詳しい部下を今度連れてくるからよ」

「それはアタシもお願いしたいわ。ここの食事は美味しいし、いろいろ気になってることも多いのよね」

「僕は構いませんが、他の太守との折り合いはしっかりつけてくださいよ? 僕の縄張りが原因で喧嘩したとかは無しですからね?」


 ヴィエラさん、タマモさん、サンドラさんは苦笑いしているが、実際の所ここだって生産力には限界があるのだ。ここから何でもかんでも持ち出せるわけではないし、僕達だって自分達が食べるために生産している面ももちろんある。だから、相談は必要だし、話し合いの末に突き詰めることは必要最低条件だ。

 ライゴウさんの縄張りは彼女の部下を派遣してくるとのことで、後日交渉する。ザクロさんに関してはザクロさんや蛇尾の一族が継承し続けている薬学と、レオパード部隊が行っている製薬と薬術研究の知識共有をしたいそうなのだ。ザクロさんの縄張りでは特殊な環境下を生き残るため、独自の文化を発展させた。彼女の一族が継代して伝え残した薬品の知識を持っているのだ。太守としては特殊な部類と僕は感じる。その辺は担当者と後日に顔合わせをする時間をつくることで合意。

 再びカナンさんの方に戻るのだが、今日は以前に彼女にお願いしていたサンプルをもってきてもらっでいる。彼女の縄張りで採れる鉱石類のサンプルだ。一番重要なのは岩塩。やはり生きていくには塩分は必須だからね。それから次に取り出された金属に僕は心躍った。仄かに橙色の光を放つ魔法鉱石の一つ。“ヒヒイロカネ”だ。これもいろいろ使い道がある。ミスリルやアダマンタイトもあるが、ミスリルやアダマンタイトはヴィエラさんとタマモさんの縄張りの物の方が品質がいい。なのでその二種は見送りとした。


「それにしてもこのような石ころが食料に変わるとは驚きなのじゃ」

「それは少し違いますよ。僕達はあくまで利益があるので交換しているんです。相互的な利益を考え、縄張りの共存を考え、双方が折り合える地点を見極めるんです。これが互いに易のある交わりを持つこと。交易ですね」

「うむうむ。ユウゼンの考え方は優しいから好きなのじゃ。魔物は知性こそある者も多いが弱肉強食の理念が強く、基本的に交流を行おうと考える者の方が特殊なのじゃ。この中央の土地は我ら八大太守が交友を持つ上でこの地は実に都合がいいのじゃ」

「ははは……。縄張りの仕事はちゃんとしてくださいよ?」

「それはもちろんなのじゃ。ちゃんと仕事をせぬとサンドラに怒られるのじゃ」

「そこはワシに怒られずともしっかり働いて欲しい物だがな……」


 サンドラさんは苦労人なんだな……。まあそれはそれとしていいんだけど、カナンさんの言う事も現実味がある。この森に存在している太守は残り二体。西に縄張りを構える“焔戟の太守ゲイ・ボルグ”と、北西に縄張りを構える“水貫の太守ブリューナク”だ。この二太守が僕にコンタクトを取ってくる可能性はゼロではない。どの様な動きをしてくるかは未知数だけど、友好的な態度なら僕は特に問題なく受け入れようと追っているけど……。


「残りの太守はどちらも曲者故な……。特に西のはワシにも喧嘩腰の暴れん坊じゃ。実力云々ではなく、戦うのが好きなようでのう」

「ペロ助みたいですね。まあ、ペロ助はTPOは弁えてますけど」

「てぃーぴーおー? ああ、まあ、ペロ助殿は場を弁えることはできるし、あの御仁は部下思いの心篤いおのこであるがな。西のは……勝とうが負けようがどっちでもいいと言わんばかりに実力差も考えず戦いを挑んで来る。何度となく注意したのだが……面倒になってワシも長らく会っておらん」


 かなり面倒見が良くて気の長いサンドラさんが匙を投げる暴れん坊ね……。

 ただ、西の“焔戟の太守ゲイ・ボルグ”は縄張りから出てくることはないそうなので、面倒なら触れなければいいだろう。それから北西の太守もクセの強い存在である事は確からしく、余程の事が無いと面会すら渋るそうで……。本当にクセが強いな。まあ、僕もこっちに影響が無ければなんでもいいけどさ。

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