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破滅の魔女は異世界を救う  作者: 藤川秋
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第69話 株式会社シオン運送

エルヴァさんの実年齢も気になるところではあるけれど、優先順位の圧倒的低さから脇に置いておくとして。


結局、一番の目玉商品とも言える作戦は、少なくとも今現在において採用は難しく、そうなると「私達は何をするべきか?」という問題に逆戻りしてしまうのであった。


「やっぱり、数を集めて討伐に向かうしかないんじゃないのか」


「そうね……過去の資料も集めてはみたけれど、これといった解決策も見つからず終いですし。長いこと時間をかけるのは得策ではありませんが、こればかりは仕方が無いわね」


「サイラースより遠い街には、まだ要請すら届いてないでしょうし……その間に攻め込まれたりしないといいんですけど」


他の冒険者や職員達が、これまで話し合っていたのであろう作戦について意見を交わす。

それを聞きながら、今から人を集めて果たしてどれ程時間がかかるのだろうと考えた。

要請を出したからといって、人が集まる保証さえ無いのに。


現に、サイラースから送られてきた援軍も、知っての通り私達6人だけである。

とても満足のいく人数とは言えないが、サイラースはサイラースで依然として問題を抱えている状態のままで、必要以上に人員を割く訳にもいかなかった。

緊急事態ということで、私達の他にBランクの冒険者達に同行してもらう手もあったが、もし万が一のことがあれば一番の戦力になるのは彼ら・彼女らなのだから。


エルヴァさんにはエルヴァさんの。

ダンカンさんにはダンカンさんの。

それぞれ、守るべき街がある。

お互いにとって、一番優先するべきは自分の担当する街であるということだ。


冒険者においても、たとえそれが街の危機に関することであろうと、必ずしも要請に応じなければならない訳では無い。


私達の仕事は、常に命がけだ。

その上で、国や街のために己の命を売っているわけでもなく、金を得るための手段として魔物の類を相手にしているだけにすぎない。

だからこそ、ギルドは生死に関する一切の責任を追うことはない代わりに、私達冒険者に選択の自由を与えてくれる。

仕事をする過程で命の危険が付き纏うだけであって、自らを危険に晒すために仕事をしているわけではないのだから、どのような状況であれ仕事を強要されることだけは決して無いのである。


たとえそれが、己の保身のためであろうと。

断る権利は誰にでもある。

周りがどう思うかはまた別の問題として。


「───そういえば。フレイルさん達は、ここに着くのが随分早すぎやしないかしら?文書を出したのが5日前ですから、いくらサイラースの街が比較的近いところにあるとはいえ、ようやく要請が届いた頃だと思うのですけど」


「ああ。それは、シオンのおかげです。彼女はなんというか、色々とスペックがやばいので」


(その説明の雑さが一番やばい)


一応、私に気を遣って、必要以上に情報を喋らないようにしてくれているのだろうが。


───いや、待てよ。

私が聞いている言葉は、あくまで私に合わせて自動的に翻訳されているにすぎないものだ。


つまり、一番やばいのは、私?


(どこまで自分の思考に依存するのか分からないからなあ)


事実だとすると少しばかりショックなので、これ以上深く追求するのは止しておこう。


ところで、これはあくまで余談だけれど。

“やばい”という言葉の汎用性の高さには、凄まじいものがあると思う。

それこそ、()()()の一言に尽きるというか。


あらゆる感情をその一言で表現ができてしまうところも、その言葉だけで相手の意図する気持ちが読み取れてしまうことにすら、ある種の感動を覚える。

超やばい。はんぱない。


「なるほど。方法はさっぱり分かりませんが、言いたいことは理解できます。一人だけ先に来るのならまだしも、貴方がた全員揃って訪れたのですから、よほど凄いのでしょうね」


「まあ、そうですね……普通の方法ではないとだけコメントしておきます」


「一つ伺いたいのですけど、その方法は一般市民に対しても有効なのですか?」


「全然問題ないです。相手を選ぶようなものじゃないので」


よっぽどサイズが大きいとか、極端に重いものでない限りは、さしたる差など生まれない。

家ごと運べとかならまだしも、運ぶものが人間の枠に収まってくれているうちは、何の問題も無いだろう。


そして、それを尋ねられるということは。


「つまりは、避難しそびれた人達を、他の街まで送り届ければいいということですよね?」


「ええ、その通りです。飲み込みが早くて助かるわ。貴方には負担をかけることになるけれど、お願いできますか?」


「それは勿論。そうでないと、いつパニックに陥ってもおかしくない人もいましたから」


例えば、先程出会った女性のような。

何かしらの理由があって、逃げることがままならない人達。

そんな人々にとって、今の私はまさにうってつけの人材と言えるだろう。


なにせ私の魔法は、ルートなど一切関係無しに目的地まで一瞬で辿り着けるのだから。

歩く必要すらなしの、楽ちん設計。

例えでも何でもなく、寝ながらにして移動できるほどの安心安全なサービス。


「全員、無事に送り届けると約束しますよ。今度はちゃんと保証付きです」


今日来たばかりで、また別の街へ行く。

相変わらず、行ったり来たりで忙しない日々だが、それもまあ、悪くない。

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