↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
破滅の魔女は異世界を救う  作者: 藤川秋
67/93

第66話 さながら悪代官

「それで、結局ヴァンパイアというのはどのような……?」


「まあ要は、魔族の一種だよ。さっき言った“魅了”だったり、“吸血”することで人間を操る厄介な相手だ。特に、後者は奴らの専売特許でな。当の本人が倒されても効果が切れることが無いっていう、最悪の代物でもある」


「幸い、一度に操れる数にも限りがあるみたいですし、今はまだ大きな街を丸ごと滅ぼすまでには至ってないでしょうが……報告書によれば、現れたのはロランに近い村だそうですから、早くに手を打たないとロランも危ないでしょうね。おそらく、村人達は既に魔族の手駒にされているはずですから」


「村人達を操って、街に攻撃を仕掛けるのも時間の問題だろうな。かといって、下手にこちら側から仕掛けるのもまずい。ロランから援軍要請が来てはいるんだが、どうすれば一番ベストか俺達と支部長で話し合ってたんだ」


「だから、その手の知識がないか聞きたかったんですね」


今回、一番懸念すべきは、送り付けた軍勢が相手に篭絡されてしまうことにある。

いくら操れる数に限りがあるとはいえ、実際の限度がいかほどか、私達には分からない。

何の対策も無しに向かっては、相手の手の内を増やすはめになりかねないだろう。


「実際に操られた人が、どういう状態になるのかは分かりますか?」


「過去の記録を読む限りでは、完全に意思疎通が出来なくなるらしい。あまり良くない言い方ではあるが、さしずめ操り人形といったところだろうな」


「そうなると、自力で抵抗するのは無理でしょうから、未然に防ぐ術を身につけた方がよさそうですね。敵の数が増えてしまうことを考えると、後から治療できたとしても余裕がありませんし」


方法だけで言うなら、力技でどうにかするという手もないでは無い。


殺られる前に殺る。


ただし、できるかどうかは別問題である。

そしておそらく、できる人がいないと思われるので提案はしない。


「残念ながら私は、魅了に対抗できる魔法を知りません。簡単な傷ならば、癒すこともできるのですが……。シオンさんなら、もしやと思って来ていただいたのですが、何かいい案はありませんか?」


「そうですねえ……魅了そのものを防ごうと思うと、扱う魔法が複雑になるので、人に教えるのは難しいと思います。私が使う分には問題ないんですけど」


魔法を使うためには、当然知識がいるわけだけれど、医療関連の情報を彼らに伝えるのは正直無理がある。

教えたところでまともに理解できないだろうし、そもそも時間をかけている暇はない。


加えて、扱う魔法が一種類だけならまだやりようはあるが、現実にはそう上手くはいかないのが厳しいところである。

───意思疎通は不可能。つまり、脳が支配されていることは確実だけれど。

脳からの伝達情報をいじることで身体を動かしているのか。

はたまた、肉体そのものを強制的に動かしているのか。

可能性が一つに絞れない以上、全ての事態に対応できるように魔法を組むしかないのだ。


───そんなの、他の誰かにやれって言ったって、無理な話だろう?


操る側からすれば、どれか一つの方法に絞った方が効率が良いのだろうが、魔族がそこまで徹底しているかは不明なところだ。

それにそもそも、それが魔法によるものなのかすら疑問の余地がある。

魔法とは全く別の代物であるならば、効率云々を考える必要すらないかもしれない。

そこのところ、魔族に限らず、魔物というのは今いちよく分からない生き物だ。

全く未知の生態系を見つけたのとまるで変わりないのだから、そんなものと常に命のやり取りをしなければならないなど、正気の沙汰ですらないように思える。厄介極まりない。


(ぶっちゃけた話、私が現地に向かうのが一番手っ取り早い気がするんだけどね)


どうせ却下されると分かっていて、わざわざ口に出すほど酔狂でもないのだが、それが事実であることは間違いないだろう。

その上で、求められるものがアドバイスだけとは、つまりはそういうことである。


さて、どうしたものか。


「───なあ。俺に一つ、いい案があるぜ」


そんな時、フレイルさんがおもむろに口を開いた。少しだけ意地の悪そうな顔をして。

学校に必ず一人、こういう悪ガキがいたものだよなと、懐かしく感じるような。


「いい案って、何かしら?」


「ようは、シオンが俺達と一緒に来れるようにしたらいいんだろ」


まったくもって、その通り。

彼の言う“いい案”が何なのか、この時点で察しのついた者も幾人か居たのではなかろうか。

つまるところ。


「一時的に、俺達のパーティー仲間ってことにすればいいんだよ」


ギルドには、こんな仕組みがあったはずだ。

基本的に、受けられる依頼は自身のランクより一つ上までだが、パーティーにランクが上の者がいる場合には、二つ以上差があっても受注可能であると。


彼らは全員Aランク。

さすれば、たとえ私がCランクでも、何の問題もなくなるというわけである。

抜け穴も抜け穴。

こんな非常事態に敢えてその穴をついて、仮にもCランクの冒険者をSランクの魔物と戦わせようだなんて。

そりゃあ、意地の悪い顔だってしたくなる。


───お主も悪よのう。なんてね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。