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破滅の魔女は異世界を救う  作者: 藤川秋
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第74話 戯れる

言い訳にもならないのだが、一度死んだ身である私としては、自分の命よりも他人の命を優先するべきであると、当然のように考えていた。


私の人生は、言わばおまけのおまけ。

お子様ランチなどに申し訳程度に付いてくる、すぐ壊れてしまうような大したこと無いクオリティのおもちゃと、さしたる違いはないと思っていたのだ。


けれども、それはあくまで私の考えでしかなかった。

おもちゃにしたって、出来栄えがどのようなものであろうと、そこに価値を見出す者もいる。

それがただのおまけでしかないのか、他と無い大切なものであるのかは、私が決めることではなかったのだ。


自分にとって大事だと思うものを、価値が無いと貶められることの、何とも侘しいことか。

私の行動は、結果として他人の心を著しく傷付ける行為と成り果てていたのである。


「そういうわけで、本当にすみませんでした」


「謝らないで。別に怒っていたわけじゃないわ」


寂しい、と口にしていたコレットさんは、ここぞという所で優しくフォローを入れてくれた。


できる女は気遣いからして違う。

私などとは比べ物にもならない。


「俺達も同じだよ。まあ、どこぞの誰かさんだけは業腹だったみたいだけどなー?」


「ですね。ついでに恥ずかしい告白もしてくれましたけど」


「うるさい、そのことは言うな」


軽く小突かれたので、口を噤む。

下手をすれば、私が黙らずとも会話が丸聞こえだったかもしれないが。


「それで、最終的にシオンはどうするつもりなんだ?」


「やっぱり、基本的な方針は変えるつもりはありません。あまり人員を割きすぎると、失敗した時のリスクが高くなるので。ただ、私一人で行くのは止めて、アルと二人で向かうことに決めました」


「そうか。じゃあ、俺達はこのまま人数が集まるまで待機だな」


「そうして頂けると助かります。それから、先程のお願いは無しにして───万が一の時は、私も含めて()()()をお願いできればと」


殺すことを前提にするのではなくて、彼らにとっての最善の選択を。

それが、私なりの彼らに対する信頼の念である。

折角パーティーを組んだのだから、頼れるものはどんどん頼ってしまおう。


もし、結果的に殺されることになったとして、決してそれを恨んだりはしない。

けれども、自分の命をただのおまけと蔑ろにするのはもう止めた。


───助けてくれとは頼まないけれど。

助けてほしい気持ちと、そうしたいと思う気持ちは必ず一致するとも限らないし。

自らの尻拭いをして欲しいとお願いするのだから、やっぱりそれは“後始末”であることに変わりはないのだ。


ただ、私のことを少しでも救いたいと思ってもらえるのなら。

その優しさに甘えさせてもらおうと思う。

それくらいの我儘は、許されると信じて。


「任せろ。後のことは気にするな」


「貴方なら大丈夫だと信じてますよ」


「ありがとうこざいます。全力を尽くしてきますね」


「気を付けてなー、シオン!」


温かく見守られながら、私達はロランの街を後にする。


私個人の事前準備はとうに済ませてあるので、その辺りは問題ないのだが。

隣にいる男の分は何も用意していない。

今のまま行けば、彼は間違いなく敵の餌食になるであろう。


「アル、ちょい待ち」


「ん?どうした」


立ち止まって呼び止める私を、彼は不思議そうに見つめる。

そんな彼に、私はある物を手渡した。


「───何だこれ」


「超絶大事なものだから。絶対に無くさないで、肌身離さず持っててね。なんなら、パンツの中にしまってもいいくらいのものだから」


「パッ……はあ!?何言ってるんだお前!」


(そっち系は駄目な人なのか)


両の耳まで赤らめて、初々しいことこの上ないが、少々あざとくも見える。

顔立ちの良さ故か。いかにもモテそうな顔をしておきながら、ウブな反応をされるとわざとらしく見えるのかもしれない。


それに、私は別に冗談を言ったわけではない。

パンツを例に持ってきたので、誤解されるのも仕方がないが。

要は、知らぬ間に無くすことがないように、落ちにくく分かりやすい場所に入れておけと言いたかったのだ。


「それならそう言えばいいだろ……紛らわしい言い方をするな」


「いやあ、そこまでウブだと思わなかったから」


「お前、さっきから俺で遊んじゃいないか?」


それは言いがかりだ。

遊ぼうと思って言っているのではない。

結果的に弄んだように見えるだけだ。


「本当にそう思ってるか?」


「まあ、恥ずかしい告白の下りは遊んでた」


「ほらみろ!」


「でも、嘘はついてないもーん」


わざとらしく言ってみたら、頭を軽く叩かれてしまった。

なんと乱暴な。


「暴力反対だぞ」


「うるさい。遊んでないで、さっさと行くぞ」


「はいはい。でも、それが大事なものなのは本当だからね。絶対に無くさないでよ」


何せ、今渡したものこそが、本来提供するはずだった魔族対策における要なのだから。

季節の変わり目で、体調管理をミスしました。

おかげで更新がことさらに遅れてしまったので、久しぶりに今日明日と一日おきの更新が出来ればなと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] アルが行くことになる前までは良かった。 [気になる点] なぜアルが行くのか不明なんだけど、未知の敵を相手にするのに普通に足手まといじゃ? この時点でアルを連れて行くのはおかしい。 アル…
2021/12/05 11:13 小説家より
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