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破滅の魔女は異世界を救う  作者: 藤川秋
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第71話 oh my God

何につけても厄介事が舞い込んでくる。

今回もまた、その例に漏れることは無かった。


不幸とまでは言わないが、平和には程遠い。


「それじゃあ、行ってきます」


「ええ、頼みます」


「気を付けてな、シオン。俺達も、出来る限りのことはしておくわ」


二日後に顔を出してほしいと頼まれて、私は再びグランベールを訪れる。

今日に至るまで、市民全員を無事に避難させられたこと以外に、めぼしい成果は挙げられていない。

目撃情報を聞いた時点で、斥候職の冒険者には偵察をお願いしたそうだが、実際に情報を持ち帰るにはまだ時間がかかるだろう。


「おはようございます」


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


「本部長に用事があって来ました、シオンと申します。おそらく、話は伺っているかと思うのですが」


「承知致しました。念の為、ギルドカードを拝見してよろしいですか?」


申し出の通りにカードを差し出し、確認作業が済むのを待つ。

前回、昇格試験を受けた際にはやり取りをすることが無かったので、本部の受付係とまともに話すのは今回が初めてだ。


そして、男性の受付係を見るのも今回が初めてである。

柔らかい物腰がとても紳士的で、所作の一つ一つがとても滑らかだ。美しく、無駄が無い。

顔付きに関しては、際立った特徴の特に見当たらない、良くも悪くも平凡な顔付きであるのだが、仕草の端々に色気を感じるところが不思議な魅力を醸し出している男性である。


これはこれで、モテるんだろうなあとかくだらないことを考える。

無駄に顔が良いくらいなら、彼みたいに綺麗で無駄のない動きをする男性の方が魅力的だなあとも。


「ありがとうございます、確かに確認致しました。本部長に取り次いで来ますので、申し訳ありませんが客間で今暫くお待ちいただけますか」


「分かりました、ありがとうございます」


しょうもない考えを巡らせている間に、彼の仕事は終わっていた。

返されたカードを受け取り、そのまま客間まで案内してくれたところで、彼とはお別れとなる。


動きが綺麗と言えば、アルもその手のタイプだったことをふと思い出す。

彼の場合、全体的な見た目としても間違いなくイケメンの部類に入るので、男性としてはかなり魅力的な人間なのだろう。

私みたいに、枯れた女が日々を共に過ごすことが、何だか申し訳なくなってくるくらいだ。


とはいえ、場合によっては面倒な性格になることもあるので、パートナーとしてやっていけるかは人を選ぶところがあるけれど。

傍から見る分にはそんなことは分からないだろうし、変に周りの女性の恨みを買いそうでちょっと怖い。


「待たせたな、シオン」


ぷるぷると、いつか訪れるかもしれない不幸に身を震わせていると、アルヴァンさんが客間へと現れた───のだが。


「何かまずいことでもありましたか?」


表情だけは平静を装っているが、纏う雰囲気が明らかに冷たく、重苦しい。

最初にここで会った時のような空気を漂わせている。


「……分かるか。まあ、君の言う通りなのだがな。その辺りも含めて話をしよう」


ふう、とため息をつきながら、アルヴァンさんはソファに深く腰掛けた。

一見すると分かりづらいが、かなり疲れた様子であることが僅かに感じ取れる。

それだけで、何か深刻な問題が起きていることはすぐに察しがついた。


「冒険者に関しては、あらかた声はかけ終わっている。万全とまでは言えぬが、それなりに集まった方であろう。ただ、問題はその後でな」


「よっぽど深刻みたいですね」


「そうさな、はっきり言って大問題だよ。国のライフラインにも関わる事であるし、多少なりとも助力が受けられればと王家側に相談を持ちかけてみたのだがな。実は今、第一王女殿下が公務の一環として街の視察に出かけているそうなのだ。その予定地に、ロラン近辺も含まれていてな」


「───まさか」


「そのまさかだ。日程から逆算すれば、王女殿下はちょうどロラン周辺にて公務をされていたはずである。ようするに、此度の問題に巻き込まれている可能性が浮かび上がってしまったというわけだ」


───ジーザス。

最悪のパターンだ、これ。


王女と言えば、紛うことなき国の要。

国王や王妃に並んで、最も被害に遭ってはならない主要人物の一人であるのに。


もし、既に敵の手に落ちていたとするならば、今より更に最悪の状況に陥ってしまう。

普通に考えて、王女を盾に取られた時点でまともに攻撃できるはずもないのだから。


「現在の村の様子については、何か聞いていないか?」


「残念ながら、偵察に向かった者がまだ戻ってきていませんから、何も情報がないんです。申し訳ありません」


「そうか……ならば仕方がない。済まないが、情報が分かり次第すぐに知らせてもらえるか?王家側としても、もし王女殿下が巻き込まれているのならば、なりふり構っていられない状況なのでな。いつでも出兵できるよう、準備を進めているそうだ」


「承知しました」


「うむ、頼んだ。ただ、さすがに君の事については何も言及しなかったのでな。辿り着くまでに時間がかかる故、もしかすると詳しい情報が入る前に出兵する可能性もある。それだけは頭に入れて置いてくれ」


「……はい」


状況としては、かなり厳しい方向に転がり続けている。

王家直属の軍まで出して、甚大な被害でも出ようものなら、多くの国民の信頼を失ってしまうことになりかねない。


(軍が辿り着く前に、どうにか解決しないとまずいな)


できれば、今日明日にでもどうにかしたい。

出兵してしまった時点で、それだけの事態が起こっていることを周りに悟らせてしまうことになるだろうから。

余計な不安は煽るべきではない。


お行儀よく、周りに合わせて動いている場合ではなくなった。

ここからは、強行突破といこうか。

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