44ー僕が魔改造した最凶の魔晶湖の遺跡ダンジョン!ー
「ひ、酷い目に遭ったのじゃ」
「いや、カナンよ。アレはお主が軽率すぎる。ワシ、説明したじゃろ? あの鬼畜ダンジョンを設営するような男じゃ。絶対に何かあるに決まっておるじゃろうて」
「うむ。わらわの頭の悪さが露呈してしもうたのじゃ……」
「いや、お主が脳足りんなのは大概の者が既に知っておるぞ?」
転生から240日程。これまでいろいろあったけど、今日は久々に皆で楽しんだ。蒼穹の太守リンドブルムのカナンさんがやらかしてくれたので、魔物の森でダンジョンかくれんぼ大会が実施された。僕が魔改造しているあの魔晶湖の城塞ダンジョンは、僕が作った特別な魔道具をもっていないと正しい道が分からない。その上に様々な嫌がらせが満載のダンジョンだから、早急に出ないと気が滅入るし体調が悪くなる。
そんなダンジョンなんだけど、それこそただたんにそこにそういう場所があるから作った作品と化していた。ダンジョンがダンジョンしてなかったんだよ……。
だから、起点の部分に凄く初歩的な仕掛けを作ったんだよね。強制転移罠っていろんなゲームにあるよね? なので僕もゲーム感覚で強制転移聖法陣第一号を設置したんだけど……。まさかの似非幼女さんがつま先でさ、ちょんっとやってくれちゃったんだ。そりゃ強制転移型の魔法陣なんですから、接触すれば強制的にダンジョンインさせられちゃいますよね?
「それで強制転移陣はどこに配置してあるのだ? ワシらや来客が踏んでしまえば二の舞じゃろ?」
「それにかんしては大丈夫ですよ。僕が設置してある聖結界と地図連動魔道具から、敵認定されていなければ強制転移陣は反応しないので。僕の縄張りに入った時に敵意が無ければ、ダンジョンに直通の分かり易い強制転移型の陣は発動しないので」
「なるほどのう。それならばワシらの身内は安心じゃ。カナン。お主は二度と興味本位でこやつの製作物に触れるでないぞ?」
「分かったのじゃ! わらわも頭は悪いが学ぶんじゃぞ!」
「あ、フラグ立ちましたね……」
残念ながら縄張りの内部の関係者でも強制的に反応する事案がある。なので、先にカナンさん個人にしか起動できない地図魔道具を渡した。この魔道具をもっていれば、僕の拠点内の強制発動型魔法トラップに近づくとうるさく警告音が鳴る。僕の拠点の内部にはお客さんが入っていいエリアと、入っちゃいけないエリアがあって関係者以外立ち入り禁止になっている。もちろん許可があれば入れるけど、そういう強制発動型魔法トラップはけっこう多いのだ。カナンさんが事細かに覚えてられるとも思えないし……。これが最善策。
……と、思ったんだけど、彼女はこの後何度か強制発動型トラップに何度も引っかかることになる。なんでちゃんと事細かに設計したトラップ回避用のマップの指示に従わないのかと悩んだものだが、これが彼女の個性だと諦める他ないのだろう。こういうのをなんて言うんだっけ? 鳥頭だっけか?
~10日後~
転生後から約250日が経過。カナンさんの大捜索イベント以外は特に大きな変化などは無く、レオパード部隊のブラックナイト班が苦労して大型の魔導炊飯器や給湯器を作り上げたりもしたけど……。拠点の全員を動員するようなイベントは基本的に大捜索イベントしかなかったな。発明品ができあがると一部の層が非常に喜ぶんだけど、あくまでも一部の層であって拠点全体を沸き立たせるような事案にはならないんだよね。
そんな刺激?に飢えた拠点のメンバー。特に狩りに出たり、拠点の防衛に参加しているメンバーなんかは飢えている。別に僕はそういうふうになって欲しいわけではないんだけど、最近では元夜の蝶メンバーすら意欲的に狩りに出たりもするからちょっと怖い。何か起きそうで怖いんだよね。
なーんて思ってたらば、そんな拠点メンバーが狂喜乱舞するようなイベントが自ら到来してくれた。先に言わせてもらうけど、自作自演ではない。蟻型ゴーレムを使って防衛訓練とかすることも考えてみたりしたんだけど、それ以前に二地点から同時多発的、しかも別口の挑戦者?が到来したので、拠点メンバーはマジで狂喜乱舞している。ミモザさんまでショートソードを掲げて小躍りしてるし。何なんだろう、この風潮は……。
「ほう、それでこのような騒ぎになっておるのだな? どこぞの鳥頭がまたトラップにかかったかと思ったぞ」
「いや、カナンさんはちゃんと目の前にいるじゃないですか。それにちゃんと彼女も学習はしてますよ? 一度引っかかったトラップには二度は引っかからないので」
「……のう、ユウゼン? それはわらわを褒めておるのじゃ? けなしておるのじゃ?」
「最近ではモヒカンチキンにもなめられているからな、お察しじゃね? あと、そのカナン姐さん以上のアホはどんな感じなんだ?」
「アチキの妖術でも観測しておるが、二方向から別々の指向性をもってこの拠点に攻め進んでおるのう。縄張りの一部でも奪い取りたいのじゃろうが、浅はかやのう」
今回、僕らの拠点がお祭り騒ぎ状態なのは、この拠点への明確な攻撃意志を持ったメンバーが一直線にこちらに向かっている。拠点内部のメンバーは最近は刺激がすくなく、カナンさんをわざと罠に追い込むようなメンバーすらいた。流石にモヒカンチキンに追い込まれるのは哀れだったと思う……。
そこに急な緊急クエストが到来! 皆沸き立たないはずがない。
既にペロ助率いる狩猟班が南西方向へ布陣。そちらから一直線に向かって来ている、“雷槌の太守ライゴウ”を追い込むため、既に部隊を展開している。ペロ助も有能な指揮官になっており、自分で育てた聖騎士や女性の神殿騎士、元夜の蝶たちを配備してあちこちで襲撃をかけて効率的に追い込んでいる。我が拠点にはオオカミ騎兵という兵種が居る。ミモザさん率いる元夜の蝶のメンバーが拠点に住み着いた魔物でないオオカミに騎乗し、投擲武器を巧みに用いて大物すら狩るような戦力になっているのだ。
「これは哀れじゃのう……。まさにペロ助殿の思うがままじゃ。オオカミ騎兵と偵察キツネ部隊の合わせ技はこれ程か」
「うむ。個の力が弱くとも敵の的確な位置と移動方向を抑え、偵察による情報収集からの強襲。これほど決め打ちされてはライゴウのアホでも哀れにみえるわ」
「そういえばヴィエラさんとタマモさんはライゴウという太守と面識があるのですか?」
「うむ。一応あるぞ。私は一方的に敵視されているがな。どこかの誰かさんのようにつき纏って嫌がらせしてくるようなことは無かったが…な」
「ぶふッ! もうあのことはいいではないか! 禊は済んだであろう?」
「冗談だ。だが、反対側のアホも大概だな」
「うむ。それは同感だ」
北東に縄張りを持つ“薬毒の太守ザクロ”も、もう一つの追い込み部隊である太陽部隊に追い込まれている。反対側の隊を太陽が指揮している。あちらは元から戦力に数えられている聖騎士や男性の神殿騎士、元からの戦闘経験者だ。地の戦闘力が非常に高いので、わざわざ作戦を立ててまで追い込むことはない。中でも能力が高いのは聖騎士マリアントワさんを始めとした聖騎士集団。それから元犯罪者組織に所属していたガンテツさんも、久々に体を動かそうと拳を振るっている。力技で北東の縄張りに住んでいるゴルゴン族、メドゥーサ族、ラミア族の三族を追い立てていく。うん。両部隊とも完全に包囲戦と追走戦の流れだ。
魔道具連動地図の動きを見ている限り、これはもう積みだと思う。迂遠な作戦を使っていない太陽部隊の方が先に定点に追い込むのは早い。もうすぐ僕が拠点外部の定点に仕掛けた強制転移術式トラップに到達する。
ペロ助部隊の方は拠点正面側へ追い込んでいるので、非常に面白い事になると思う。拠点正面の防壁上には既にレオパード部隊とファットテール部隊が待機し、ライゴウ到達を今か今かと待っているのだ。ペロ助達に追い込まれるだけでも絶望だと思うのだが、相手は僕の拠点を調査しようとしたのだろうか? トラもヘビも縄張りに侵入したとは地図にも表示されてないし、狩猟班の誰からもそれらが増えたとは聞いたこともない。……つまりろくに調査せずにこの拠点に突っ込んで来たんだな。これは情け容赦ない制裁コースで問題ないだろう
「それじゃ、追い込み班がそろそろトラップに追い込むから。ダンジョン内部隊の皆も楽しんでね」
「「「「「「「「「「わーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
僕の予想通り、太陽班が先に強制転移トラップへザクロと愉快な仲間達を追い込んだ。こういうトラップって隠されていると簡単には見つからないし、追い込まれて周囲に気を巡らせられないと見落としちゃうんだよね。太陽部隊は追い込みの途中に負傷して捕虜にしたらしいザクロの愉快な仲間達を護送し始めたと連絡して来た。通信魔道具もあるとホントに便利だよね。燃費が悪い点以外は凄く便利で使い易い道具なんだけど……。
はてさて、ザクロと愉快な仲間達はどうなっているか見ておこうか。
ザクロと愉快な仲間達は対応する強制転移地点に無事転送されていた。転送直前の絶望的な表情を見ていたのか、タマモさんが大爆笑している。なんでもザクロはタマモさんをかなり嫉んでいるそうで……。別に二人とも妖艶系美人だと思うのだが、無駄にライバル意識を爆発させていろいろ嫌がらせをして来たそうだ。なんかそんな感じの関係性をどこかで見聞きしたような気がするのだが? 盛大にタマモさんがヴィエラさんから視線を逸らしているが、過去は変えられなにので当分の間弄られるだろうけど我慢しようね。
「うむ。いい具合に蛇が飛んできたな」
「そうであるな。これからのきゃつらが哀れでならんよ」
うん。その気持ちはよくわかる。ザクロと愉快な仲間達は複数の転移先に飛ばされ、少数ずつに分断されて戦力としても心もとない。その状況でアカメカブトトカゲ特殊部隊の面々が、各地点から突如として現れる。そんでもってわざと目立ちながら追いかけ始めた。アカメカブトトカゲ特殊部隊の追跡能力はこの拠点で随一だ。そして戦闘力に乏しいヒノエとキノトよりも戦闘力が格段に高い。その不審な黒衣の何かが狂喜乱舞しながら、分断されているザクロと愉快な仲間達を追い回し始める。
最初期は小柄な敵であるので簡単に倒せると思ったのか? アカメカブトトカゲ特殊部隊に応戦する者もいたが、実力の差に隔たりがあり過ぎるんだよね……。
それからはもう一方的だった。逃げ惑うザクロと愉快な仲間達。追いかけまわすアカメカブトトカゲ特殊部隊。わざと速度を調整し、ザクロと愉快な仲間達を長時間追い回そうとしてるな。新しいおもちゃを買ってもらった子供のような追跡者は情け容赦なく追い回す。追いかけまわされている相手が哀れで仕方ない。
「のう。創黒羅刹は出さんのか?」
「羅刹たちはライゴウの方に向かいますよ。ザクロの方は徐々に増えていく拠点メンバーにどんどん追い込まれ、精神的にも体力的にも相当疲弊させられる状況にあります。最後の一人になったとしても追いかけられ続ける。これほどの恐怖は無いでしょ?」
「ほんに貴殿は性格が悪いな……」
サンドラさんからの心外な一言だったが、嬉々としてザクロと愉快な仲間達を追い回しているアカメカブトトカゲ特殊部隊の叫び声……。相手を恐慌に陥れるには十分すぎる。もうどっちが悪役か分からない構図だけど、一応攻め込んで来たのがザクロと愉快な仲間達で、防衛しているのが僕らなのだ。
なのだけど、我が拠点のメンバーが世紀末な叫び声を上げながら武器を手に追いかけてくる図。まさに世紀末だな。ここに例のチキンを加えてやりたいところだが、アイツら戦闘力0だからな……。構図としては最高なんだけどなあ。
「うーりっひー! まてまてー!」
「ヒャッハーっ! さあてどこまで持つかなあ!!」
「オラオラオラァ! どいつから〆てやっろうかなあっ?!」
マジでどっちが悪役か分からん……。
まだライゴウの方は頑張ってるみたいだな。城壁に押し付けられてペロ部隊とレオパード部隊、ファットテール部隊に待ち構えられている状況。普通なら絶望の状況なんだろうが、何とか仲間を鼓舞して継戦する意志はあるようだ。まあ、戦い続ける意志があろうとも、その内ザクロと愉快な仲間達をバラバラの行き止まりに追い込むか、拿捕したら今度は彼女らの番なんだよね。
ザクロと愉快な仲間達は順調に数を減らしながら、予定していた行き止まりの大部屋に追い込まれている。ここまでくればなんとなくわかるかもしれないけど、メインイベントはもう少し後なのだ。ザクロに因縁のある九尾のキツネさんがもうニヤニヤし始めてるもん。あと何分も持たずにザクロと愉快な仲間達の追い込みゲームは終わる。ウチの拠点のメンバーも十分楽しめたようで、それなりの数のゴルゴン族、メドゥーサ族、ラミア族の尻尾をもって引き摺りながら帰還してきている。
「タマモさん。№12の転移陣です」
「くふふ。ありがたや。アチキもすこーし過激なお仕置き、してもええよなあ?」
「お好きにどうぞ……」
タマモさんは指定した管理用転移陣で消えて行った。精神的、体力的に大きく削られたザクロは万全なタマモさん相手にどこまで戦うか……。それにタマモさんは僕が渡した便利グッズも持ってるんだよな。ホントどうなる事やら。じゃ、リアル逃走中テイク2と行きましょうか。




